表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
8くち「一人暮らし万歳!土に植えた家族愛!!」
58/270

8くち 5

「ダン兄とは時々話すけど、相変わらずだね、あの人は。…早々に立ち直れるような状態じゃなかったもんね」


「いいや変わっているよ。どこで寝た?って聞いたら、昨日は気まぐれでベッドで寝たらしいもんあいつ。マムとダッドともピクニックに行ったみたいだし、充分よくやれているよ。ダンケは毎日良い方向へ向かっているんだ」


「………そっか」


「お前はどうなんだ?」


「え?」


「どうだった?元気にしていたか?」



 ………。

 一瞬、ちょこっとだけ「ギクリ」と思ってしまった。

 "お前はどうなんだ?お前は良い方向へ向かっているのかよ。ダンケと違って、お前は"

 そう聞かれたように思ってしまった。



「………。…み、見れば分かるだろ、元気だよ」


「でも痩せたよな。前はもう少しデブだったろ?」


「デッ…!そりゃ、ヘルシーな日本食を健康的に食べていたんだから必然的に減るよ。日本に来てから五キロ減ったからな」


「俺はここ一年で三キロ増えたかな。今、多分…九十キロくらい」


「俺より二十キロ近く重いじゃん。デーブ」


「アメリカじゃ平均だぜ?お前はガリガリの部類だ」


「そりゃ肥満体国のアメリカじゃそうなるだろうよ」


「でも俺は肥満じゃない。脂肪と筋肉のバランスが取れたビッグでマルチなエンターテイナーボディーの持ち主だ。雑誌の撮影でカメラマンに"プラチナドーン(白金の夜明け)"と例えられた体型だぜ」


「プラチナドーン」


「俺愛用のプロテイン、今度分けてやろうか」


「………うん」



 その後もマシューとバートは、散々だらだらと話をしながらフォークで皿を突つき、パンケーキもスープも冷めきった頃に完食した。

 七時に起床してから、既に一時間三十分が経過していた。

 けれどマシューは話し過ぎたとは思わない。ならばもちろんバートもそうは思わない。

 お互いのことを、家族のことをこうして詳細に話し合えたのは数年ぶりのことだったから。

 食事中にあんなにも誰かと話し込んだのは、もう忘れてしまったくらい昔の記憶にも、きっと無かったことだろうから。

 むしろ有意義であったとマシューは思った。


 食器を片付けて荷物をまとめてから着替えると、昨日行けなかった銭湯へと向かった。

 店先では老父が暖簾をかけている最中で、開店したばかりのようだった。



「おはようございます、佐々貴さん」



 マシューが挨拶をすると老父はこちらを向き、低く会釈をして、手に持っていた暖簾を下ろした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ