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【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
8くち「一人暮らし万歳!土に植えた家族愛!!」
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8くち 3

 

「今まで聞かなかったけれど、…父さんたち、元気にしてる?」


「してるよ。俺らがさっさと家出たから、前よりも二人で仲良くやってるだろ」


「バートも家出たの?」


「そりゃ出るさ。独立精神溢れるアメリカ人だぜ?俺を産んだ方のマムが別荘を譲ってくれてさ、一軒家なんだ。今はペットと一緒に暮らしてる。タコのハニーダリーと犬のバーゼルだ」



 思わず手に持っていたフォークを取り落としそうになってしまった。

 力が抜けた手から、フォークの先が音を立てて皿にぶつかったものだから、慌てて握りなおした。



「そんなこと言ったって、お前…J's(ジェイズ)って病気もあるだろ?」


「ああ、まあ、その時は、その時だな」


「…」


「生まれつきの疾患だし、制限も多くないから、家族と一緒に暮らしていても一人でいても大して変わらないんだ。ダッドとマムは突然死するかもしれないし、しないかもしれない俺の死に目を気にするよりも、俺が自立して自由に自分らしく生きることを選ばせてくれた。…大丈夫。実家には近いし、皆頻繁に出入りするから、腐る前に見つけてもらえるよ。ずぇははっ!」



 そういうことを気にしているのではないけれど、もっと言いたいこともあったけれど、本人がそう言う以上、マシューが口に出来ることは何一つ無かった。


 なんだろうなあ。ドライと言うか、あっさりし過ぎている部分が昔からあるんだよな。


 アメリカ合衆国の俳優、ジェームス・ディーン曰く、「思うがままに生き、後悔なく死に、亡骸は美しいままに」

 もう一つ、ベルギーの小説家、ジョルジュ・シムノン曰く、「私は生きることが大好きだから、死を恐れない」


 マシューの予想でしかないが、バートはそのような世界で生きている気がする。

 諦めて自棄になって、開き直っているのではなく、理解しているからこその、この態度なのだろう。

 生も死も、いつだってすぐそこにあるもので、後から突然現れるものではない。どちらも日常に寄り添って、誰もを(むしば)んでいることを、自分の事を「頭が良くない」と言いながらも分かっている。

 死を恐れてばかりいては、生きることを理解出来ないと分かっている。

 だから、「貴方はいつか死ぬ」と言われても、「貴方は明日死ぬ」と言われても、バートは変わらないような気がするんだ。焦りもしない。嘆きもしない。

 ただ、限りなく生き続けるかのように、ある限りの一生をかけて平然と死んでゆくのだろう。

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