表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
8くち「一人暮らし万歳!土に植えた家族愛!!」
55/270

8くち 2

 

「朝飯、出来た」

「…?……あい」


 何故朝食が用意されているのかさっぱり。

 だって自分が作らなきゃあるはずがないもの。


 不思議そうな顔でまばたきを繰り返して、バートはテーブルを見やる。

 湯気を立ち昇らせるスープと、パンケーキの上でとろけた少量の生クリームとバター、山盛りのサラダが視界に入り、一気に意識が覚醒したようだ。

 顔色が明るくなったかと思うと、膝までかかっていた毛布を払いのけてテーブルの前まで這い這いで進んだ。


「わぁ」


 唾を飲み込む音がマシューにまで聞こえたかと思うと、(きん)ちゃん走りさながらのチャーミングな走り方で洗面所にすっ飛んで行った。


 なんでアメリカ人にその走り方が出来るんだ。


 まさか父が教えたのだろうか、と、父の入れ知恵を素直に吸収したのかもしれない兄を想像すると、なんだか可笑しかった。

 綺麗に畳まれたマシューの布団の横で、皺くちゃになって転がるバートの布団を畳みながら、彼の身支度が整うのを待つことにした。


 マシューが布団を丁寧に畳み終え、テーブルを部屋の中央にずらし、読書をしながら待つこと数分―――歯磨きだけではなく肌の手入れもバッチリ済ませたバートが爽やかな顔つきで居間に戻ってきた。


 "「遅い」"


 と言おうと思ったが、辞めた。


「早く座りな」

「ああ」


 テーブルの向かいにバートも胡坐をかいて座ると、相変わらず言えていない「いもだてぃます」の挨拶をして、フォークを手に持った。

 マシューは今日も「"いただきます"ね」と正しい発音を披露するが、バートは自分が言えていると思い込んでいるので、不思議そうに「うん?」と首を傾げた。

 馬鹿らしくなって来るも、指摘せずにはいられない。

 だって間違っているものは間違っているんだもの。正しいことを押し付けることは正しいことではないけれど、誤りを正さないのは間違いだ。



「バートはまず日本語の発音に慣れていないんだから、一音一音区切ってでも良いから、舌の動かし方と口付きについてじっくり学んでみたら?」


「教えてくれるのか?」


「ダン兄に教わってよ。バートの面倒なんて見ていられない」



 バートは「なぁんだ」とぼやいて、クルトンをボリボリ噛み砕いていた。

 マシューもコンソメスープが染みたじゃがいもをよく冷まして頬張る。


「ところで」

「んぁ?」


 皿の端に添えていたイチゴをパンケーキの上に移動させていたバートがこちらを見上げる。

 よそ見をしたから途中で転がり落ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ