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【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
7くち「粘着く叱責!白湯に波打つ家族愛!!」
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7くち 7

 

 その後も、タバコの件以来の落ち込みぶりで、背筋の曲がった正座をして衣服を畳むバートなんて知らんぷりして、納豆を混ぜ、卵を冷蔵庫から出して、フライパンを用意して調理を進めた。

 野菜を切っている間にも、視線がチラチラとこちらに向かってきているのに気づいたが、ひたすら手元にだけ視線をやって、徹底して無視をした。


「あのさ」

「……」

「マシュー」

「……」


 話しかけられても無視を決め込んだ。

 察し合いの文化なんて知ったこっちゃないバートだったが、マシューが口をききたくないことくらい分かる。

 諦めて自分の肌着を静かに畳んだ。


 そうして、「食べるからさっさと座れ」と促され、料理の並んだテーブルの前に二人で向かい合わせで座った。

 合掌し、「いただきます」とムスッとした声色で言うマシューの真似をして、「いただけます」と続いて箸を取る。

 テーブルにはオムレツとサラダとチキンとパンが並んでいた。

 二人分用意されているのに、合掌も「いただきます」もしたのに、何故だか自分は食べてはいけない気がした。食べるのが(はばか)られる。

 気まずい食卓だ。

 マシューが何口か食べてから、ようやく彼の顔色を伺いながらオムレツに手をつける。

 食べている最中に怒鳴られてしまうのかも。

 虐待を受けている子供のように臆病になって、やっぱりマシューの顔色を伺いながら、オムレツを口に含む。


 そして。


「ヴッ!」


 オムレツを咀嚼した途端に青褪めるバートに、チキンを齧るマシューがチラリと一瞥をくれる。


「え…ずぇ?」


 事態が上手く呑み込めずにまばたきを繰り返すバートをそれっきり無視して、黙々と自分もひき肉の詰まったオムレツを食べるマシュー。

 バートは口内に広がる不快感に顔をしかめて、オムレツを切り分けて中身を出した。

 中には発酵して糸を引く豆がぎっしり詰まっている。

 納豆だった。


「ま、マシュゥ…」

「これから失敗する度に厳罰な」


 厳罰。

 これはバートへの罰だ。

 言われたことを守らずに昼寝をしていたことへの罰。


 そう言われてしまえば、バートはもう何も言い返せなかった。

 悪いのは自分だ。マシューの生活の邪魔をしたのはやっぱり自分だった。

 眉根を寄せつつも、大人しくオムレツをまた食べた。

 美味しくなかった。


「ごめんな。言われなかったらやらないし、言われたことも出来なくて」

「本当だよ。一人暮らしだったら楽なのにな」

「……」


 "「帰れば良いのに」"


 言おうと思って、辞めた。

 言葉が無くなってしまい、黙りしょげてしまうバートにこれ以上言うのが、マシューにはやはり"可哀相で"出来なかった。


 だけれど、今回、自分の言動にブレーキをかけることは、マシューにとって苦痛ではなかった。

 謝ったきり、なにも言わなくなったのだから反省している証拠だ。

 そうしてすぐに、許してしまおうとする自分が出てきてしまうけれど、これもやっぱり、今回のマシューにとって苦痛ではなかった。

 何故だかは自分でも分からなかった。

 ただ、バートが不味そうにオムレツを食べているのが、今日は微笑ましくすら見えたのだ。

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