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【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
7くち「粘着く叱責!白湯に波打つ家族愛!!」
46/270

7くち 1

 

挿絵(By みてみん)

 7くち「粘着く叱責!白湯に波打つ家族愛!!」




 月曜日。


 新しい朝の始まりの、いつもと同じ電子音。目覚まし時計が今日もけたたましく鳴っている。

 やっぱり今日も先に起きたマシューが、子供みたいに丸くなって眠るバートの頭を枕で叩いた。



「起きろバート!朝飯!」

「ずぇー…」

「いい加減慣れろよ、この時間に起きるのも」

「低血圧なんだよぉ」

「嘘つけ。お前は高血圧のはずだ」

「なんで分かるんだ」

「J's(ジェイズ)患者は高血圧なんだよ」

「そうだっけ…」



 話している間にも瞼を持ち上げていられないバートの目を、両手の親指で引ん剥くマシューだった。


 まどろむ暇も与えられずに、時には白目を剥きながら舟を漕いでは、バートは二人分の朝食を準備。

 マシューは一度荷物を持って外へ出たが、すぐに戻ってきて学校へ行く支度を始めた。

 それを横目にいつも通り納豆を出そうと冷蔵庫を開けるが、見慣れた白い発泡スチロールの三個パックは無かった。

 寝惚け眼で、冷蔵庫の他の引き出しを探してみたけれど、それでも納豆のパックは見当たらない。

 冷蔵庫のドアアラームが鳴って、驚いたバートはそこでようやく覚醒した。


「マシュー、納豆無いぞー」


 ドアを閉めてキッチンから廊下に向かって顔を出すと、洗面所からマシューも顔を出して、塗りかけの整髪剤で濡れた手を宙で彷徨わせていた。


「あーいけない。買い忘れていたんだ」

「どうする?」

「他に何かある?」

「昨日の残りの…えーと、チキンスープと果物と野菜とパン」


 我侭な話、マシューは昨日食べたものをそっくりそのまま、翌日の朝に食べたくなかった。

 掌の整髪剤を擦り合わせて、髪につけながらマシューは言った。



「バートは何を食べるの?」

「発酵無しのワッフルを作るつもり。あとは昨日の残りの片付け」

「ワッフルメーカーなんて、うちに無いけど」

「マシューが学校に行っている間に繁華街で買った」

「あ…そ、そう。じゃあ、チキンスープとワッフルとサラダ…で、僕も良い?」

「いいよ。お前は学校あるし、急いで作らなくちゃな」



 快く頷いたバートは、いつの間にか購入した新品のワッフルメーカーと薄力粉を出してキッチンに向かう。

 洗面所から顔を出していたマシューは、その後ろ姿にポカンと口を開けていた。

 マシューが学校に行っている間は、外に出たとしても銭湯から家までが精一杯だろうと思っていた。


 繁華街なんて週に一度行くか行かないかの場所だし、バートと行ったのはまだ二回くらいなのに。

 いつの間にか道順を覚えていたらしい。しかも一人で買い物が出来るなんて。

 そうだ、彼は昔から積極的な男だ。何に対しても、どこにいても、自分に自信があるから消極的にも受動的にもならない。いつだって自分から働きかける。

 不正解も間違いも誤りも恐れない。成功する自信があるからじゃない。失敗を恐れない自信があるんだ。

 失敗する自分を受け入れられる自信が、彼にはある。


 マシューは、カフカとバートの自信家な部分を重ね合わせた。


「………」


 その日結んだネクタイは、何故だかいつもよりキツく感じた。

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