表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
5くち「くゆるくだまき!バーカ!バーク!バガーなラント!!」
36/270

5くち 13

 一人暮らしのマシューの家の夜は、同じく一人暮らしのバートの家の夜と違ってとてもシンプルだ。

 バートの家の夜では、天井を見上げると星が瞬いている。

 購入したホームプラネタリウムで、いつも寝る前に星座を投影しているからだ。

 それに睡眠用の夜風とピアノの音楽を、最低音量でタイマーにして流している。

 沈黙が際立つマシューの家での生活は、バートにはまだ、もう少し慣れないものだった。

 それに、ベッドより硬い布団にも、完全に慣れるには時間がかかる。

 でも文句は言っちゃいけない。これがマシューの今の居場所なのだから。

 本来なら、"マシューだけ"の大切な場所で、自分は居候の身分なのだから。

 今日、それを悔やむほど実感した。


「マシュー」


 マシューは返事をしなかった。


「今日はごめんな」


 やっぱり返事はなかった。

 マシューの方に向けていた頭をまた天井に戻すと、隣のマシューの方から布団の擦れる音が聞こえる。

 マシューが背を向けたようだった。

 そのマシューが、


「いつから、タバコなんて吸うようになったんだよ」


 話しかけてきた。

 またマシューの方に首を向けるが、やっぱり背を向けていて、また天井に視線を戻した。



「最近かな。半年以上前」


「どうして?なにがきっかけ?」


「…俺、前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい)を断裂して、今、長期療養中なんだよ。足のケガ」



 隣から跳ね除けられた毛布がバートの顔面に当たったかと思うと、マシューはバートが被っていた毛布の足下をサッと(まく)った。

 真っ暗だし、お互いまだ暗闇に目が慣れていないから見えるはずもなく、更に言うならば、マシューは視力があまり良くなくて眼鏡をかけているくらいだから尚の事見えるはずもなくて、もどかしそうに舌打ちをして部屋の電気をつけに行った。

 明かりがついて眩しそうにしていると、「起きて起きて」とマシューが腕を引っ張りに来て、お互い布団の上で向かい合う。


「なんだって?」


 一連の動作を終えて、ようやく会話の続きが始まった。



「簡単に言うと、前十字靱帯って言うのは膝の大切なクッションなんだけどな、それが切れちゃって、膝が使い物にならなくなったわけだ。だから、今は仕事を休んでここにいる」


「…本当に療養中だったんだ」



 てっきり、この家に転がり込んで自分を篭絡(ろうらく)させて連れ戻す為の嘘っぱちだと思っていただけに、思わず目を擦った。

 目を擦ってもなにも起こりはしなかったけど。霞目が少しばかりマシになっただけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ