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【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
17くち「舞台の上から客席へ!兄弟二人のB&C!!」
250/270

17くち 22



 …



「なあ、いつ頃分かる?」

「何度も何度もうるさいなあ」



 翌日。全国大会の会場に入り、マシューは既に控室へ行っている。

 次がマシュー達が所属する"志士頭学園高等部"による公演だ。

 バートは客席に座り、舞台から他校の演劇を見守りながら、マシューとの会話を思い出していた。


 控え室に向かうまでの間、マシューはバートを指定の客席まで連れてゆき、ポップコーンもジュースも出ないことを伝えて、時間ギリギリになるまでバートの話し相手になってやっていた。

 その時の言葉が、先ほどのものだ。



「なあ、いつ頃分かる?」

「何度も何度もうるさいなあ」

「実のある…なんだっけ」

「もう黙って待っていなよ」

「なあってば」

「……まったくしかたがないなあ…。これだからバーカラントはなあ…」



 うんざり。

 顔にそう書かれているようであった。



「舞台のことだよ」

「舞台が実のある…なんだっけ」

「はあ~っ、一から説明しなくちゃ、やっぱりお前には伝わらないんだなあ」



 頭が痛い。

 今さっきの"うんざり"の上に新しく書き込まれた。

 けれど、嫌な気分ではない。



「あのさ、僕らって趣味とか似ているだろ」


「お互いだけの趣味もあるけど、本当に大事な趣味は結構共通しているな。家族の良いところだよな」


「…でも、だからって性格までまったく似ているなんてことはなくて、むしろまったく違うだろ?ものに対する考え方もそれぞれ異なる」


「ああ。俺とお前は家族だけど、他人だからな」


「そうだな。実力もまったく同じにはなれっこない。僕らにはそれぞれ能力に見合った役割がある。自分じゃないから、憧れもするんだ。自分を知ることにもなるんだ。自分を振り返った時に、そこにいるのは僕一人じゃないって分かるんだ」



 隣の席に腰かけているマシューは、まだ開場していない舞台を見まわして言う。

 まるで、客席に昔の自分と、その時の自分にとっての大切な他人を見るかのように。

 バートもその視線を追ったけれど、客席には誰もいない。

 ただ、隣にマシューがいるだけだった。

 それが何故だか分かった気がした。


挿絵(By みてみん)



「振り返った先に、父さん、母さん、日国のお祖母ちゃん、お祖父ちゃん、親戚の皆、学校の先輩後輩、友達、世話をしてくれた恩人、僕なりの、色んな人がいる。その中で、昔の僕の一番近くにいるのは、いつもお前だ」



 憧れていた。羨ましかった。

 最も近しいその人を尊敬していた。

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