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【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
17くち「舞台の上から客席へ!兄弟二人のB&C!!」
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17くち 13



「"プロトタイプ-ネームレス"すら持ってないのに、その上の"サイボーグ-ゼバス-"の二枚目を当てちゃうなんて…。ウルトラレアカードだけど、目当てじゃないんだよなあ…」


「ダンケに送り付けときゃなんとかしてくれるだろ」


「あの人、今まで送ったカードをどうしているんだろう…。デッキを再構築したようには思えなかったけど」


「悲しくなるから考えない方が良いぜ」


「その言葉で全てを察したよ。言われてみれば、あの人の"いらない物の扱い"なんて簡単に想像がつくのに、なぁんで気が付かなかったんだろう」


「俺がなんとなく贈ったイタリア製の革靴も、あいつ…たしかそのまま半額以下でネットオークションに流したって言っていたくらいだからな」


「勿体ない!返品して靴の代金を丸ごと貰えば良いのに!…ちなみにいくらしたの」


「覚えてない。あいつの趣味に合うだろうなと思って買っただけだから」


「ブランドは?」


「チェ…チェスト?…だったっけな」


「チェルトだよバカタレ!最安価でも三百ドルは持ってなきゃ手ぶらで帰ることになるような、千ドル級の商品ばっかりが並ぶ高級ブランドじゃないか!それを未使用半額以下で売っちゃったの!?」


「返品の為に外に出る気分じゃなかったんだろうな」


「はあー、あの人ってほんと、あの人だね。…マジで信じらんない。泣きそう。お前もお前だよアホタレ!」



 一人は泣きそうだなどと言っておきながら、二人は失笑しながら話した。

 失笑。漢字の並びのせいなのか、"呆れて笑えもしない状態。もしくは嘲笑にも近い意味合い"だと勘違いされがちだが、"意図せず笑い出してしまうような状態"が現在の正しい使い方とされる。

 その内、正しいことが間違いになるのだろうか、その時自分は、この言葉をどう使うのか、その時代についてゆけるのか、マシューはそんなことを考えてハンバーガーを齧っていた。



「ところで、バートはなにか日本特有のものを買ったりしなくて良いの?カードゲーム以外に」



 笑いが尾を引いているようで、肩を揺らしてにやけ面でサラダを食べるバートは応えた。



「なんで?」


「今朝も言ったろ。ボーッとしていたら卒業なんてすぐだし、今のうちに日本で買えるものは買って、アメリカに送った方が良いぞ。帰国して舞台復帰したら、そう簡単に日本とアメリカを行ったり来たり出来ないんだから」


「…んー…」


「そうだろ?」


「……。マシューが夏場に部屋着にしている甚平(じんべい)みたいな?」


「そうそう。味付け海苔とかも好きだろバート。今日だって僕が愛用している残り少ないワックスを空になるまで使って気に入ったって言っていたし、今の内だぞ」


「んー、そうだなー…」



 先ほどまでの笑顔はどこへやら。笑いの尾は切れたらしい。

 アメリカに帰る話を持ち出すと、バートは途端に視線を逸らして控えめな態度をとり始める。

 わっかりやす。


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