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【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
4くち「ブロンド碧眼!育ちはアメリカ!それでも僕は日本人!!」
23/270

4くち 9

 

「いつまで日本にいるつもり?」

「未定にしたい。当分いたい」

「仕事とかは?」

「長期療養中ってことで休んでいるんだ」


 弾かれたようにバートの顔を見張ると、違う違うと首を振る彼がいる。


「病気じゃないよ。そういうのじゃない」

「…なんだよ…」


 じゃあ思いっきり健康体じゃないか。

 今度はバートから完全に視線を逸らして、余計な緊張を味わったと舌打ちをした。


「住まわせてもらうわけだし、これからも散々迷惑をかけるだろうから、今後、あの家での生活費は俺が負担する。ただし、菓子とか趣味とかの代金は各自の財布から出すってことで。いさせてほしい」


 なんだか話を勝手に進めているけれど、これだけ自分にとって悪条件を重ねられてきたマシューにとって、生活費を持って貰えるのは非常に美味しい話だ。

 両親からの仕送りもバートがいる間は断れるし、バイトで稼いだ金銭を前より趣味に継ぎ込めるんだ。

 初めてバートが来日したことをちょっとだけラッキーだと思った。不幸中の幸いだったが。


「じゃあ、ちょっとだけな」

「よし、契約成立だ」


 さてもう一度歩き出そうと一歩を踏み出しながら、少しは生意気なことを言っておかないとつけあがるだろうから、といつものお小言を捻り出しておく。


「別にいつ帰ってくれても良いからね」


 しかし、


「その時はお前も連れて行くぞ?」


 と言う言葉に、一歩踏み出したマシューの足が止まる。砂利を踏みしめて、コンクリートに擦れる音が響く。


「は?」

「自宅に連れて帰るぞ?」

「……」

「俺らの家はアメリカだもんな」

「…いや」


 違う。


挿絵(By みてみん)


「僕の家は、日本だよ。僕は、日本人なんだから」


 不安げに断言する。

 断言。

 違ったのかもしれない。

 確認だったのかも。

 自分に対する問いかけのように頼りなかった。


 しかしバートには、断言だと伝わったようだ。

 マシューにとっては自分ですら危うかったけれど。


「そうか。俺は間違えたんだな」

「ああ、間違いだよ、バーカラント」


 一瞬だけの沈黙があって、マシューがその一瞬で千の思考をしている間に、バートが口を開いた。


「帰るか。暑い」

「扇風機とかの電気代も払ってくれるんだろ」

「ああ。これからは電気代も水道代も気にせず使って良いぞ!ただし、エコを忘れるな」

「人間としちゃ落第点だけど、財布としちゃバーカラントは優秀だよ」

「俺人間だぞ?」

「はいはいバーカラントバーカラント」



 アメリカ合衆国の作家兼経営コンサルタントである、スティーブン・コヴィー曰く、「私は自らをとりまく状況の産物ではない。自らの意思決定の産物だ」


 もう一つ、北インドの仏教の開祖である釈迦(仏陀)曰く、「心がすべてである。あなたは自分の考えた通りの人間になる」。

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