16くち 22
飛行機の出航時間が近づくと、ダンケとバーゼルとハニーダリーに見送られて、二人は家を出た。
タクシーでサンフランシスコの夜景を眺め、道中、父と母がいる実家の明かりがついているのを横目に通り過ぎ、眠気で目を擦りながら飛行機に乗り込むや、バートとマシューはブランケットを借りて、座席でお互いに背を向けて眠りについた。
次に目覚める頃の日本では、お互い、ひとりで日本に来た頃とは全く違う立場になるだろう。
卒業までおよそ半年の時間が、二人にはあまりに短すぎるように思えた。
いっそのこと、いつだかバートが言ったように、卒業した後も時間が足りないと考えるのであれば、バックパッカーになって世界を見て回ると言う選択肢を残しておいた方が、卒業までの時間をずっと気楽にポジティブに考えられる気がする。だって、まだ逃げ続けられると言うことだもの。
それでもマシューが、あと半年と言う期限を守ろうとするのは、これ以上何を引き延ばしたところで、誰の為にもならない、この期間こそが最適なのだと思っているからだ。
ならば今はネガティブな考えでも、将来の為になることを信じてみたい。
ドイツの詩人、作家、自然科学者、法律家、政治家である、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ曰く「馬で行くことも、車で行くことも、二人で行くことも、三人で行くこともできる。だが、最後の一歩は自分ひとりで歩かなければならない」