13くち 9
繁華街に着くや、バートはあの小さくて狭苦しい"ヘンタイアニメストア"に突撃して、単品売りではなくパック売りのカードゲームを購入していた。
自分のデッキを作る時に何度も通っていたからか、マシューが店内を見て回っている間、バートはすっかり顔馴染になったレジカウンターの定員と話し合っていた。
思えば、マシューは今年に入ってから一度もこの店には来ていなかった。
今年度では無く今年だ。実に四か月以上も訪れていなかったのである。
店内の様相はその時の流行しているアニメーション作品によって変わる。流行りものの商品を多く入荷して、過去作品の商品は少しずつ取り除かれてゆく。
それでもこのカードゲームだけは特別。何年経っても廃れない。もう十五年以上も続いている傑作だ。
新しいパックが発売されていたようで、その新パックと隣の旧パックを手に取ってレジに持って行った。
なんだか、久しぶりに気持ちの良い金銭の使い方をした気がした。
千円もしない買い物だったけれど、買い物でワクワクしたのは久しぶりのことだ。
百円均一にも寄った。
古くなったペッパーミルの買い替えもこの際したかったし、トイレのマットレスも抜け毛が目立って腹が立っていたところだ。
ワイパーの付け替えシートも、掃除機のフィルターも先週に最後の一つを取り付けたから、ちょうど欲しかったところだ。
百円均一とは言うものの、今となっては百円税込均一ショップとなったその店を歩くと、つい「あれもなかったこれも買い替え時だ」と思い出して、まるでアメリカにいる母のような長ったらしい買い物をやってしまった。
バートは買い物かごを持って歩き回るマシューから離れては、対象年齢六歳ほどのおもちゃを持ってきて、こっそりカゴに仕込んでいた。
レジに行く頃には、そのおもちゃだけがカゴから綺麗さっぱり無くなって、元あった場所に戻されていた。
袋詰めをする頃に、バートはカゴに入れたはずのおもちゃが見当たらず「あれぇ?」と不思議そうに唸っていた。
行動開始時間が遅かった為、すぐに昼になり、二人はハックドナルドに向かった。
いつも通りのメニュー。ドリンクのコーラと烏龍茶だけはいつもと違うメニューだ。最初の頃は「アメリカと違ってドリンクのサイズが小さい」と言っていたバートも、日本のサイズに慣れてきたようだ。
注文した商品が届くまで、バートが言うところのヘンタイアニメストアで購入したパックの開封式が行われた。
バートはびりびり破くのに対して、マシューは切り口と書かれたところから丁寧に剥いていく。