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【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
13くち「俺とお前のサウダーデ!嗚呼、麗しの日本国!!」
162/270

13くち 8

 

「ちょっと、バート」「よし、食器の片付けも終わったし、出掛けるか?マシュー」



 調度言葉が被り、バートはマシューの言葉に気付いていないようだった。

 マシューは再度、(くだん)の見出しを見直すも、もうそれを言う気にはならなくて、シャットダウンの操作をした。

 バートは濡れた手をタオルで拭きながらやってきて、「なにを見ているんだ?」と聞くが、既に画面は真っ暗で、なにを想像したのか、バートはいつもと違う調子の悪戯っ子のような笑みを浮かべた。


挿絵(By みてみん)


「おっと、プライバシーは守らなきゃな。履歴は残さない方が良いぞ。うっかり見ちゃうかもしれないからな」


「僕はそれほど単純な男じゃない」


「そうかそうか」



 信じていないようだ。

 疑いを晴らそうとしないことは嘘を吐いていることと同じ。とは言うが、"そういうサイト"を覗いていると勘違いされても問題無い為、ここは嘘を吐いたままにしておく。

 バートの名前で検索をかけていたと知られるより、アダルトサイトを見ていたと思われた方がまだマシだ。



「ところでどうする。出掛けないか?」

「うん。そうだね。洗濯用洗剤を買う用事があるし」

「いけね、食器用洗剤もだ」

「メモしろメモ」

「あいあい」



 マシューが着るものを箪笥とクローゼットから探している間に、バートは固定電話の横で買い物メモを書き込む。

 着替え終わる頃には書き終り、覗き込むと文字はひらがなで書かれていた。それもへたくその。ひじきを繋ぎ合わせたみたいだ。

 バートが着替えている間に、マシューはじょうろに水を溜めて、屋上で春風に吹かれているプランターの花や、来年に贈り物にする予定のガーベラの鉢植えにも水をやる。

 ついでに伸びてきた雑草を引っこ抜いた。


 アメリカの思想家、哲学者、作家、詩人、エッセイストである、ラルフ・ワルド・エマーソン曰く、「雑草とは、その美点がまだ発見されていない植物のことである」。


 マシューも未だ雑草の美点が分からない。

 どこからともなくうじゃうじゃと生えてくる。抜いても駆除してもキリが無い。

 お前を植えた覚えは無いぞ、と毎度の如く思う。


 屋上からの階段を下りていると、着替えを終えたバートが玄関に鍵をかけている最中で、足音を聞きつけてこちらを振り向いた。



「今日の服、ダサくはないだろ?」



 いつだかのことを根に持っているのか、両手を広げて服を見せびらかしてきた。

 マシューは「ソウダネー」と当時のバートよりも片言の日本語で返事をして、更に階段を下りて行った。

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