表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
11くち「風邪っぴきアンビヴァレンス!にぎって!むすんで!看病だ!!」
136/270

11くち 11

 

 …



 家に帰ると、室内干しにしていた洗濯物を、敷きっぱなしの布団に下ろして畳み始めるマシュー、家を出る前に炊いておいた米を小鍋に取り、水に浸して火にかけるバートと、それぞれの役割をこなし始める。

 バートは調理中に「寒い」と言いながら、最近買ったばかりのヒーターの傍に行ってはキッチンに戻るのを繰り返していた。

 マシューは洗濯物を畳み終えると、自分も湯冷めで寒くなってきて布団を体に巻き付ける。

 手元では、「汚名なるウェル・メイド・プレイ」の台本に解釈を書き込んでいた。

 そうしてうとうとしていると。



「マシュー、大変だ」



 何分経ったのか。

 いつの間に瞼を閉じていたらしい。

 バートの方を向くと、彼が気まずそうに笑っていた。

 なにかをやらかして困っているのを、笑って誤魔化そうとする下手な笑顔だ。

 役者のくせに、役以外ではとことん演技が出来ない大根だ。



「なに」

「お粥がすごく焦げた」

「弱火にしなかったな。あと多分水も足りなかったな。焦げたのは底の方だけ?なら食べられるけど」

「だいたい焦げた。ちょっとヒーターに当たってなごみ過ぎた…」

「米に頭を下げて農家の人に申し訳なく思ったか」

「した」

「はあ…」



 叱ろうと言う気持ちにはならなかった。

 今日は風邪をひいたけれど、きっと良い日なんだ。

 相変わらず失敗ばかりするバートだけれど、一々目くじらを立てるほどじゃなくなってきたし、好きな話題で盛り上がれた。バート相手なのに楽しかったんだ。

 バートが相手だから楽しかったんだ。

 マシューは溜息を零すだけで留めた。



「お粥は…もういいや。そうだな。火加減が難しかったかもしれないね。今度教えるよ。…今日はどうしようかな」


「なあ、マシューはこてこてしていない日本食が良いんだろ?なにか俺でもすぐに作れそうな、簡単なものはないか?」


「…うーん」



 マシューはしばらく思案した後、米がまだ残っているかを確認して、バートに手を洗ってくるよう指示した。



「今日はおにぎりだ」



 五分後。


 コンセントを抜いた炊飯器と皿と海苔と調味料を持ってきたバートは、それらを布団横のテーブルに並べて、マシューから指示を受けておにぎりを握っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ