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【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
11くち「風邪っぴきアンビヴァレンス!にぎって!むすんで!看病だ!!」
130/270

11くち 5

 

 二時間ほど勉強をしてから、次は、日々近づいてくる演劇部での主演作品「汚名なるウェル・メイド・プレイ」の台本を読み込む。



 "「私は特別なんだぞ。私を見ろ。私こそを」


「カフカ、貴方は今回も裏方よ。自分の役割を全うして」


「私の役割は裏方じゃない。役者だ」"



 "「下手に希望のある言葉を聞かされ、放任されて育つと、勘違いした凡人は過信のあまり破滅してしまう。誰も、希望や夢を与えることに無責任過ぎる。与えられる方も疑いを持たないなんて不用心極まりない。凡人であることを認めず、いつか自分そのものの否定に突入したらおしまいなのに。その結果がカフカなんだよ。キミと違って、カフカは凡人なんだ」


「私はそう思わない。彼は特別だよ。役者として完璧過ぎるだけだ。完璧過ぎるあまり、彼の芝居は不自然なんだ。本当の自分を思い出したら、彼を舞台裏に閉じ込めることなど誰にも出来なくなる」"



 台本を読み込んで何十分経っただろうか。

 目が疲れてきて、眼鏡を外して瞼に掌を当てて温めた。



「はあ…」



 卒業式の少し前に行われる、三年生をメインに据えた公演。今年度最後の舞台で、マシューは二年生ながらもメインの役を張る。

 本当なら、三年生の部活引退はどこの部もとっくに終わっているけれど、演劇部や一部の部活の正式な引退は、その「最後の活動」が終わってからだ。

 ちゃんとしなければ。やりきらなければ。

 さあもう一度頭から読み直して、頭の中でイメージを膨らませよう。


 床に置いていた、紙が痛み始めている台本をまた手に取った。

 すると、



「ワェルヌイドブレイ?」


挿絵(By みてみん)


 バートが横から覗き込んでいた。

 すかさず開きかけていた台本を閉じた。



「見るな。読むな。気にするな」


「今度は読書か?」


「そうだ読書だ」


「表紙にお前の名前が書いてあるけど」


「僕と同じ名前の登場人物が出るようだな」


「俺達みたいな名前したヤツらなんて俺達くらいだよ。マシューはアメリカならいくらでもいるけど、日国なんてファミリーネームくっつけたヤツが他にいるか?」



 結局、バートが来てからこの秋にかけて、彼に演劇部での話はほとんどしていない。

 そういう部活に入っていることは教えても、活動内容については一切触れられないようにしてきた。

 一時期は教えても良いかもしれないと思ったこともあったけれど、言わなかった。


 何故かって、言いたくないからだ。


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