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【挿絵131枚+漫画78頁有】ヒトくちばなしっ!B&C  作者: ほやざ
3くち「夜逃げしたい朝!不安だ!不満だ!不可能だ!!」
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3くち 5

 

 段々体の芯まで温まってきて、お互い顔がほんのりと赤くなってくる頃には脱衣所で服を着て、自販機の前に立っていた。

 マシューは迷わずコーヒー牛乳を選ぶ。バートはと言うと。



「コーラ!」

「風呂上がりは牛乳かコーヒー牛乳かフルーツ牛乳だろ」



 自販機に千円札を入れてコーラのボタンを押そうとしたところ、横から入ってきたマシューにコーヒー牛乳のボタンを押されてしまった

 バートは受け取り口に落ちてきたコーヒー牛乳をしばらく見つめ、手に取った後もパッケージを見つめていた。



「俺、シャワーを浴びたら、いつもミネラルウォーターかコーラを飲むんだけどなぁ」

「めそめそするな。飲め」



 結局、美味い美味いと言いながら飲み干すのだから。

 案の定そうだった。

 コーヒー牛乳の紙パックをゴミ箱に放り入れて、二人とも荷物を持って番台に戻った。



「じゃあ佐々貴さん、おやすみなさい」


「帰るのましゅくん」


「うん」


「ご飯はなににするか、もう決めた?」


「夏野菜を添えた鮭のムニエルでも作ろうかと。ほら、繁華街のスーパー、この間鮭がいつもより安かったじゃないですか」


「ああ、そうだね。うちはその鮭はホイル焼きになったよ。でも、良かったら、それ明日にしない?さっき"くめちゃん"がご飯が出来たって言っていたから、食べておいでよ」


「いいんですか」


「いいともいいとも。奥でくめちゃんが待っているから」



 やっぱり二人がなにを話しているのか分からない。

 バートは二人の顔を交互に見て、首を傾げるばかりであった。

 マシューが番台の裏の方へ行こうとするので、老父に自分も行って良いのか、とボディーランゲージで伝えると、老父もカチコチの硬い体を動かして、「どうぞ」と促すように返した。



「ありがとう」



 日本御作法大全で読んだ感謝の言葉を述べる。



「ごゆっくり」



 老父が返してくれた言葉はやっぱり分からなかったけれど、彼の穏やかな微笑みが、マシューと自分を歓迎してくれていることを証明していた。

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