なんでなんだ
「で、裕太、さっきのメールの内容はどうだったんだ?」
風呂場で裕太に体を洗ってもらいながら話を聞く。
「えっとね、まずは司法解剖の結果が出たんだけど、死亡推定時刻は5月5日23時頃で、遺体から睡眠薬の成分が検出されたらしい。」
睡眠薬ってことは、夏希が俺に睡眠薬を飲ませたのか・・・。でも、夏希は実家に居たから殺したヤツは別にいる。
「あと、阿部達也くんについてだけど、現在○○市で一人暮らししてるそうだけど、事件当日は友人と○○県に旅行へ行ってるんだ。これも泊まった旅館の人が確認してるからアリバイはあるらしい。」
達也も犯人じゃない。じゃあ誰が・・・。
「笠井さんは今、夏希さんの周りを調べてるって。・・・大丈夫明菜?」
裕太が心配そうにこちらを見る。
「大丈夫だよ、裕太。」
なんとか笑顔を作って返す。裕太に大丈夫とは言ったものの、心中穏やかじゃない。夏希が俺を殺す手助けをしたかも知れないんだよな・・・。なんでなんだ!なんで、なんでそんな・・・。頭の整理がつかないまま風呂を出た。
ベッドについても、悩みがどんどん増していくだけだ。すると、奈央がやって来た。
「明菜、どうしたの?何か怖いことでもあった?大丈夫よ、ママとパパがいるからね。」
そう言いながら、奈央は俺の体を優しく抱き抱えた。
奈央・・・。その優しさのお陰で少し落ち着く。今日はもうずっとこのままでいたいな。そのまま奈央の腕の中で眠りについた。
・・・
夏希が誰だか知らないヤツと一緒に楽しそうに話をしている。
「夏希、そいつ誰だよ!」
「もう雅樹には関係ないでしょ。行こう、○○さん。」
夏希が誰かわからないヤツに取られてしまう。待ってくれ、行かないでくれ、夏希!
・・・
翌日、目を覚ましたとき、まだ少しモヤモヤが残っていた。夢のせいだ。
裕太は今日も仕事。裕太の休日は土日祝日なので、今日を入れてあと4日間はこのままか。笠井さんも調べてくれているし、今は続報を待とう。