警察はどうかな?
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい、気を付けてね。」
今日も裕太と情報収集に出かける。向かう先は○○警察署だ。容疑者の所に向かうことも考えたが、今どこに住んでるか知っているのは隆弘の所だけだし、もし、警察と協力できるのならその方が早い。
警察署に着くと、刑事課を訪ねた。事件について聞こうとしたが、やっぱりダメなようで、取り合ってもらえなかった。
帰ろうとしたとき、俺達に気づいて近づいてくる刑事さんがいた。病室にやって来た刑事さんの内の若い方の刑事さんだ。
「綾瀬さんですよね。どうされたんですか?」
「ああ、あのときの刑事さん。実はあのとき刑事さんに聞かれた事件について調べてまして、お話をお聞きできないかなと思いまして。」
「う~ん、わかりました。ちょっと場所を変えましょう。ついてきて下さい。」
そう言われて連れていかれたのは、警察署の中の空いていた一室だ。その部屋には机が2つ、部屋の隅と中央にある。これが噂の取調室のかな。中央の机に刑事さんと向かい合って裕太が座る。俺はその横だ。
「・・・綾瀬さん、あなたがこの事件について情報を集めているということは、やっぱりその子はあの斎藤雅樹さんなんですね。」
!裕太が驚いた顔をして、あたふたしている。やっぱり、思ってた通りになってしまったな。はぁ、仕方ないか。
「裕太、いいよ。刑事さん、俺はあんたの言った通り斎藤雅樹の生まれ変わりだ。」
「本当なんですね。自分で言ってみたものの、なかなか信じられないものですね。でも安心して下さい、このことは他の誰にも言いませんから。もし広まってしまえば、また犯人に狙われるかもしれませんしね。」
「それは助かる。」
バレてしまったものの、警察側に協力者が増えるのはとても助かる。これで犯人に大きく近づけるはずだ。それから俺達はまずこちらの知っている情報を刑事さんに伝えた。
「なるほど、こちらも知らないことがありました。さっきおっしゃった3人の方の内、森についてはこちらも調べましたがアリバイがありますね。森は事件当日の夜、仕事でスーパーのレジ打ちをしてまして、多くの人がそれを目撃してます。残り2人はこちらもまだ容疑者に上がって無かったので、また当たってみます。」
そうか、一番怪しいと思っていた森さんは犯人じゃないのか。
「次は、鍵ですね。ピッキングの跡が残っていなかったことから犯人は鍵を使用していたものと思われます。現場の部屋の机に鍵は置いてありましたし、先ほどおっしゃった合鍵の持たれている方も怪しいですね。あとは、遺体ですが、遺体には争った様子はありませんでした。ですのでやはり、睡眠薬等を使った可能性が高いですね。司法解剖の結果が出るまであと何日かかかりますのでこれもわかり次第お伝えします。」
さすが警察だな、知りたい情報がどんどん入ってくる。その後、裕太は刑事さんと連絡先を交換し、警察署を後にした。
次に、隆弘の所を訪ねることにした。隆弘は会社の寮に住んでいる。寮に来るのも久しぶりだな。俺も入社当初は寮に住んでいたが、あのアパートに移ってからは全く来てないからな。さて、隆弘は何号室だろう。ポストで確認すると、105号室だった。部屋のインターホンを鳴らす。しかし、隆弘は出てこない、出掛けているようだ。仕方ない、出直すか。
「あの、僕に何か用ですか?」
眼鏡をかけた頭の良さそうな男、隆弘だ。裕太がこっちを見てきたので、そうだ、と頷く。
「実は私探偵のようなことをしてまして、松本さんにお聞きしたいことがあって来たのですが。」
「もしかして、雅樹さんのことですか?」
「そうです。斎藤さんの直接の後輩に当たる松本さんなら、斎藤さんの人物像とか、斎藤さんに恨みを持つ方の心当たりとか、よくご存知かと思いまして。」
「そうですね、雅樹さんは僕の教育リーダーでして、本当によくお世話になりました。教え方も上手いですし、駄目なところはちゃんと叱ってくれるし、周りからの評判も良かったですよ。僕は本当に尊敬してました。恨みを持つ方なんていなかったと思います。」
何だか聞いててむず痒くなるな、褒めすぎだろ隆弘。
「念のためにお聞きしますが、今月の5日の夜は何をしていましたか?」
「5日は実家に帰ってましたね。僕の両親と一緒にいたので聞けばわかりますよ。」
隆弘もアリバイがある。とすれば残るは達也か。