協力してくれ
「明菜・・まさか本当に・・・。」
俺はとっさに右手人差し指を口に当てた。マズイ・・・マズイ、マズイ、マズイ!どうする、こっからどうするよ。
そう考えていると裕太は俺に近付き、抱き抱えると、病室を出た。
「奈央に、今の明菜を見せる訳にはいかないからね。さあ、教えてくれ、明菜、君は一体誰なんだい?」
「すまない、できれば黙っていたかったんだが、俺は斎藤雅樹、昼間警察が言ってた殺された男だ。」
「ふぅー。受け入れたくないけど、本当なんだね。何でこんなことに・・・。」
裕太は悩ましい顔をしている。
「本当にすまない。でも、裕太や奈央に迷惑はかけないようにするから。」
「もういいさ。ただ奈央には絶対にバレないようにしてくれよ。」
「ああ、もちろんさ。」
それから俺は俺の前世について裕太に話した。全て話終える頃には親子というより友達みたいな感じになっていた。
「じゃあ明菜は自分を殺した犯人を見つけたらどうするの?」
「もちろん、殺す。」
俺の幸せな日々を奪ったヤツだ。そのくらいされて当然だ。
「待ってくれよ。そしたら僕と奈央は殺人犯の親ってことになるじゃないか。それは勘弁してよ。」
そう言われればそうだ。今俺は裕太と奈央の子供なんだ。子供が人殺しなんてしたらどんなに苦しむことか、想像しただけで精神がやられそうだ。
「わかった、殺しはしない。ただ、ちょっと仕返しして、警察に突き出すようにするよ。」
裕太はホッとした様子だ。こうなったらとびっきりの仕返しを考えよう。ついでに・・・。
「裕太、犯人探し手伝ってくれないか?」
「う~ん、いいよ、手伝う。」
「ホントか、ありがとう!」
「ただ、一つ僕のお願いも聞いてくれる?」
「なんだ?」
「今君は僕の娘になるんだから、女の子らしくしてくれないかな?」
なっなんだと~。確かにそうだけど、女の子らしくって、ぶふぅ~。まっまあ仕方ないか。
「わかった。いや、わかったよ、お父さん。」
ちょっと可愛く言ってみる。なんか鳥肌もんだな。それから取り敢えず今日はもう遅いからと、寝ることにした。
・・・
「夏希、結婚式はどこでする?」
「そうだな~、海外とか?」
部屋のソファーに座り夏希と結婚式のこととか、結婚した後はどんな暮らしをするかとか話す。
「雅樹との子供ができたら、どんな子に育つかな~。」
「わかんねー。でも、一緒に愛情込めて育てて行こう。」
「そうだね。」
触れ合う夏希の右手をぎゅっと握った。
・・・
うーん、朝か。目を擦る。赤ちゃんってホントやること無いよな。ベッドの上でずっとゴロゴロだもんな、ちょっと退屈かも。
「明菜、ママだよ。う~ん、可愛い!」
奈央が俺を抱き抱えて頬擦りする。やっぱり自分の子供って可愛いんだろうな。でも、中身は24歳の男。絶対に言えねーな。裕太は今日から仕事って言ってたし、今日は奈央とずっとこんな感じかな。それはそれでちょっと疲れそうだ。早く裕太帰って来ないかな。