久しぶりだな
裕太は俺を乗せたベビーカーを押して取調室の外に出た。
「明菜、一旦落ち着いて、また殺そうとか考えてない?」
「わかってるよ、裕太。でも、それでも殺意が沸き上がってくるんだ。」
神崎を殺してやりたい、でも裕太や奈央に迷惑はかけられない。ふぅーふぅー。どうしたらいいんだ。ガチャッ。笠井さんが廊下に出てきた。
「雅樹くん、夏希さん落ち着いたみたいだけど、中に入って話しをしますか?」
「・・はい。」
裕太はベビーカーを夏希の横に運ぶと再び部屋の外に出た。夏希は赤ちゃんと二人きりになったこの状況に戸惑っているようだ。
「久しぶりだな、夏希。」
「えっ、今この赤ちゃんが!?」
夏希は驚いている。無理もないか、俺は今赤ちゃんだもんな。
「夏希、俺だよ、雅樹だ。」
「えっ、えっ。」
「信じられないよな。じゃあ俺達のことを話そうか。俺達が付き合い始めたのは高校2年のとき、達也が夏希にフラレた後、俺が理由を聞きに行ったら、夏希が俺のことが好きって言ったんだよな。初めてのデートは映画を見に行ったんだ。普段見ない恋愛映画だったから俺は内容全然入ってこなくて、映画の後、話をしたかった夏希を怒らせちゃったっけ。あとは、初めてのキスだけど・・・。」
夏希が俺を抱き抱え顔を埋めた。
「もういい、もういいよ雅樹。雅樹、雅樹、ごめん、ごめんね。」
夏希の涙が俺の顔に落ちてくる。
「俺も夏希が苦しんでたのに、わかってあげられなくてごめん。」
俺は小さな右手を夏希の頬に当て、夏希が落ち着くまで待った。落ち着いた後は俺が死んでから何があったのか、お互いに話した。最初ぐしゃぐしゃだった夏希の顔が良くなっていくのを見ると何だか嬉しくなる。
「雅樹が女の子になっちゃうなんて、なんか笑っちゃうな。」
「そうなんだよな、俺女の子らしくなんてできないから、きっとモテねーよ。」
「大丈夫、私も協力するよ。」
コンコン。笠井さんと裕太が入ってきた。
「ごめんね明菜、もっと話をさせてあげたいけど、あんまり遅いと奈央が心配しちゃうから。」
「いいよ裕太、ありがとう。」
それから俺と裕太は笠井さんに夏希を預けて帰ることにした。笠井さんが言うには、夏希は殺人を手伝ったことになるため幇助罪になる可能性があるらしい。でも夏希にその意思がなかったからたぶん大丈夫だ、とも言っていたので任せるとしよう。神崎も夏希の証言があれば逮捕できるだろう。でも俺としてはただ逮捕で終わらせる訳にはいけない、絶対に復讐してやる。




