俺、死んだのか?
「う~ん、あれ?」
目を覚ましたはずなのに何も見えない。真っ暗な空間。ここはどこで、今が何時なのかもわからない。
確か部屋のベッドで寝てたはずだ。背中には布団のようなふかふかした感触もないし、どういうことだろう?取り敢えず起き上がるか。ふう。立ったはいいが、周りに何があるかわからないから摺り足でゆっくりと移動する。前に前にと進んで行くが、何かと接触することもない。
「お待たせしました。」
そう、かわいい感じの女の子の声が聞こえたと思ったら、辺りが明るくなった。眩しい。しばらくして目が慣れてくると椅子が二つ向かい合って置いてあるのが見えた。一つには十七歳くらいの金髪で白いローブを着たかわいい女の子が座っていた。
「どうぞ、お座り下さい。」
女の子は空いている椅子を手で指した。俺は取り敢えず、椅子に座った。
「なあ、あんたここの人か?ここはどこなんだ?」
「ここですか?この場所に特に名前はありません。ただ死んだ方に次の生をどうするか、お話しする場です。」
「死んだ方ってことは俺は死んでるのか?」
「はい、あなたは確かに死んでいます。」
どうして俺は死んだんだ?昨日寝るまでは体に特に異常は無かったし、もしかして殺されたのか?だとしたら誰に?
「混乱しているようですが、話を進めてもいいですか?」
「あ、あの一つ聞いてもいいか?」
「何でしょうか?」
「俺はどうして死んだんだ?」
「ちょっとお待ち下さい。」
そう言うと彼女は俺に近寄り、右手を俺の頭に当てて目を閉じた。しばらくして彼女は目が開いたと同時に喋りだした。
「あなたは昨夜寝ているところ、心臓を刃物で刺され死亡したようです。」
「俺を殺した相手は?」
「すみません、あなたの体から読み取れる情報はそこまでです。」
俺は殺されたのか・・・。誰だかわからないけど、俺に恨みを持っていたヤツがいるのか、それとも強盗のようなヤツに殺られたのか。くそ、俺はまだ24歳だったんだぞ!それにもうすぐ結婚する予定だったんだ!それを・・・くそ!彼女は再び椅子に座ると咳払いをした。
「おほん、すみませんが話をさせて頂きます。私はアズラエルと申します。あなたに次の生について斡旋させて頂きます。」
目の前に突如立体映像が現れた。そこに写し出されたのは魚、鳥、虫、木など様々な生き物だった、もちろん人間も映った。そこから選べということらしい。
「どうですか?お気に召すものはありましたか?」
「なあアズラエルさん、人間を選んだとして、今の記憶を持ったまま、しかも場所を選んで転生できるか?」
「そうですね、場所は可能ですが、記憶は難しいですね。と言うのも転生には今持たれている魂のエネルギーを大きく消費します。その際に記憶が無くなってしまうことがほとんどなのです。転生しても記憶が残る確率は一億分の一といった所でしょうか。」
一億分の一・・・そんなに低いのか・・・。でも。
「アズラエルさん、俺はまた人間に生まれたい。そして、産まれる場所は俺が前に生きていた場所の近くに頼む。」
「わかりました、では早速準備しましょう。」
彼女が右手を前に出すと、俺の目の前の床が光った。
「その光の上に立つと、次の生に生まれ変わります。さあ、どうぞ。」
俺は椅子から立ち上がり、光る床に踏み出した。すると、全身に衝撃が走った。そのまま俺は気を失った。
・・・
目を開けると白い天井が見えた。背中には柔らかい感触がする。布団の上か。ここは病院か?自分の手を見るとかなり小さくなっていた。どうやら転生して赤ちゃんになったようだ。しかも股間にはあれがない、女の子になったらしい。あれ、今俺、前の記憶がある、やった、やったぞ。よし、これで前の俺を殺したヤツを探して復讐ができる。待ってろ殺人犯。