少女の短剣
『そういえば、セーラは何故此処に来たんだ?』
「今まで使ってた短剣が折れたから武器屋に行ったら、良いのは全部高かったから、手っ取り早く稼げるっていうダンジョンの行き難い道を通って来たんだけど、何故か此処に着いちゃって、高そうな物も無いし。ラビリは何か知らない?」
どうやらセーラはダンジョンに稼ぎに来たみたいだ。何が売れるか分からないが大体の物は俺の魔法で作れるだろう。だが、ダンジョンから出ないことには売れるものも売れないだろう。
『取りあえずダンジョンから出たらどうだ?此処に居ても意味は無いだろ。』
「ダメ。ダンジョンの最奥を目指す。このままじゃ短剣が買えない。」
『俺には錬金魔法という魔法が有る。それで短剣を作れば短剣を買う必要は無いんじゃないか?』
「それじゃ短剣の形をしたただの塊。安い短剣と一緒。」
手っ取り早い案を出してみたがそれでは駄目みたいだ。俺としては早くこのダンジョンを出て街を見たいんだが。
『変化というスキルで俺が短剣になるのはどうだ?それなら後から簡単に構造が変えられるし、奥まで行く必要も無いだろ。』
「うん。それでも良いけどラビリ自体にある程度の強度と粘り強さが無いと話にならない。
私と勝負して。」
どうしてこうなった。
♦♢♦
現在、地魔法や錬金魔法、木魔法などで整えたフィールドに立ちセーラと向かい合っている。
セーラの手には、錬金魔法で作ったサバイバルナイフの形をした鉄塊が握られている。短剣なんて神話のものしか知らないし、戦闘用かどうかは置いといて実際に使われているものの方が良いだろう。
俺の方はセーラから離れられないため、本体である指輪からワイヤー状の糸を出し、その先にヒト型の体を作る。今まで気にしなかったが人間の体が欲しい。ワイヤー部分は空間魔法により接触しないようにしている。
「行くよー。」
セーラの合図により勝負が始まる。尚、今回は魔法での強化、攻撃は行わない。完全な力押しだ。
俺はセーラの方へと踏み込み、一気に距離を詰め先端を鋭くした手で斬りかかる。木を貫けるほど尖らせた俺の手は、セーラまであと少しというところまで届いたが、幸運にも岩と木に阻まれ当たることは無かった。まあそれが幸運スキルなんだが。
俺の攻撃から逃れたセーラは遠心力や重力などを利用し、ナイフで斬りかかって来るが、俺は盾のような形に変化させた手で弾く。
同じ様な事が何度も繰り返され精神的に疲れたころ、セーラから終了が告げられた。
「終わりー。これだけやって傷さえできないなら問題無いだろうし。あと、そろそろ飽きてきたし。」
どうやらセーラも飽きていたようだ。別に戦いが好きなわけでもないため、あまり長く続いても飽きるだけだ。