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東方夢現大戦  作者: 野伊豆
プロローグ
1/3

始まりの夜

初投稿です。

現代入りっぽいのを書いたのも初めてですし、わからないことも多く不安ですが、これから頑張っていきます。

よろしくお願いします。

 夜の公園って、なんか神秘的なものを感じる。

 街灯に照らされた木々が風に揺れる音、サラサラと吹き抜ける夜風がとても心地よくて、子供のころは嫌なことがあると、よく家を抜け出して公園に来ていた。

 真っ暗な砂場で空を見上げていると、そこにはきらきらと輝くお星さまやお月様があって、手を伸ばせば届くんじゃないかって、何度も空に向かって伸びをしていたのを覚えてる。

 夜の公園は臆病な私にとってとても幻想的で、まるで夢の世界の住人にでもなったかのような、そんな風に思わせてくれる(いこ)いの場所。とても不思議でいつでも私を優しく迎えてくれる素敵な場所なんだ。

 そう、少なくとも昨夜までは……。



 「あんなのどうしろって言うのよー!きゃあ!」


 紅く燃え滾る炎の大剣が公園を明るく照らし、そこから生まれた火の弾が次から次へと私に襲いかかってくる。


 「無駄口叩いてないでさっさと避けなさい。じゃないと、死ぬわよ?」


 ディスプレイの中にいる紅白の巫女はイライラと腕を組みながら私に忠告して来た。

“死ぬ”なんて普段疲れた時によく口にしていたけれど、今日ほどその言葉を冷たく感じたことはない。


 「ムリムリムリっ!こうやって飛んでるだけでも精一杯なのに――ひゃっ!」


 火の弾が鼻先をかすめた。その熱が嫌というほど私に現実を突きつけてくる。もしこれが悪い夢なら……なんて。そんなことを考えても、きっとこの悪夢のような現実は醒めてくれないんだろうな……。


 「敵も素人(しろうと)なんだから、こんな弾幕簡単に避けられるでしょ?ほら、あんな考えなしに振り回してる奴なんて、ちゃっと避けて、ばっとやっちゃいなさいよ!」


 ディスプレイの中から彼女は空中を指差した。その先には縦横無尽に炎の大剣を振り回している男が狂ったように笑っていた。


 「ヒャハハハ!最高だ!最高の気分だぜっ!もっとだ、もっとぶっ壊れろ!ヒャハハハハハ!」


 (きらび)やかで色とりどりな宝石のついた(いびつ)な羽。暗闇の中で不気味に輝く紅い瞳。白のシャツに紅いベストで夜空を狂い舞うそれは、まるで恐ろしい物語の中に登場する悪魔のようだ。


 「うわぁ……。ねぇ、霊夢。私、帰っちゃダメかな?」

 「ダメ」


 即答された。


 「だって、あんなの私一人で止められるわけないじゃない!?今日はもうバグ一体は倒してるんだし、あんなおっかないのは放っておいて帰ろうよ?」

 「ダメよ」


 また即答された。


 「霊夢以外にも幻想郷ってところからこっちに来てパートナーと戦ってる人ってたくさんいるんでしょ?なら、その人たちに任せればいいじゃない?ね?」

 「……あんな馬鹿どもなんて当てにならないわよ。それに、今結界解いて逃げたりしたら、この辺り一帯めちゃくちゃになるわよ?」


 霊夢は親指を立ててクイッと周辺を囲む結界を差した。既に大剣や火の弾の攻撃を浴びてボロボロにほころび始めているそれは、何とも頼りなく、今も夜の公園の静けさを守り続けている。


 「それにフラン――あっちのパートナーから一向に返事がないのが気になる……」


 霊夢は(うつむ)き、難しそうな顔で何かを考えている。


 「……霊夢?」

 「……いえ、何でもないわ。それより、あんたこの場所が好きなんでしょ?だったら自分の力で何とかしようとか思わないわけ?」


 ディスプレイ越しの小さな少女の瞳が私を強く見つめていた。

 

 「そ、そんなこと言われても……」


 既に荒らされた花壇や遊具を見て何も思わないわけじゃない。大切な場所が壊されて怒ってないわけじゃない。でも、目の前にいるわけもわからない奴が不気味に暴れまわっているのを見ると、怖くて仕方がなくて、震えが止まらなくて……どうしても弱気になってしまう。


 「子供のころの思い出の場所で、好きになった人と初めて会った場所なんでしょ?それとも、あんなに楽しそうに話してたことは全部嘘だったの?」


 霊夢は素直じゃないし意地悪だ。それはこの数日間、一緒に過ごしただけでもよく分かった。だから、この問いかけが私に対する単なる悪態のように聞こえても、実はそうじゃないことはよくわかってる。


 「……嘘じゃないよ。嘘なわけないじゃん!ここは、私の大事な場所なんだもん!でも……」


 怖い。得体のしれない力が。目の前の狂気が。感じたことのない殺意が。怖くてたまらない。

 でも、そんな私に霊夢は強く、そして優しく微笑んでくれた。


 「そんなに大切だと思うのなら、守りたいと思うなら、まず自分で何とかして見せなさい。そのための力なら私が貸してあげるから」


 スマートフォンに文字が浮かび上がる。守るための力が込められたそれを霊夢は私に差し出した。

 その文字を見るだけで、霊夢の声を聴くだけで、私の中に渦巻いていた不安が和らいでいく気がする。


 「……やっぱり、霊夢ってすごいね」

 「なに言ってるのよ。ほら、早くしなさい。ぐずぐずしてると向こうがまた仕掛けてくるわよ?」

 

 霊夢はちょっぴり照れ臭そうすると、すぐにいつもの調子で私を急かしてくる。本当に素直じゃない。


 「……うん!」


 私は返事をすると、スマートフォンを握る手に力を込めて男の方へと向き直った。


 「ヒャハハハ!次だ、次の力を寄こせフランドール!何もかもをぶっ壊す力をよぉぉぉ!」


 男は大剣を振り回すのに飽きたのか、剣を放り投げると腰のホルダーからどす黒い気を帯びたスマホを取り出した。


 「次は何がいいかなぁ?どうせなら派手にぶっ壊したいよなぁ?コレにするか?それともコレかぁ?あぁ、迷っちまうぜぇ~!」


 ニタニタと不気味に笑いながら男は画面を操作し、壊すための力を秘めた文字をディスプレイ上に浮かび上がらせる。


 「来るわよ!構えなさい!」

 「っうん!」


 霊夢が叫んで構えた瞬間。


 「あぁ、コレにしよう……」


 男の指がディスプレイの文字をとらえスライドする。

 

 『禁弾「スターボウブレイク」!』


 狂気混じりの声とともに放たれたのは色とりどりの閃光弾。この降り注ぐ恐怖に今から私は立ち向かわなくてはならない。でも、スマホを操作するその指先の震えはもう止まっていた。


 『霊符「夢想封印」!』


 放たれた光が夜に散っていく。

 それはとても幻想的で美しい。

 この科学が進化した世界に、現実がはびこる時代に、こんな景色が見られるなんて、まるで夢のようだ。

 やっぱり夜の公園は私にとって、とっても不思議な場所だった。


 あの時。神様からメールが届いたあの日から。私の世界は幻想に溶けてゆく。

全体的にこうしたらもっとよくなるなどアドバイスや感想をいただけたら幸いです。

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