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リナ・再び火野札に戻る

 気が付けば。

「……リナ!?」

 ここは、火野札生物科学研究所だ。何度も来ているし、目の前に仁藤玲子その人が立って、驚いて私を見ているのだから間違いないだろう。

 隣には、顔からまだ血を流しているホオフに、鉄の爪を片方失くしたリウスがいる。どちらも、驚き周りを見渡している。

「……時間にして二百五十七日です。八ヶ月以上もどうしていたんですか?」

「そんなに経ったんだ……」

 果たして何から言うべきか、何を、どうすべきか。

「リナ、ここは?」

 リウスの質問に、ホオフも冷や汗をかきながら、私を見ている。

 いや、けれど今の言葉、私には理解できている。言葉は意味不明なものとして聞こえたのに。

 ……理解できているなら戸惑う必要はない。

「……何から、話しましょう。ハングドマンを失ったことも、含めて」

 玲子の表情が一層厳しくなった。



 二人きり、というわけにはいかない。

 リウスとホオフに加え、玲子と(よしみ)にしているジャッジメントの(れん)、デビルの愛海(あみ)も含めてだ。

 アフリカの大地から異世界に飛び、各国を巡りスターと出会い、無事にとはいかなかったが、この世界に戻ってきた話を終わらせた。

 全ての話を終わらせた時、真っ先に口を開いたのは蓮だ。

「その二人が異世界人?」

「そうよ。おっきいのがホオフで、ちっちゃいのがリウス」

「へえ……」

 愛海が興味深そうに呟く。

 さて、我らが御大将はどんな反応をするか。

 玲子の方に視線が集まる。

「とにかく、リナは今どうしたいですか?」

「どう?」

「命ですよ。今のままでは長く持たないのでしょう?」

「そうね。でも治せるの?」

「余程の金と手間はかかりますが、臓器移植は不可能ではありませんよ」

「……それって、私の臓器を移植される人もいるんじゃない?」

「死んで間もなくなら問題ありません」

 本当にそれで済むのだろうか? 無理して人を殺したりしそうだ、この人は。そんな方法を選んでも良いと思えない。

「それよりもするべきことがあるの。星奈に会わせて」

「……まあ、まずはそうしましょうか。車椅子、貸し出せますが?」

「お言葉に甘えるわ。誰か引いてくれる?」

 蓮が立ち上がったけれど、それにリウスが制した。

「私は、リナの騎士。だから……」

「分かった、お願いできる、リウス?」

 リウスは興奮したようにうなずいた。

 一方のホオフもだいぶ興奮しているようだ。

「はは……ははははは!! ここの未来は全く読めん! こんなことがあるのだな!!」

 手当を受けてミイラみたいになってこんなに笑っていると、もはや不気味。

「そこは悲しむとこじゃないの? 長年の努力が水泡に帰したわけじゃん」

「あんな能力いるか! 人生は何が起きるか分からんから楽しいのだ!」

 自分の能力を全否定しやがった、ホオフも馬鹿だと再確認した。

「では、私は玲子殿と話を続けさせてもらう。あとは好き勝手にしろ、リナ」

 異世界の研究者がこちらの人と何を話すのだろう、と興味深いが、私は先にしたいこともある。

「にしても薄情ね。もう少し私に感慨を抱いていいじゃない」

「充分過ぎるほどだ。一年や二年会わずとも、貴様を思い出さない日はないだろうな」

 そして、彼は普段見せるような、狡賢そうなニッとした笑いを見せた。

「ではリナ、気を付けて。……と言っても、その少女の騎士を止められる人間がこの世にいると思えませんが」

 玲子はそんな風に、普段通りゾッとするような笑顔を見せた。



「次は右ー。そんでまっすぐ」

 リウスの言葉は当然元の世界のもの。彼女はこの世界の文字も言葉も知らない。

 私が数ヶ月あっちにいたおかげで、どうやらあっちの文字も言葉もすっかり覚えちゃったから意識せずとも意思疎通できるけど、この世界じゃチェンジャー以外と話せないでしょうね。

 天海、という表札を目にして、ようやく私は安堵した。

「そこのボタン、押して」

「いいの?」

「いいのいいの」

 ぴんぽーんというチャイムが鳴ると同時に、どたどたと分かりやすい足音が聞こえる。足音で分かるなんて、星奈もおませなままらしい。

「はいはい今行きまーす。はー……」

 い、と言う前に、彼女は絶句して私を見た。

「リナさん!? どうして、そんな……」

 腕が鉄に変わってて車椅子でいれば、そんな反応もするだろう。

「話せば長くなるよ。でも、全部話す。今までの、何もかも全て」

 高校の時の私から、全て。



 驚き、悲しみ、怒り、悲しみ、笑い、悲しみ。

 星奈にとって私の人生は悲しみに溢れているらしい。

 ハングドマンと別れこの世界に戻ってきた時の話をし終わると、彼女はまた泣いていた。

「あんまり泣かないで、悲しませたくて話しているわけじゃないから」

「うん……だけど」

 それでも彼女は嗚咽しながら、ティッシュを取って鼻をずびーと噛みながら聞いている。

「ま、いいけどね。好きなだけ泣いてくれても。それで星奈は……」

 一呼吸おいてから、私は一言一言大切に紡ぐ。

「毎日三回歯を磨いてる? 夜更かししないで早起きしてる? 嫌いな野菜も食べてる?」

「え、え、突然なに!? スターみたいなこと……」

「スターに託された言葉よ。彼女は元気で、常に公明正大、自分の信じる騎士道を進んでいるんですって」

「あ、あはは、スターらしいや」

 星奈は困ったように笑っていたけれど、その困り顔が徐々に歪んでいった。

「う、うえええ……」

 テーブルの向かい側で泣き出す星奈を、私はそっと抱きしめることもできない。

 ハングドマンのカードがなくなってから明らかに体力が減ったみたいだ。所持しているだけで治癒できるあれがない以上、果たして三ヵ月もつかどうか。

「君が君の信じる道を進んでいるなら、それが人から悪と言われようが、私はそれを信じる」

 星奈が涙に濡れた瞳をそっと私に向けた。

「スターがあなたに伝えたい、っていう言葉。たぶん、あの時のことを気にしてたんじゃない?」

「あの時?」

 忘れもしない、私達の輝かしい地上波デビュー、チェンジャーの新人類宣言の瞬間。

「ハイエロファントやエンペラーの(きり)少年に反対されて、自分が正しいか信じ切れなかったでしょ?」

「……私、あの時はリナさんがいなかったら……」

 人とチェンジャーが完全に分類されかねない状況で、その融和に成功したのは(ひとえ)に私の活躍と言える。

 誰しもの目に触れるテレビの場面でチェンジャーが一枚岩ではないと示し、抗争を始めた私の勲功はなかなかのものだろう。

 でも、スターは黙っていた星奈を応援したいのだ。

「私がずっと一緒にいるわけじゃない。だから星奈も自分を信じて。スターもあなたを信じているから」

 悲しくて、また泣きそうになった星奈だけれど、嗚咽に塗れる前に、一言だけ大きな大きな、元気な声を聞かせてくれた。

「はい!」

 やっぱり良い少女だ。恐怖と戦いながら、着実にそれを乗り越えていっている感がある。

 彼女のように育つことができたならば、私もこんな風には……いや。

 私はこれで良い。

 こんな私だったからこそ、いろんなことができたんだ。



 玲子の庇護下に入った私は、彼女の大学生時代からの後輩である霧矢(きりや)(しのぶ)の家に住んでいた。

 二十ほども年上のおばさんとおじさんの家で介護されて暮らすなんて、なんだかとっても不思議!

「……ごめんなさい、霧矢さん」

「謝らなくていいわよ。後でまとめて玲子に文句言ってやるから」

 殊勝な態度で彼女は口元をにぃっと歪めながら私の下着を替えてくれる。本当にこの人は立派だ。

 今は、チェンジャーという化け物をこの世界に導くきっかけとなった泉谷(いずみや)光史郎(こうしろう)と私、二人を介護同然に養いながら、更に玲子が行っていた人体の研究を引き継いでいるというのだ。ある意味チェンジャーより化け物じみている。

「ところで、玲子が今度飲みに行きたいって言ってるけど」

「飲み? この体じゃ無理ね。酒呑んだら死ぬって言われたから」

「でしょうね」

 専門ではないが、一応霧矢さんや玲子にも体を見てもらっている。生き延びるのは不可能ではないが、やはり玲子の力は必須だと。

 命を諦めるのは忍びないが、運命だと受け止める必要もある、と思う。

「……やっぱり、行こうかしら、飲み」

「……本気?」

 まあ、死にますと言うのと同義だから、そんな反応もするだろう。

「本気も本気。あんまりお酒は好きじゃないけど、死ぬ前に一度は飲んでおきたいかな。飲みたい気分が多くてね」

 アルドラの土産も残っている。どうせ死ぬなら飲まなきゃ損々だ。

「……そう、じゃあ、伝えとくから」

「ありがとう、霧矢さん」

「うん」



 そして呼び出された場所は、玲子の研究所だった。

「……飲み行くって聞いたんだけど?」

 子供のリウスを連れて行けないから、と途中まで霧矢さんに運んでもらったのだが、あとはここに行けと言われて一人で来たのだが。

 そこには、玲子一人しかいなかった。

「どういう考え?」

「あなたと二人きりで話す機会は数えるほどしかありませんでしたから」

 彼女は缶ビールと百パーセントフルーツジュースを持っている。準備は万端らしい。

「全く……あなたのそういうところは嫌いじゃないけど」

「おや、正直ですね?」

「私も嘘ばっかり吐くのはやめろって、スターに叱られたのよ」

 信頼できる人を作り、恐怖を超える。胸糞悪い私の思い出だけど、玲子はそれを小さな笑みと共に言う。

「嘘ばかり言うのも、あなたの良いところだと思いますけど」

「はぁ?」

「日本人らしくていいじゃないですか。奥ゆかしくて。本音を言うなんてらしくないですよ」

 正直呆気にとられた。こんなところを私の良さと言ってくれる人がいるなんて。

 けれど、そういうものなのかもしれない。友情とかって、認め合うって。

 それは、それこそ気持ち悪い。悪いところは悪いと言ってくれた方が私は嬉しい。

 そして、それはきっと玲子もそうだろう。だから彼女は本気でこんなところが私の良さだと思っているんだろう。

「変なの。ま、私もそういう変なところ、嫌いじゃないけど」

 玲子が珍しいほど思い切りビールを煽るのを見て、私もジュースをちびちびと啜った。

「私もあまり本音は言いませんが、どうせ墓場まで持って行くでしょう? 今日は無礼講と行きましょう」

「笑えない冗談はやめて欲しいんだけど。……ええ、好きなだけいろんなこと言わせてもらうわ」

 罵り合いにでもなるかと思ったけど、話は凄く以外にもこじんまりとしていた。

 玲子の学生時代の話なんかされた日には、私もリアクションに困るというものだ。

「玲子って意外とモテたんだねー」

「意外、ですか? 今でも結構口説かれますよ、化け物なのに」

「化け物ってあんたが言うの!? 新人類でしょ?」

「道具で変身するだけで、新種の生物なんて区分けできません。猿と自販機を使える猿の違い程度のものです」

 いくらなんでもぶっちゃけ過ぎだ。私が茫然としていると、彼女は三本目の缶ビールを空けた。

「飲み過ぎじゃない?」

「今日は酔い潰れたい気分なんです」

「私が一人で帰れないでしょ」

「素面なのに、ですか?」

 玲子はおかしくてたまらない、という風に笑う。四十過ぎのおばんのくせして、子供みたいに無邪気に笑って可愛らしい。笑い上戸か。

「ところでさぁ、それで玲子は結婚とか考えないの?」

「魅力的な方がいれば、是非。けれどどんな人も実験したくなるんですよね」

「うっわ、本当に化け物ね。今まで一度もなかったの? 胸が切なくなるような感覚とか。感動で泣いたことある?」

「怒りますよ? 私だって赤い血が流れているんですから」

「やだやだ、玲子さんに怒られるとまた拷問されちゃーう。きゃははっ!」

 ちょっと意地悪く笑い飛ばす。あの経験だけは他の誰にも真似できないでしょうね。

「感動で泣くはあまりないですが……あなたのことを考えると、こんなにも切ないのに」

「やだもーっ! それって告白か何か!?」

 妙に演技派な玲子を見て、またきゃははと笑っていると、彼女から涙が流れ出して背筋が凍った。

「…………」

 鼻をすんすんと鳴らし、目元を拭う姿は、少女のように、泣くのを恥ずかしがっているみたいだ。

 そりゃもう、私は絶句よ。

 むしろ誰が声をかけられようか。例えば総理大臣とか自分の父親とかが突然二人きりで泣き始めたような、そんなどうしようもない状況で、これ誰なら突破できるの?

「……ねえ、私なんて、今じゃ死に体のただの人間よ? あなたが涙するほどの価値はないわ」

 すぐ死ぬだけの元チェンジャー、一体玲子はどうして私を庇ってくれるのか不思議なくらいだ。

 けれど彼女は不意に立ち上がって、涙目で、酒臭い顔をぐっと近づけて、私の体に構わずに抱きしめてきた。

「いったぁぁぁぁぁいって!!」

 縮んだ! 寿命が数時間は縮んだ!

「チェンジャーは沢山いても私の友達は少ないんです!」

 そして玲子は、わんわんと泣き出してしまった。

 人は見かけによらないと言うが、玲子は泣き上戸だったらしい。

 普段は酔うまで飲まないからね。でも、こんな可愛らしい姿を見せてくれるなんて。

「結婚する?」

「でも死んじゃうんでしょう!?」

「ああ、そっちか……」

 この変態なら性別は気にしないでしょうけど。まあそんなに死別することが嫌なのね。

 死別は辛い。特に大事な人なら。

 それは知ってる。

「そうね。人間いつか死ぬものよ。でも今までだってずっと離れてたんだから平気でしょ。えっと、八ヶ月以上」

 自分を棚に上げて注意するのも酷だけど、玲子がこんなに取り乱すとは思えなかったからついつい宥めようと思ってしまう。

 けど、彼女はもう暴走状態だ。

「今まではハングドマンがあったから! あなたが生きていると分かっていたから平気だった! 生きているかも分からないこの八ヶ月、私がどれだけ心配したか!」

 怒り上戸でもあるらしい。っていうかこんなに感情的な人だったっけ。

「結構ため込んでるのね。他にも言いたいことはある?」

「……これから、どうする気ですか?」

「どうするって?」

「この一週間、全く何もせず、ただ忍の家にいたじゃないですか。そのままそこに居続けるつもりですか?」

 今後の方針、というのは正直あまり決めていない。

 リウスとホオフは玲子主導の元、研究で体を色々と調べられているらしく、ホオフに至ってはこの世界の言語や文字を学んでいるという。

 その一方、私はやはり疲弊し、使い物にならなくなっていく体にいい加減、愛想をつかしてきたところだ。

「……別に霧矢さんに厄介になっているけれど、切少年とかオタクにも会ったから、もうここに未練もないのよね」

 どうせ死ぬなら、セルゲイや鈴輝にも一声くらいかけたいものだが、それは体が無理だと言っている。

「どうせなら缶ビール一本くれない? 腕なしの分と私の分」

「……それは、どういう?」

「やりたかったのよね。墓石に酒かけるやつ」

 漫画とかでよく見た。死んだ親友に、好きだったよな? なんて言って墓石に酒をかけて弔うのだ。

 死ぬ姿を看取って欲しい、なんて昔は思ったものだけれど、今この状況では誰かに見られたくない。

 恥ずかしい、死ぬ時の私はどんな顔をするのか。汚くないか、なんて考えると、死ぬ姿なんて見られたくない。

 玲子は黙って二本の缶ビールを寄越してくれた。私の分も用意していたらしく、結構な量の酒がある。

「……リナ、親友ですよ、私達は。年齢の差やチェンジャーであることなど関係なしに」

「そう言ってくれるだけで幸せよ。私も、友達は少ないから」

 軽く玲子をハグして、そのいい匂いの髪を堪能した。こういう時に外国人の見た目って便利。




 そして、物寂しい墓場についた。

 彼の遺体は仁藤家の墓に納められている。とりあえず用立てすることもできずに、仮で入れたのを今もそのままにしているそうだ。

 勝手に玲子も入る予定の墓に粗相するのは気が引けたが、彼女は怒らないだろう。

 入口まで来て、久しぶりに車椅子から立ち上がった。

 しばらく動かさなかった足は上手く体を支えることができないけれど、無様に転ぶこともなかった。

 すっかり筋肉の衰えた老人みたいに、ぷるぷると震える足を踏ん張って進む。

「あははっ! 惨めだなぁ、すごく惨め」

 すぐに座りたくなった。どうせなら杖の一本でも貰って置けばよかった。

 それでも、知らない家の墓に手をつきながら、一歩一歩進む。

「階段は……昇る方が……楽だよ、っと」

 下りのことはもう考えない。絶対転ぶ。

 けれど無事に『彼』の墓まで辿り着いた。

 こんな些細なことに達成感を得るなんて、不幸な体なのか幸福な体なのか分かりやしない。

 早速缶ビールを一本開けて、墓にかけてやった。

「挨拶もなしにかけるなんて、腕なしなら殺すぞ糞野郎、なんて言うんでしょうね」

 明るくは笑えないけど、少しは穏やかな笑顔を浮かべていたと思う。

 一本の缶ビールを流し尽すと、私はもう一本の缶ビールも開けた。

 腰に手を当て、ごくごくと飲み干す。

 苦い苦い、やっぱりこれは慣れない。

「げえええええええっ!!」

 体がそれを拒否した。

 別に飲んですぐ死ぬわけじゃない。けれど駄目だ。受け入れられない。

 死にたくない。

 駄目だ、やっぱり怖い。

 乗り越えられない、怖い、怖い、死にたくない、嫌だ。

 酒は私の体に染み込んだだろうか。もう取り返しがつかないだろうか、いつ死ぬんだろうか。

 そんなことを考えてしまう。諦めきれない。駄目だやっぱり駄目だ駄目だやっぱり駄目なんだ。

 無様だ。けれど誰かにいて欲しい。やっぱり寂しい。無様でも汚くても誰かに一緒にいて欲しい。

 なんでハングドマンはいないの? いつもいつもそばにいてくれたのに。

「死にたくないよぉっ!!」

 酒を戻した時から涙が止まらない。今だったんだ。やっと死を実感したんだ。

 こんなに怖いのを、一人で乗り越えられるわけがないんだ。気付いていたのに、強がっていた? 違う、気付いてなかった。死ぬってことを気付いてなかった。

「嫌だ……嫌だよ……」

 吐いた後に少しせき込むと、今度は血を吐いた。

 後は言葉にならない嗚咽を漏らすだけだった。

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