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夏灯りの夜  作者: 気楽用
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はじまり

全校生徒の集められた体育館は窓やドアが締め切られ、数台の大型扇風機で蒸し暑い空気を循環していた。生徒はクラスごとに並べられ、周りをぐるっと教師が囲んでいる。教頭が大汗をかきながら集会の挨拶をし、いよいよ校長が今回の一件について説明を始めるところであった。

「校長の松下です。こうしてみなさんに臨時で集まっていただいたのは訳があります。

すでに知っている人もいるでしょうが、当学校の生徒がとても残念な事件に巻き込まれてしまいました。えー、少しショッキングな内容を含みますがどうか聞いてください」

場内は扇風機の羽音だけが響く-

「まずは……」

僕らは体育館の暑さに悪態をつくことも忘れ、固唾をのんで校長の話を聞き入った。

だがそれは、僕らの最悪の想像にただ丸をつけるだけの答え合わせであった。


事件の概要は以下の通りだ。

警察に通報が届き、事件が発覚したのは今から2日前、8月1日の朝だった。

現場はこの中学校から徒歩10分くらいにある墓地。

日課の墓参りをするためやってきたおじいさんが水汲み場近くで男物のスニーカーを3足、つまり3人分見つけたらしい。

【そのスニーカーの中には人の足が入ったままだった】

すぐに騒ぎになり、呼び出された警官たちが身元不明の行方不明もしくは殺人事件として、墓地やその周辺をくまなく探しているそうだが、

 【被害者のくるぶしより上はまだ見つかっていない】

前日のうちに墓へ来た人は複数の男性や血の跡などを見なかったそうなので、7月31日の夜のうちに事件は起こったと考えられている。

ここは大した商業施設やイベント会場も無い田舎だ。特に墓のあたりなど、裏にたいして高くもない山があるくらいで、何も無い。

そんなThe田舎では人のつながりが密になっており、噂話などはその日に広まる。

まして恐怖心や好奇心を煽る、こんな凄惨な事件はあっという間に知れ渡ることとなった。

(昨日、行方不明事件があったって、おやじが捜索の手伝いに行った!)

(男の人が3人もお墓で殺されたらしいよ)

(町長さんとこの息子が昨日の晩から帰ってないらしいぞ)

……

「ねえ、あっちゃん。隣の奥さんから聞いたけど、行方不明事件があったらしいよ?」

僕がその事件を知ったのは8月1日の夕飯の席だった。

「あったらしい、ってことは解決したの?母さん」

と母に尋ねても、分かんない、と笑って誤魔化された。

だからその時はふーん、としか答えず、それよりもそろそろ晩飯に牛乳は合わないから麦茶にしてほしいな、と全く別のことを考え出す始末であった。

だがその日の夜に田中さんからあのメールが届いた。

<なんか学校近くで行方不明事件があったみたいだけど、柴田くんは大丈夫?

浜口先生が帰省しているらしくて連絡がとれないので、私たち生徒で名簿を作って

点呼を取っているから、このメール見たら返信よろしく!!!!>

(ん……? どういう事だ? もしかして誰が行方不明なのかもまだ分かってない?)

すぐに田中さんに返信し、詳細を聞き出した。

(足しか見つかってないだって!?)

頭がクラクラした。これは現実か幻か。こんな近くの場所でバラバラ事件があって、犯人は分からない。もしかしたら犯人は平気な顔をして今、この家の前を歩いているのではないか?もしかしたら犯人は複数いて、この家をすでに囲っているのではないか?

ぐるぐるぐるぐる。 悪いイメージは螺旋を描いて僕の脳に浸食してくる。

その日はそのまま眠ってしまい、気が付いたら翌日の朝だった。


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