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4  副隊長には勝てませんでした。





 私の要求は二つ!

 父様と一緒に王都に行くこと!(お城に入ることは無理でもせめて外観だけでも見たい!)

 外出不可なんて言葉撤回しろ!!(どんな理由があろうと納得なんてする気はないからね!)

 その要求が通るまで私は断固戦うのだ!!

 


 そう思ってたのに…



「ゆりうしゅしゃんひどいよ!まどから入ってくるなんて!!」

「酷いのはお嬢さんですよ。なに篭城なんてやってるんですか。おかげで俺もお嬢さん救出劇なんて仕事外のことやらなきゃなんなかったんですよ」

「ひどくないもん!ひどいのは父しゃまたちだもん!」



 むくれる私はユリウスさんの腕の中。

 ……はい。あっさり捕まりました。





 そうなのだ。時間になっても父様が出てこないので、一緒に行く予定の副隊長であるユリウスさんが様子を見に来たら、私の部屋の前で大騒ぎの両親&兄様&メイド達を発見。

 どうやら部屋に入れなくなってるらしい、上からちょっと見てみるか?と、軽い感じで木に登って窓から覗けば、扉の前で魔法を展開する私がいた。

 見られてるとも知らない私は、今度は扉の前に椅子を運んだり、本を積み上げたりとちょこまか動いていた。


 それを見ていたユリウスさんは、こっそり部屋に入って背後に回りこみ、あっさり私を捕獲したのだ。

 しかも、扉を開けなくするアレンジ魔法も魔石を手放す&内側からの干渉にあっさり無効化したのである。


 ユリウスさんは、フルネームはユリウス=ブラウニー。年は二十六歳。

 実は伯爵家の三男坊で、血筋から言えば我が家より格上の存在なのだが、なにをトチ狂ったか父様に憧れ、長男の宰相の補佐として教育されていたのを蹴って15の時に騎士団へ入団。

 元々文武両道と謳われていたため実力もあり、入団するなりめきめきと頭角を現し、二十歳で副団長になったと言われている。

 私から見たら、外見は優しげに見えても食えないお兄さんって感じだ。面白いことには寛容だが、逆らったら終わりな気がする。

 そして私をよく観察してる風なので、油断できない人でもある……



 それにしても……有能すぎませんか?副隊長。

 閉まっていたはずの窓を開ける音さえ気づかなかったよ。

 隠密業でもやっていけるよ!!



 むうっと拗ねてる私を見たユリウスさんは、おもむろに私に目線を合わせると、にやりと笑う。

(ひっ)

 嫌な予感に身をすくめるとそのままにこやかな((注)目だけは笑ってない)顔で語りかける。


「いいですかお嬢さん…隊長の仕事の邪魔をしているのがわかりますか?わかりますよねぇ?ただでさえ毎度家から出るのを嫌がる隊長が、時間なのに一時近く出てこなかったんですよ?ああまたお嬢との別れが嫌で駄々こねてると思えば、今日はお嬢が駄々こねてるなんて。

まさかまさか足を引っ張る様な事をしてるなんて、このユリウス思ってもみませんでした。もうがっかりです」


 ぐ…。


 確かに父様が一度王都に行ってしまうと、二.三日帰れないのは当たり前。長い時は何ヶ月も会えないなんて事もあるから、父様が家から出るのを渋るのも毎度の事だ。その度にユリウスさんを筆頭に迷惑をかけている。

 私も昔瑠璃の時働いていたからよくわかる。時間のルーズな奴が一人いたせいで、全ての段取りが狂い時間通りに終わることのない芸能界なら尚更。

しかも遅れた理由を渋滞に引っかかって…とか言ってた奴のブログで『ラーメンが急に食べたくなって食べてきたなう』とか、書いてあった時なんか、本気で潰そうって思ったよ。


 私が原因で父様が遅刻…むうう、理由はあるけど私も悪いか。



「……ゆりうしゅさん、ごめんなさい」

「悪いと思ってるなら早く隊長を復活させてください」

「あい」

 しょうがない。今日は諦めるか…



「リリ!!」

「リリちゃん!!」

「リリーーーーーーー!!!!(泣)」


 扉を開けたとたん、兄様・母様・父様が抱きつこうと手を伸ばしてきたので、ひらりとユリウスさんの背に隠れる。

 そしてちろりと父様達の顔をみるとぷいっと顔を膨らまして反らせる。

「「「リリ?!」」」


 ちろりと父様達を見ると、先ほどのキライ発言を思い出した為かなんだか涙目だ。

 それを咎めるようにユリウスさんの声が上からふってきた。

「お嬢……」

「あい」

 ごめんなさいつい反射的に態度に出ちゃった。



「父様、兄様お仕事いってくだしゃい」

「リリっ」


 とりあえずそう言うと、がばっと顔を上げ、きらきらと目を輝かせる父様。

 ちょっと父様、ちょっと口きいただけで許すわけじゃないんだからね。


「ゆりうしゅさん達に迷惑かけるの駄目」


 それだけ行ってそっぽ向く私を見て、これ以上は無理だと思ったのか、ユリアスさんは私から離れて父様の背中を押す。


「ほらほら隊長。それからトーマス様も!早く行かないとまぁた嫌味ジジイに文句言われますよ」

「む。そうだな。ではりり行ってくるからな」

「お土産買ってくるからね!!」


 そう言って両手を広げて待つ父様と兄様。

 行ってきますのぎゅーと、お帰りなさいのほっぺチューは毎日の習慣でしたが、甘い!誰がやるか!!




 今は諦めるけど、お城行きの夢を奪ったのは許せるものじゃないんだから!

 しかも外出禁止なんて理不尽な要求にいつまでも黙ってる私じゃないよ!!

 帰ってきたらちゃんと理由を聞かせてもらうんだからね!



 父様達が哀愁漂わせたまま王宮に向ったのは言うまでもない。



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