3 爆発しました。でも予定通りです。
「「だめだ(です)」」
気合は一言で潰えました。
先ほどから何度「行きたい」「駄目だ」を繰り返したことか。
いつもなら涙目で父様を見上げるだけで、デレデレに顔を崩して何でも言うこと聞いてくれるのに、今日ばっかりはいっこうに首を縦に振ってくれません。
なんでよ父様!!母様まで駄目ってなんで??!!
「いっちょに…いき、い…ようっ…」
半泣きで震える私を、あやすように抱きしめながらも母様は何度も言った台詞をもう一度繰り返す。
「絶対にだめよ。何かあったらどうするの?母様とお留守番しましょうね」
いやだー!そんなん理由じゃないじゃないかぁ。私はお城が見たいんだぁー!たったそれだけなのに、なんで駄目なのさっ。
母様にに抱きついたままいやいやと首を振る。浮かび上がる涙を母様にすりつけながら行きたいアピールはやめない。だっていきたいもん。
「でも母様。リリーはこの屋敷からほとんど家を出たことがないんですよ?外に憧れても仕方ないですよ。僕もリリーの年には王都に連れて行ってもらいましたし、帰りに城下でお土産まで買ってまらいましたよ?リリーもそろそろ外出させてあげませんか?」
そうだそうだ!兄様いい事言う!
私ってなんでか今まで外出したことないんだよね。お庭には出してもらえるけど、門から先へは行った事ないの。
お父様の部下達がこの領地を守ってるんだから危ないことはないはずなのに、なんでか外出許可は出ないのよ。
この機会にぜひとも出てみたい!!そしてお城を見るのだ!!兄様頑張れ!!
「王都へは僕も行く事ですし、ずっと一緒にいますから。いいでしょう?父様。ほら見てください父様。リリーの可愛い目も鼻も真っ赤になってます。リリーがここまで我侭言った事ないじゃないですか。なんなら護衛にユリウスさんに頼んでみますから…」
父様と兄様が一斉に私を見る。
わかってるよ兄様!今こそ女優の出番ね!!
「とうしゃまぁ…おにぇがいっ」
とくと見よ!!
徹曰く、「片方の目から涙を零すのがポイントだ。これが出来るようになれば一流だ。」と昔特訓させられた技ですよ。
片目からは涙を流し、もう片方はこぼれないように涙を止めるのだ。
後はそのままじいっと見つめる。相手が目を反らすまでひたすら見つめるだけ。
こんな事もあろうかと、夜密かに寝る前に特訓を重ねたこの技をとくと見るのだ!そして堕ちろ父様!!
「くっ…駄目だ」
がーーーーんまさかの失敗?
父様は私から目を反らし、下を向いて握りこぶしを作って耐えている。まるで断腸の思いで断ってるとでもいうように。
だからそこまで駄目な理由はなんなのよー。せめて理由を教えてよ!!
「お父様が駄目だと言ってるんだから諦めなさいリリアナ。それに王城には決まった人しか入れないの。招待されていないのに行くのは非常識なのよ」
「そ、そうだ。それに外にはまだ早い。悪い奴がいないとも限らないし、万が一リリーに何かあってもいかん」
「…そうか…そうだな。やっぱりリリーにはこの家から出たら危ないな」
ちょっ!にいさままで!!さっきまでは良いって言ったのに!!
やばいやばいやばい。
このままだと兄様まで説得されてしまう!
コッソリと行くのも駄目になってしまう!!
こうなったらミッション三です。
「とうしゃまつおいのに?」
「「「え?」」」
「リリーをまもってくれないの?」
ぷるぷるぷる
小さい体をさらに小さくし、スカートを摘む手を強くします。
「お城を見たいのってそんなにいけないの?」
「リリ」
「リリアナ」
「リリー…」
「おしょと…でるのもめ、なんて…」
もうがまんできません。子供の涙腺は弱いんです。
これが凶と出るか吉と出るか。
全力でお母様の腕から抜け出したらロックオン!
「おとうしゃまもおかあしゃまもにいしゃまも大っっっきらい!!もういっちょう(一生)口きかないーーーーーー!」
「「「えええええええーーーーーーーーーーー!!!」」」
そのまま部屋を飛び出したわたしは、走って自分の部屋に付くとキャリーを追い出し部屋に鍵をかけます。
心配性な父様は私の部屋に鍵を付けたのです。決まった人意外誰も入れない魔術も発動します。
このままだと、家族は入って来られるので、この日の為に考えたアレンジ魔法を作動させます。
これは家族の情報を曲げて伝えるもので、(PCで言ったらウイルスのようなものです)正確な判断をできなくするものです。
これで鍵はなんとかなるから、後は扉を壊しても入れないようにバリケード作りです。
「リリ!!リリーーー!!」
ドンドンと扉を叩く音が聞こえます。おっと、もう立ち直りましたかとうさま。二十分は真っ白になってたみたいだけど。
「リリー!ここを開けて!」
にいさまも焦った様子で必死に声を張り上げる。
「くそっ!なんで開かないんだ!!」
ふふふふ…いつかこんな事もあろうかと、伯父様に無理を言って貸してもらった魔石が役に立ちました。
魔力をまだ上手く操れない私でも出来るよう、魔法を組み替えて(こういう理論的なのは昔から得意なの)あみだしたアレンジ魔法です。
魔動力でもあるこの石を扉の前に置くだけでぴくりとも動かなくなります。あとは誰も入れるなと声をかければ発動開始。伯父様の魔法と私の魔法のダブルがけだ。何人たりともは入れるものか!
外からではどんな干渉も跳ね返すのでこの扉は私にしか開けれません。
溺愛する娘に嫌われるのがなによりも堪える筈だ。
今まで大した我侭を言わずにいたのもこの為だ!
さあ最後のミッションです!
叔父上に頭が上がらない父様が、この家を大事にしていないと知れた時、母様と離縁させるという誓いは生きているはずだ。
壊せるものなら壊してみろ!!
……あれ?この台詞って悪役じゃない?