幕間 【人形の行方】(メイド視点)
本編「探検とご褒美1」と順番が入れ替わりました。
削除をして更新しようと思いましたが、削除はシステム上しない方がいいようなので5分前に編集にて直しました。
ご観覧中の方ご迷惑をおかけしました。
「とうしゃまなんて嫌いだー」
えぐえぐ母親の膝の上で泣くお嬢様は、まだ昨夜の恐怖が忘れられないようです。
そんな愛娘の言葉に今日も旦那様はがっくり肩を落とし、哀愁漂わせて出かけていきました……使い物にならない事は決定です。
やれやれ、とため息をつきながら、その場に残っていたユリウス様がお嬢様に話しかけます。
あれ?ユリウス様はお仕事行かなくてよろしいのでしょうか?
「お嬢」
「うぐ…なん、ですか?ユリウスしゃん…」
「っ!」
涙目のお嬢様がユリウス様を見上げると、流石の彼もうろたえるようです。
わかります!わかりますよ!その気持ち!!いつもより破壊力がすごいですからね!
ユリウス様は、お嬢様の前にしゃがんで目に溜まった涙を手で拭うと優しく問いかけます。
「一体どうしたんです?隊長がお人形渡したのが、そこまで泣いて怒る様な事ですか?」
ああ、旦那様を迎えに来たらお嬢様が泣いてたので、原因を探ろうというわけですね!
ユリウス様もこんなに泣くお嬢様を初めて見たので心配なのもあるのでしょうが…
「うぐ…あにょね、目が覚めたらね、お人形のかおがあったの。そ、それがね月の光に照らされてね、暗い部屋にぼわんと浮かび上がってたの」
お嬢様は思い出したせいか、ぷるぷる震えだします。
「大丈夫ですって。今はここに人形はないし、明るいし俺達もいるでしょう?」
震えるお嬢様を奥様の膝から抱き上げ、ユリウス様がぎゅっと抱きしめました!!
心なしか焦っているようです!私はこんな焦ったユリウス様を見るのは初めてです!!
ユリウス様の言葉にこくりと頷いたリリアナ様は、ユリウス様の胸に顔を埋めたまま話を続けます。
「お人形見たときにね、ちょっと怖かったの。なんかね、生きてるみたいで」
「ああ、そうですね。あそこまで人に近づけた技術はキャサリーンならではですが」
「そ、そのお人形がね、う、うごいてりりに向かってきたの。で、りり怖くて」
「動いた?人形がですか?」
「うごいたもん!リリのお顔にむかって倒れてきたんだから!」
「……」
成程。起きてすぐにちょっと恐怖を抱いていた人形が目の前にあって驚いて、お嬢様が動いた振動でお人形がお嬢様に倒れ掛かったって事ですね。
だけどこれで、お嬢様が人形嫌いにってしまいました。些細な事ですがこればっかりは仕方ありません。
ですが旦那様ちょっと怨みますよ。お嬢様と人形コンボは最高に可愛いのに、出来なくなってしまったなんて。
いや、でも動物ならどうでしょう。パッチワーク風にカラフルにするとか、もこもこにするとか…それならばお嬢様も持ってくれるかも!!
あとで奥様と相談しなくては!!
「とうしゃまなんて嫌いーー!もうしばらく帰って来ないで!!」
「あらあら、リリー。父様も悪気があったわけではないのよ?リリが喜ぶと思ってやった事なのだから、そんな事を言わないで。父様泣いてしまうでしょう?」
「でも…」
八つ当たりだとは判ってるんでしょう。奥様に諭されてお嬢様はしょんぼりと落ち込みます。
「リリーは父様が本当に嫌い?」
「嘘でしゅ…父しゃましゅきだもん」
「じゃあお人形がなければ好きです?」
ユリウス様の言葉にお嬢様はこくりと頷くと、ほつんとつぶやく。
「りりね、お人形の目がね、怖いの。リリの事夢の中まで追ってくるの。だからいや」
「確かにこのガラスの瞳は吸い込まれそうですからね。しかも色が白いから夜中に浮き上がって見えるし、目が覚めた時に目の前にあって怖かったのもわかりますね」
「怖いかぁ。それじゃあ仕方ないわね」
「父様と兄様が選んでくれたお土産だから大事にしたいけど…怖いんだもん」
こうまで人形を拒否しちゃうんだからよっぽど怖かったのですね。
静まった部屋に「じゃあこういうのはどうです?」とユリウス様から声があがりました。
「でしたらお嬢、この人形は隊長の活力財になってもらいましょうか」
「かつりょく??」
「隊長様の声をこの人形に吹き込むのです。隊長がお嬢に会いたくなった時にお嬢の声が聞こえれば、お仕事頑張れると思いませんか?」
「…お人形が…しゃべるの?」
「はい!!」
ユリウス様は満面の笑みを浮かべ、お嬢様の手に何か握らせました。
あ、あれは紫色の魔宝石です!主に記録や伝達に使われるものですね!一体どうするつもりですか??
「ではお嬢。こちらに向かって今の気持ちを言いましょうか」
「…え?」
「今朝の隊長落ち込んでたでしょう?あれでは仕事になりません。ですがお嬢の気持ちもわかります。二、三日隊長には怒ってていいですから、こちらに色々吹き込んでくれませんか?」
「……なに言ったらいいの?」
「そうですねぇー。思った事なんでもいいですが、できれば隊長の好きな所とか、隊長にしてもらって嬉しかった事とかですね」
成程。飴と鞭という訳ですね!ユリウス様の後ろに黒い尻尾が見えます。そして人形から聞こえる声に今後一喜一憂するであろう旦那様が見えます!
新しい事に興味津々のお嬢様は、ほっぺたを赤くして魔宝石を見ています。
それからは和やかにお嬢様が旦那様の事を語りだしました。あ、奥様の横に控えていたガレル様もメモを取ってます。いつの間に!!
「えとね、父様が帰ってきてお膝の上でぎゅうってしてくれるの好き」
「それから?」
「でも力いっぱいぎゅうってされると苦しいから嫌い」
「ぶっ…それで?」
「父様と母様と兄様が揃ってる時が一番好きだから早く帰って来てって思う」
「それを言うと隊長仕事放っぽり出すから消しますねー」
「でもご飯は皆と食べると美味しいから、毎日一緒に食べたいなぁ…」
「そんな事聞けば隊長が勝手に終わらしてかえっちゃうでしょー。誕生日とか記念日だけ言う様にしてください」
「父様はちゃんとお仕事終わらせてくるもん!」
…旦那様はどうやら仕事を放り出している模様です。どうりで最近同じ時間に帰宅していると思いました。
ああ、奥様の方から冷気が漂ってます!ああ!ガレル様!!なんですかその笑みは!!
「父様毎日がんばってるの知ってる、だからリリ我慢する」
「おお!いいですねー!その言葉があるなら消すのをやめて編集しましょう」
ユリウス様ノリノリですね。そしてリリアナ様も楽しくなってきたのかユリウス様の言われた通りに答えていきます。
「そういえば隊長はお嬢の為に、綺麗なブレスレットを注文していましたよ」
「わあい!父様だいしゅきーーー!!」
「もう一声!」
「リリね!青色とか緑色とか好きだからそんなだと嬉しいなぁ」
「早速変更してもらいますね。それから?」
「んー。それから、あ!兄様と稽古してる所が好き!だから父様のお仕事見に行きたい!」
「へ?稽古ですか?そんなもの見てどうするんです?」
「だって兄様があんなに色んなこうげきするのに、まだ一本も取れないし、それにね、お庭で稽古する父様カッコいいの!父様最強ってくらい強いんでしょう?絶対みたい!!」
「……そりゃあ強いですが…」
なにやら複雑そうな顔ですねユリウス様。
奥様とご結婚される前の旦那様の噂は私も聞き及んでおりますが、実際に見たことはないので、私も見てみたいです!ぜひともその願いが叶う際には私も同行させてくださいね!!
それから四半時ほどお嬢様はユリウス様と楽しく談笑されつつ、魔宝石に言葉を吹き込み、マスカレード家を後にされました。
もちろん人形は腕に抱えて。
「じゃあお嬢!この人形は貰っていくなー」
「あい!お仕事頑張ってください」
「まかしとけ!」
お嬢様は人形がいなくなった事でにこにこと笑顔で手を振っています。やはりお嬢様の笑顔は破壊力満点です。
私も思わず赤いものが鼻から出そうです。(気合で出しませんが)
「よかったですね。お嬢様」
「うん!母様の所に戻る?」
「いいえ。奥様はガレルと大事なお話があるみたいですから、お庭の散策でもいたしましょうか?」
「わあい!いいの?」
「はい。以前お嬢様が植えたお花がそろそろ蕾が付きそうですよ」
奥様とガレル様がにこやかに(?)お話されておりましたので、リリアナ様と共にお見送りと称して離れましたが…あのご様子ではしばらく戻らないほうが賢明かと。
旦那様…自業自得とはいえ、今後のご苦労が忍ばれます。
せめてお嬢様と仲直りできるようこっそり応援させていただきますね。
おかしい。どんどんと情けない大人になっていく(こんな筈では…)
レオリアふぁいと…




