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1 最初のミッションは兄様攻略です。

多少手直ししました。読みやすくなってると良いのですが。




「おにいちゃまお願い…」


「うっ…」


「おね、がい…」


 うるうるうる。

 今にもこぼれそうな瞳いっぱいの涙を武器に、ひたむきにターゲットを見つめるのがポイントね。


「うう……っ」


 よしよし、これならいける!もう一発特別サービスだよにーちゃん。


「…め?」

 上目使いから一転、こてんと首をかしげ、ゆっくり心の中で三つ数えるとがっくりと俯く私。ぷるぷる震えるのがポイントです。


「ああーーーー!ごめんリリー泣かないで!!置いて行かないよ絶対連れて行くから!むしろずっと側にいて離れないで!!」


「ほんとう?」


「もちろん!!リリーに嘘なんか吐かないよ!」


 よっしゃー!ミッション成功!!

 ぎゅうぎゅう力いっぱい抱きしめて、これでもかとぐりぐり頬を寄せているイケメンお兄様は見事に私に堕ちました。


「王城にでもどこでも連れて行くからな!」


「ふわーwwおにいちゃまだいすきーーーwww」


 ぐりぐりおにいちゃま…もとい兄に抱きつくと、私は見えないようにニヤリと微笑んだ。




おっと失礼。

 

 はじめまして。私はリリーことリリアナ・マスカレード。御年四歳と三ヵ月になります。

え?四歳らしくないって?

 そりゃそうだ。私はいわゆる転生者なのだから。


 前世の私は地球という惑星の日本という国にいた。本名も芸名も佐伯瑠璃(さえきるり)

 小学生でモデルに、そのまま十六歳で女優に、十八歳で結婚と順風満帆な生活を送ってました。

 相手は柏木徹(かしわぎとおる)という三つ年上の有名な役者で、超イケメンだった。

 だから彼に告白された時はそらもう驚いたし、結婚が決まったら恨まれた恨まれた。

 私は女優になって初めて彼が超有名な役者って知ったくらい世間に疎かったの。

 まあ私も役者になろうと決めたのは半ば成り行きだったし、モデルの仕事とピアノにバレエに水泳にって習い事中心の子供時代だったからTV見る暇なんてなくて、友人も少ない。

 当然知識もないし、当然初共演のインタビューでは名前聞いた事がありますねー的な発言もしました。

 だってしょうがないじゃない。知らなかったんだから。

 彼はそれで私に興味がわいたんだって言ってたわ。今だから言うけど変な人よね?

 その雑誌が出た翌日、俺のこと知らなかったって本当?って聞かれて思わず日本人全員が知ってるなんてどんだけ自信家なの?と言っちゃったわ。

 そりゃそうだ!って大爆笑されたけど。

 それがきっかけで彼と話すようになって、何も知らない私を遊びに連れて行ってくれるようになって、逢えば口説かれるようになって、勿論免疫のない私は翻弄される日々にあえなくギブアップ。

 ええもうあんなに熱烈な口説き文句をどこで仕入れたんだーーーー!という位聞きました///

 ううう…知ってるはずだよね。役者だもん。


 まあそれがファンには気に入られなかったのよ。当然よね。

 なんで彼を良く知りもしないアンタが彼女なのよ!!って。

 私のブログは片っ端から炎上したし、嫌がらせの手紙やメール、脅迫状みたいなのも来たっけ。私もプチ引き篭もりになったよ。

 それを知った徹がTVや雑誌で大爆発。いやー、あの時の彼は怖かった。

 ファンクラブは解散、雑誌やインタビュー写真撮影等、役者の仕事以外全て行わない!って、にっこり笑って宣言したからね。

 ファンと名乗る以上は、ファンクラブは連帯責任。そんなものあるから悪いんだ。

 俺が惚れた人間を傷つけるかもしれない人達に、笑いかけられるか!と。

 元々誰にでもにこにこと愛想がよく、穏やかで知られていて、ファンを大事にしていた彼の言葉に騒ぎ立てる周囲もなんのその。

 それから一年きっかり徹は表に出なかった。

 出なかったと言っても、彼はその隙にコッソリ映画の仕事を入れてたんだけどね。それも素顔を隠した謎のSP役。変装がデフォの役なのでそらもう現場に入るのも変装、共演者にも素性を隠すという徹底ぶりには呆れたわ。


 それでも落ちるかと思った人気は逆に鰻上りで、謝罪文は来るわ来るわ、ファンクラブからは徹底させる規律が出来、私にまで事務所の人達は入れ代わり立ち代り泣きついてきた。

 そして何より驚いたのは、既存の女性ファンより新たな男性ファンをゲットしていた事よね。

 映画の試写会で響いたアニキコールに思わず「男に走らないよね?」と聞いてお仕置きされたのはよい思い出だ…(遠い目)


 まあ、そんなこんなで世間にも認められ、一年後には結婚。

 新婚旅行はドイツに行った。目的はお城だ!


 イタリアにあるサンレオと悩んだけどスケジュール的に無理だったので断念。(某カ○オストロのモデルになったお城です!生で見たかった!!)

だけど、ドイツの某シュタイン城の写真を見た瞬間「ここにする!」と叫びました。

 シュヴァンガウ城とセットで内装までがっつり見れたし大満足でした。


 日本のお城も好きだけど、外国のお城って趣が全然違うのよね。女の子ならお姫様とかプリンセスとか憧れたはずだ!!見たい行きたいと騒ぎまくって徹は苦笑いしたっけ。

 もちろん某ねずみの国も大好きだ!!次はアメリカも連れて行け!と、可愛く?おねだりしましたよ。ふふふふふ。


 そうして日本に帰り、新婚生活にも慣れてきた頃、めずらしく仕事が早く終わった徹に美味しいものでも作ろうと、スーパーで食材を買い込みマンションに帰り着き、エレベーターホールに入ったとたんぐさりと何かが胸に刺さった。

 あ、と思ったとたん暗転。気がついたら赤ん坊でした。


 もちろんびっくりして大泣きして、何日も眠るまで母様の手を煩わせたのは申し訳なかったです。


 でも何日かして落ち着いたら、なんで記憶があるんだとか、ここはどこなんだとか、犯人は誰だよ!私が死んだら徹は何するかわかんないぞ。でも泣いてくれたかなぁとか再婚とかするのかなぁ、やだなぁとか色々考えて、落ち込んで泣いて慰めてもらって今の自分を受け入れたって事かな。

 両親や徹にもう逢えないのは悲しいけど、考えても仕方がないし、私が泣くたびに慌てて飛んできて悲しそうな顔をする両親や兄に申し訳なくて。

 笑え!私は女優だ!!と言い聞かせてきた。

 まあ成功率は五分五分。感情が引きずられるんだよ赤ん坊って!!


「リリー?」

 おっといけない。黙り込んだ私を腕に抱っこして顔を覗き込まれる。

「にいちゃまだいしゅきーww」

 もちろんにっこり笑顔の私。それに答える兄の笑顔はキラキラ輝いております。本当に綺麗な顔してるよ。


 そんな兄ことトーマス・マスカレードは十二歳。この度学院を卒業し、王城に騎士見習いとして仕えている。マスカレード子爵の第一子。

 金色の髪に翡翠の瞳。まだまだベビーフェイスだが将来はさわやか系イケメンだ。学園でも成績も優秀だったし、剣術も父様にしごかれたお陰でそこそこ腕も立つらしい。

 社交界で憧れの的だった父様のミニチュア版だと奥様方に大好評。

 そんな父様は騎士団長を勤めている。え?領地はどうしてるんだって?

 元々父様は王様を守る懐刀の第一騎士だったんだって。

 それが先の戦争で王様の勅命で第一戦闘部隊を任され、元々部下から慕われていたので急な少人数の組織編成もなんのその、見事な統率力でその場を凌ぎ、見事終戦に導いた…らしい。

 元々貴族の母様は父様にずっと憧れてたらしく、戦争に行く時に泣きながら告白したって言ってた。

 そんな父様も社交界で密かに有名だった母様を憎からず思っていた上に、儚げな姿に心打たれ、

 「貴方の元に必ず戻りますって言ってくれたのーww」と、母に耳に蛸が出来るくらい聞かされた(うんざり)

 ……どんだけ娘に惚気る気だと思ったね。だって止まらないんだもん。


 そんなこんなで功績を認められ、子爵の地位を頂き今に至るのだそうな。

 あ、領地の管理は母様がやってるよ。やっぱり父様は騎士団に必要だとごねられ拝まれ泣き落とされほだされ…ちょっとまて、徹と同じ属性か??

 男にモテる男ってどこにでもいるんだなぁ。父様その道に走らないでね(汗)


 そんな両親と兄に、めいっぱい可愛がられて育っている私はけっこう我侭に育ってるはずだ。



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