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埋葬士(インター)の俺だが、ツンのみデレなしの残念美少女に突っかかられたから愛でることにした。  作者: 倉永さな
  *四章 ナユを探すための手がかりを求めて

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03

 ミツルはとりあえず、前にこの町に来て、自警団に連れの荷物とともに没収されたことをセレンに伝え、探させてもらうことにした。

 もう処分されているかもしれないと思いつつ探すと、ナユの荷物とともにあっさりと見つかった。

 

「女物の荷物?」

「そうだが?」


 なにか? と視線を返せば、ベルジィは黙った。


 こうしてナユの持ち物が見つかった。

 ということはやはりナユは存在している。

 どういう理屈か分からないが、ミツルだけナユのことを覚えている。

 ナユにまた一歩、近づいたような気がしてミツルは少しだけホッとした。


「セレン、この荷物は持っていっていいか?」

「ミツルさんの荷物なら、問題ないです」


 という了承も得たので、ミツルはありがたく持ち帰ることにした。


「とりあえず、セレン。インターを判別できる石の回収、頼んだぞ」

「分かりました」


 その石の回収が出来れば、真偽も確認できる。

 ミツルは少しだけ事態が前進したことに安堵した。


「それでは、帰るか」


 ミツルの号令で、ベルジィ、アグリス、アランの三人は立ち上がった。


「俺たちは本部に戻るが、問題ないよな?」

「はい。後ほど、本部にうかがいます」


 そうしてミツルたちは本部へと戻り、事務室に集合していた。全員がそろっているのを確認して、ミツルは口を開いた。


「アラン殿、ありがとうございました」


 帰る途中にベルジィとアグリスからサングイソルバでのことを聞いていたミツルは、開口一番にお礼を口にした。それを聞いて、全員が苦笑していた。


「ミツル、他人行儀過ぎますよ」

「だが」

「まぁ、私の立場が微妙なのは分かるが、ここでは上司と部下。呼び捨てで結構」


 いつの間にそんな関係になった? とミツルが疑問に思っていると、ミチが口を挟んできた。


「親父って呼んでも別にいいのよ?」

「いや……しかし」

「まあ、呼び方はこの際、置いておいて! 確かに、私たちだけでは石の回収はできなかったと思うわ」

「そう……だな」

「インターではない人もここには必要だし、自ら手伝ってくれるって言ってくれるし、それに今回は助かったじゃない? 正式にお願いしてもいいと思うのよ」

「…………アランはそれでいいのか?」


 呼び捨てることに違和感を抱きながら、ミツルはアランに問いかけると、力強く頷きを返された。


「それでは、改めてよろしく頼む」


 こうして、ミツルの父・クロス・アランが新たにインターの本部に加わった。


「それで、その石とやらは実際に見たのか?」

「私は見ました」

「オレらも行こうとしたんだが、止められたから見てない」

「ふむ。それで、どんな物だった?」

「門をくぐったところに左右の壁に赤黒い気持ちの悪い石らしいものが数個、貼り付けられていた」

「それがインターかそうではないか判別できる石、だと?」

「自警団の話ではそうだ」


 赤黒い石、と言われてもまったくなにか分からない。


「やはり、実物を見ないことには……」

「それはセレンにお願いしているからそのうち入手出来るだろう」


 それ以外は特に新しい情報もなく、解散となった。

 解散となったところで、アランが声を掛けてきた。


「ミツル、少し話がある」

「ここだとマズい話か?」

「いや、問題ないが」


 いいのか? という視線を向けてきたので、ミツルは構わないと首を振った。


「私の母、おまえの祖母の話だが」

「ばあさんの?」


 ここでしても問題ないが、どちらかというと私的(プライベート)な問題のような気がして、ミツルはアランを隣室に招いた。

 二人は座ることなく、立ったまま話をしていた。


「それで?」

「あぁ」


 アランはミツルを呼び止めたのはいいのだが、なんと切り出せばよいのか悩んでいた。


「今さらなんだが、おまえは母の最期に立ち会ったと聞いたのだが」

「俺が? ばあさんの?」


 アランに言われて、ミツルの頭は今までにないほどの痛みに襲われた。立ったままのため、フラフラと揺れ、近くにあった机にしがみつく。


「おいっ、ミツルっ?」


 アランの声は隣にも聞こえ、ユアンが飛び込んできた。

 ミツルが床に倒れ、アランが起こそうとしているのが目に入った。


「なにがっ?」

「ミツルに母の話をしたら急に……」

「前にも同じことがありましたよね?」

「そうだが……。もしかして、母の話が頭痛のきっかけに?」


 まさかと思ってアランはそう口にしたのだが、そうとしか思えない。


「アランさん」

「なんだ?」

「ミツルの祖母は私と同じでインターを見分けられたとおっしゃいましたね」

「あぁ」

「そして、そのせいで命を落としたとも」

「そうだ」

「もしかしなくても、()()()()のではありませんか?」


 ミツルはまだひどく頭が痛かったが、意識はあった。

 床に倒れ、アランに支えられるような状態でいたのだが、ユアンのその一言ははっきりと聞こえた。


 ミツルの祖母は()()()()


 その一言でさらに頭が痛くて割れそうになったが、嵐のような痛みが去った後──。


「……思い出した」


 まだズキンと痛むが、先ほどの痛みに比べればまだマシだったため、ミツルはゆっくりと身体を起こし、アランとユアンを見た。そして、おもむろに口を開いた。


「ばあさんは……あの鈍色の男に()()()()


 まさかここで鈍色の男に繋がるとは思わず、ミツルは唖然としていた。


「っ! 鈍色の男にっ?」

「鈍色の男とは、だれだ?」

「今、俺たちが探している男だよ」


 どうあってもミツルは鈍色の男を捜し出さなければならないようだ。


「そういえば……」


 ミツルは鈍色の男に言われた言葉を思い出した。


「浮島に来い、と」

「浮島?」

「浮島とは?」


 浮島とは聞き覚えのない単語に、思わず首を捻ったのだが。


「浮島……ですか。どこかで聞いたことがあるんですよね」


 ユアンはしばらく悩んでいたが、なにかを思い出したようだ。

 それを見て、ミツルは適当なことを口にした。


「浮島とはなんだ? 島が浮いてるのか?」

「ミツルなのに意外に鋭いですね」

「をいっ、失礼だな! って、本当に島が浮いているのか?」

「あまり知られていないのですが、雲の吹き溜まりと言われている場所があるのを知ってますか?」

「あー、それなら聞いたことがある。空には風が吹いても雲がなくならない場所があるって」

「そこには島があり、女神の一族が住んでいると──まぁ、お伽話なんですけどね」


 女神の一族、という単語にミツルはピクリと反応した。

 昔、そういえばシエルに聞いたことがあったと思い出したのだ。


「おいっ! それは本当なのかっ?」

「なんですか、突然。妙に食いつきがいいですね」

「昔、聞いたことがあるんだ。この世界のどこかに女神の一族が住んでいるって」

「それがその、話題の浮島としたら、まぁ、ロマンチックですけど」

「……それで、そこにはどうやって行けばいいんだ?」

「え? 本気で言ってますか?」

「あぁ。本気だ。あの鈍色の男はそこで待っていると言ったんだ」

「……なるほど」


 ユアンはしばらく考えて、それからミツルを見た。


「もう頭痛は平気ですか?」

「あ? あぁ。……なんだ、急に気持ち悪いな」

「いえ、今、あなたに死なれたら私たちは生きたまま冥府送りにされますからね。殺しても死なないと思っていたあなたが頭痛で倒れるとか、ちょっと不安になっただけです」

「失礼にもほどがあるな」


 それで、とユアンはミツルを見た。


「浮島に行くには、その問題の()()()()()()行くと言われています」

「……はっ? この国の空に浮かんでるんだよな、浮島って?」

「そうですよ」

「それなのに冥府を通って行く? おかしくないか?」

「そもそも、浮島自体が本当にあるのか分からないのですよ。空に雲の吹き溜まりがあって、そこに隠されていると言われているだけですし、だれもその姿を見ていないのですよ」

「だが、鈍色の男は浮島に来いと……」

「それ、遠回しに『死ね』と言われたんじゃないですか?」

「あー……、なるほど。……って! 納得できるか!」


 まさかあの鈍色の男は本当にミツルに死ねと言ったのだろうか。

 ……どうもそんな気がしないのだ。


「とにかく、俺はどうにかしてその浮島に行きたい」

「分かりました。少し調べましょう」

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