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埋葬士(インター)の俺だが、ツンのみデレなしの残念美少女に突っかかられたから愛でることにした。  作者: 倉永さな
  *四章 ナユを探すための手がかりを求めて

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02

 サングイソルバに着いたミツルとセレンだったが、町の入口が妙に混んでいるのが気になった。

 町に入るには他にも入口があるが、ミツルとしてはここ以外の場所は避けたかった。北門と南門にはインターを判別する石が取り付けられているらしい。今、ミツルとセレンは東門にいた。西門に行くには真反対だ、時間を考えたらここで待っていた方がいいだろう。


「なにがあったのですか?」


 セレンが近くにいる人に声を掛けて訊ねてくれた。


「いやー、なんだか入るのに金を払えだとか払わないだとかって」

「町に入るのに金を払わないといけない?」


 数日前に来た時はそんなことがなかったので、ミツルはセレンに首を振った。


「いつからですか?」

「今日になってからだよ」


 どうして今日から町に入るのに金が必要になったのか。いや、それよりも町に入るのに金をとっていいものなのか。

 訳がわからないでいると、ザッと集まっていた人たちが道を開けているのが見えた。

 訝しく思っていると、あの特徴のある声が聞こえてきた。


「ラベリア、いたぞ」

「私のことはセレンでいいですよ、ミツルさん」

「分かった」


 うなずきを返して、町の入口を見る。

 そこにはやはりあの憎たらしい団長── コルチカム・ガウラ──がいた。その後ろにはガウラに従うように顔色の悪い人たちがズラリと並んでいた。


「ところでセレン」

「はい」

「あいつを拘束したらどうやって連れて帰るんだ?」

「そこはご心配なく。後から警ら隊は追尾してきてますから」


 そこは心配要らないと言われたが、二人であの人数を相手にするのは大変なのではないか。

 そう思いながらミツルはセレンとともに列に近づき──そしてミツルは異変を感じた。


「っ?」


 ここには()()()いないはずなのに、身体の奥底からインターの力が溢れてきているようなのだ。ミツルは必死になってその力を押さえ込もうとしたのだが、なにかがおかしい。


「ミツルさん?」


 隣にいたセレンもミツルの異変に気がついたようだ。ミツルは金色の光に包まれていた。


「あっ! そこにいるのは土を食って生きてるインターだ!」


 いつもなら町に入るときはフードを被っているのだが、今日はセレンと一緒だったこともあり被っていなかったのも災いした。

 ガウラはミツルの面相を知っている。そして目ざとく見つけ、そう指摘した。


「ほら、疫病神が来たぞ! 石を投げろ!」


 とは言うが、さすがに町の入口だけあり、綺麗に掃き清められているため、石は落ちていない。そのことに気がつかないガウラは、だれも石を投げないことに不満に思ったようだ。


「あいつに石を投げたら、町への入町料はタダにするぞ!」


 その一言に周りはざわめきはじめたが、ミツルはそれどころではない。


「ミツルさん、大丈夫……」

「俺に触るなっ!」


 セレンに一喝して、ミツルはガウラをにらみつけた。

 そして金色の光がガウラの後ろにいる顔色の悪い人たちに向かっているのを見て、目を見開いた。


「動く死体……っ!」

「えっ?」

「おまえら、逃げろっ! そいつは死人遣いだ!」


 その一言で周りはパニックになった。

 ガウラの周りから人は離れ、悲鳴を上げて逃げていく人もいた。


「ミツルさん、どうすればっ!」

「セレン、おまえも下がっておけ」


 ミツルの言葉にセレンは周りの人たちを誘導しながら町の入口から遠ざかった。

 あれほどいた人たちはすべていなくなり、ミツルの目の前にはガウラと動く死体たちのみ。数えてみると十体近くいるようだ。


 嫌な臭いがしたという証言を聞いていて、もしかしてという疑惑はあったが、まさか本当に連れているとは思わなかった。


「前もベルジィたちの仲間を()()()動く死体にしていたな」

「インターは人じゃないだろう? 問題ない」


 そしてキシシと嫌な笑い声を上げた。

 その一言にミツルはガウラの後ろにいる人たちがかつてはインターだったことを知った。


「おまえ……っ!」


 それでなくともインターは貴重なのに、ガウラはインターたちを殺して、動く死体にした。


「……待て?」


 ミツルは前にユアンから聞いた話を思い出していた。


 インターが死んだら、生きた人たちも冥府に送るようになるため、その現象をダウディと呼ぶという。そして、動く死体になればダウディ化にはならないという。


「本当にインターは生きてても死んでても役に立たないなっ!」


 そうしてガウラは動く死体に命令をした。


「あの土食いインターを殺せっ!」

「っ! セレン、今の言葉、しっかり聞いたな?」

「はいっ!」


 後ろに下がっていたセレンはミツルの言葉に強くうなずき、腰に佩いていた剣の柄に手をかけた。


「俺は動く死体を地の女神の元へ送る。セレンはガウラを頼む」

「分かりました」


 ミツルは背負っていた円匙(スコップ)を手に持つと、木の板を蹴り、動く死体へと斬り込んだ。

 動く死体は緩慢な動きでミツルを捕まえようと動き始めたが、ここ最近に遭遇した動く死体を思えば、楽勝だった。

 円匙の先で動く死体の胴を突き、木の板に倒れさせた後、内から溢れでるインターの力を目いっぱい叩きつける。すると金色の光をまとって動く死体は消えていった。

 遠巻きに行方を見守っている人たちは固唾を飲んでミツルを見つめていた。


 ミツルは息つく間もなく次の動く死体に円匙の先を向け、胴をなぎ払った。倒れた動く死体は周りの動く死体を巻き込んでくれれば良かったのだが、残念なことにその一体のみ。

 ミツルは内心で舌打ちをしながら倒れた動く死体にインターの力を叩きつけた。


「次っ!」


 ミツルは円匙で突き、次々に動く死体を倒すとインターの力を叩きつけていく。

 そうするとあっという間に動く死体は消えていなくなった。


 そうなるとガウラを守る者はだれもおらず、セレンはあっさりとガウラの身柄を拘束した。


 後追いで来ていた警ら隊にガウラの身柄を引き渡し、ミツルとセレンは町へと入った。

 入町料を取るというのはセレンが警ら隊の権限で取り下げたため、溜まっていた人たちは雪崩れるようにして町へと入っていった。

 セレンは数人の警ら隊とともに自警団の詰め所に行って証拠書類などを押収するという。

 とそこで、ミツルはあの詰め所にナユの荷物ともども没収されたことを思い出した。残っているかどうかは分からないが、行って確かめてみることにした。もしも残っていれば、ナユが存在している証拠になる。

 ミツルも同行して詰め所に入ると、なぜかそこには、ベルジィとアグリス、そしてミツルの父のアランがいた。


「あれ、アニキ?」

「なんでここにいる?」

「アランさんがインターを判別する石の管理は自警団がしているという情報を入手してくれまして、それで来ているのです」

「インターを判別する石?」


 セレンは不思議そうに首を傾げ、ミツルを見た。


「この町の北門と南門にインターを判別する石が設置してあるらしい」

「オレたちはその真偽を確かめにここに来たんだ」

「なるほど……。そんな話、初めて聞きました」

「で?」


 ベルジィはミツルとセレンが一緒にいるのを見て、セレンもインターかと言外に問いかけてきた。


「彼はアベリア・セレン。警ら隊の……」

「第三部隊の隊長をしています」


 どうしてそんな人物とここにいるのか分からないベルジィだったが、なにか理由があるのだろうとそれ以上は聞かなかった。


「それで、その石は?」

「残念なことにまだ入手出来ていません」

「分かった。北門と南門に行ってその石も押収だな」


 思っていた以上に大事になってきた、とセレンは思っていた。



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