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埋葬士(インター)の俺だが、ツンのみデレなしの残念美少女に突っかかられたから愛でることにした。  作者: 倉永さな
  *三章 新たな仲間

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01

 町から離れた森の中、鬱蒼とした木々に隠れるように小屋がひとつあった。

 木で出来た小屋には微妙な隙間があり、そこから明かりが洩れていた。耳を澄ますと、陽が落ちてから森に近づいてくる物好きはあまりいないが、それでも周りに遠慮がちの声。

 中には、ミツルとあのならず者たちがいた。


 ──ミツルがならず者十人をこてんぱんにやっつけた後、カシラは土下座してきた。しかも。


「アニキ、オレたちを弟子にしてくださいっ!」


 とまで言ってくる始末。

 ミツルは間に合っているだとか要らないと断り、ならず者から情報を引き出すことは諦め、他の手がかりを探ろうと歩き出したのだが、カシラはミツルの足にすがりついた。

 ナユにされるのならいざ知らず、筋骨隆々としたむさい男にすがられたってうれしくない。

 片足をどうにか引き抜いて足蹴にしたのだが、そんなものでは効かなかった。だから本気で蹴ったのだが、それでも離れない。

 これだけは使いたくないんだよな……と思いつつ、ミツルは最後の切り札を使うことにした。

 できるだけ凶悪そうな表情を浮かべ、口を開いた。


「俺、インターなんだけど。おまえらまとめて冥府送りにしてやろうか」


 普段ならば腕がゆるむのだが、カシラの力は緩むどころか、ますます強くなった。

 そんなに冥府に送られたいのか? 生きた人間は送ったことないんだけどなあと思いながら力を溜めようとしたところ、カシラは衝撃的なことを告白した。


「アニキぃぃぃ! オレらもインターなんですぅぅぅ」


 その瞬間、こんなのと一緒にされたくないと腕をふりほどいて全速力で逃げたくなった。


「ここにいる全員、インターなんです!」


 ミツルはまさかと思って周りに転がっている男どもを見たが、全員が大きくうなずきを返してきた。


「嘘ではないだろうな」


 インターがインターだと分からないようにすることはあっても、インターでない者がインターだと嘘をつく利益メリットはまったくない。

 それでもミツルは、思わず確認をした。

 疑いの視線を向けられたならず者たちは、ミツルの顔をじっと見つめてきた。

 見た目だけではインターだとは分からない。

 インターだと分かるのは、そばに死体があるときだけだ。


「本当におまえたちがインターかどうか調べるから、おまえたちのだれか、死んでもらおうか」


 そう言ったミツルの表情はものすごく凶悪だった。


「え、やぁ、う、嘘なんてついてないって! アニキもインターならば、こんな嘘をついたってなにひとついいことないって知ってるだろう? なあ?」


 カシラの言葉に、ならず者たちは頭がもげんばかりの勢いでうなずいた。

 嘘だと判明すれば、また叩きのめすまでとミツルは決めた。


「それで?」

「……それでとは?」

「おまえたちのことは弟子にはしないが、迷惑料を払ってもらおうか」


 やはり凶悪な笑みを浮かべたミツルにカシラはひぃっと情けない声を上げ、がくぶると震えながら森の中の小屋へと案内して──今に至る。


 この小屋にならず者全員は入れなかったので、カシラと補佐、ミツルの三人が中に入った。中は狭かったが、寝る場所があり、しかもだれかがミツルのためにご飯を調達してきてくれた。

 ミツルはとにかく喉がひどく乾いていたし、腹も減りすぎて目眩がするほどだったので無言で平らげた。


「……足りねぇ」


 ミツルの呟きに二人は震え上がったが、予備の食料を渡すとミツルは黙って食べたのでほっとした。

 ようやく腹が満たされたミツルはびくびくとしている二人に視線を向けた。


「今更聞くのもおかしいが、俺をここに足止めして、他のヤツラが自警団を呼びに行った……なんてことは」

「やるわけないだろう! あいつらはオレらの敵だ!」


 ミツルは疑いの目を向けたが、カシラはぶんぶんと頭を横に振って否定した。


「まあ、呼びに行っても別にいいぜ。返り討ちにしてやるから」

「いやいやいやいや、絶対に呼ばないぜ! ここがバレると困るんだ」

「……へえ?」


 もしかして、この近くにナユがいるのかもと思ったが、それも大切だが、先に確認しなくてはならないことがあった。


「おまえたちはインターだと言うが、どうしてならず者なんてやってるんだ」


 ミツルの質問に、カシラはどんよりと暗い表情をして、肩を落とした。


「オレの名前はベルジィ、こいつはアグリス。オレはここからもっと北にある小さい村に生まれ、十五の年に流行病があって、家族が亡くなって初めてインターだって分かって……」


 カシラことベルジィはそう言うと俯いた。


「流行病はおまえのせいだとでも言われたか」

「……あぁ」

「それで村から叩き出された、と。動く死体がうじゃうじゃいそうだな」

「まさしくその通りだった。病に弱っている者から動く死体に殺され、でも、病は治って……」

「治ったというのはおかしいが、まあ、不思議な状況だな」


 ベルジィはそれでも、病で亡くなった人を地の女神の元へと送ろうとしたのだが、動く死体と元気な村人に阻まれたという。


「病が治ったからいいって……」

「意味がわかんねーな、それ」


 ベルジィは悲しそうに眉尻を下げた。

 筋骨隆々とした男がそんな表情をしても、かわいくともなんとも思わない。


「で、今はどうなっている?」

「噂によると、死の村になっていると。動く死体は変わらずにいるとか」

「悲惨だな」


 それより、とミツルは気がついた。


「おまえ、いくつだ?」

「十八だが?」


 ベルジィの年齢を聞き、ミツルは思わず吹き出していた。

 見た目が老けているので、もっと上かと思っていたのだ。


「年下か……」


 それからミツルはベルジィの横にいるアグリスに視線を向けた。


「おれは二十一だ。ベルジィと似たり寄ったりだ」


 二人は違う村ではあったが同じように叩き出された。


「あの三年前の病か。あれでインターだと分かって、村や町からはじき出された者がたくさんいる」

「そうだろうな。オレたちはみんなそうで、いつの間にか集まり、生きていくためにインターだと隠してなんでもやった」


 流れに流れ、そしてこの町に今は落ち着いているという。


「ただ、あの町は異常なんだ」

「インターに頼らない町らしいな」

「あぁ。それだけではなく、インターだと判明した者は捕らえられ、その後の行方が分からない」


 自警団の牢屋で受けたことを思い出すと、インターの末路が想像できて腹が立ってきた。


「俺も殺されかけた」

「アニキがっ?」


 そのアニキというのは止めて欲しかったが、もっとひどい呼び名をつけられそうだったから甘受することにした。


「だが、おかしいんだ。インターだと名乗ってない、近くに死体もなかった。なのにインターだとバレた」


 ベルジィとアグリスは顔を見合わせ、それからミツルを見た。


「あの町には仕掛けがされていて、インターが近くを通ると赤く光る石が埋め込まれているんだ」

「石……」


 この町は何度も通っているけれど、まったく気がつかなかった。


「北の門と南の門にだけ仕掛けられているから、西と東の門からならば大丈夫だ」


 そう言われ、ミツルは自分が通った門を思い出す。


「……城下町からだから、東門を通ってきたはずなんだが。そこ以外には?」

「自警団が持ち運び用の判定石を持っているとは聞いた」


 なるほど、それでミツルがインターだと分かったのだろうと納得はしたのだが。


「……インターと判定する石があるなんて初めて聞いたんだが、それは本当に正しく判定されるのか?」


 ミツルの質問に、ベルジィは力なく首を振った。







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