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埋葬士(インター)の俺だが、ツンのみデレなしの残念美少女に突っかかられたから愛でることにした。  作者: 倉永さな
  *三章 エピローグ

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02





※かなり内容が胸くそです。







 一通り、説明を終えたところで、ユアンから報告があると言われて、ミツルは首を傾げた。


「すっかり忘れていると思いますが、サングイソルバの件です」

「…………? あぁ、思い出した!」


 やはり、と言いながらユアンは棚からゴソゴソと箱を取り出した。


「コレ、なんですが」

「中になにが入ってるんだ? なんか側に死体があるかのようにゾワゾワするんだが」

「開けてないのに分かりますか?」

「いや、昨日から実はずっと気になっていたんだが、見える範囲に死体はないし、疲れてるだけかと思っていたんだが」


 ナユとシエルはまったく分からないらしく、こちらもミツルとは別の意味で首を傾げていた。


「さっくりネタばらしをしますが、この中には、インターを判別するという石が入ってるんですよ」

「えっ、そんなもの、あるのっ?」

「開けて見せますけど……ここはインターだらけなので本来の色は分からないと思いますが」


 といって、ユアンは蓋を開けた。

 中には赤く光る拳大の石が一つ。


「赤く光ってる?」

「インターが側にいると、このように赤く光るのです。本来の見た目は赤黒いのだとか。それを確認しようにも私もインターなので無理なんですけどね」


 なんなら二人、この箱を持って外に出て確認してみますか? とユアンが聞いてきたが、ナユとシエルは同時に首を振った。


「なっ、なーんかとっても嫌な予感がするのですが」

「なんかとっても禍々しいんだけど」


 二人の言葉に、ユアンはにこやかな笑みを浮かべた。


「お二人とも、察しがいいですね」

「えっ?」

「ミツル、この石の原料、なんだと思いますか?」

「原料? 石、じゃないのか?」

「こんなものがその辺にゴロゴロ転がっていたら私たちは困るじゃないですか」

「いや……。そもそも石自体、滅多にお目に掛からないよな?」

「まぁ、そうなんですけど」


 地面は木の板が覆っているため、ミツルが言うように石は滅多に転がっていない。しかも石には土が着いている可能性が高いため、発見され次第、除去される。それに、石が砕ければ土になる。


「これ、どう見てもただの石、に見えますよね」

「あんまり石を見たことがないから断言は出来ないが、……いや、だからか? 石にしか見えない」


 とそこへ、ミチが一枚の書類をミツルに渡した。


「『サングイソルバの門に取り付けられていたインターを判別するという石についての報告書』? 報告者はラベリア・セレン」

「その人はだれ?」

「第三警ら隊の隊長と言っていたな」

「えっ? ってことは国も絡んでるの?」

「あぁ、ナユは経緯を知らないんだよな」


 ミツルはナユが誘拐されていた間の出来事をざっくり説明した。


「そんなことがあったんだ」


 ミツルは報告書に目を通すことにした。

 サングイソルバの北門と南門に着けられていた石を回収した経緯に始まり、インターに協力を得て本当に判別できるのかどうか調査したこと。

 それからこの石の入手経路。

 そう、そこが肝心なのだ。

 そして、そこに書かれていた内容にミツルは思わず報告書を投げていた。


「ど、どうしたのミツル?」

「……読めば分かるが、読むのはオススメしない」


 ナユは首を傾げて報告書を拾い、シエルと一緒に目を通した。

 そして石の入手経路のところで固まった。


「え、え? なっ、なにこれっ?」

「ユアン、どうなんだ?」

「どうやら、真実のようです」

「マジかよ!」


 ミツルは呻き、それから頭を抱えた。

 正直、ソルのとき以上の衝撃だ。

 いや、これを思えば、ソルはやったことは大罪だが、まだかわいいものだったのかもしれないと思えるから、不思議だ。


「インターの石の入手経路。それは……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ひぃぃぃ」

「そのためだけに罪のないインターではない人を殺したり、死体を盗んでいたようです」


 ユアンに口頭で説明されても、理解不能だ。というか、考えることを拒絶させる。


「この石を考案・作成・管理していたのはサングイソルバの自警団の団長であるコルチカム・ガウラ。どういう経緯で人間の心臓を乾燥させたものがインターを判別すると分かったのか、まではまだ分かっていません」

「……あいつ、人間じゃないな」


 インターが憎い、という気持ちを持っている人が多いのはミツルたちインターは痛いほど知っている。

 だからといって、人を殺してまで──しかも複数の──そんなものを手に入れようと思って実行するなんて、同じ人間とは思えない。


「事情聴取が終わり次第、コルチカム・ガウラは速やかに極刑に処されることが決まっています」

「まぁ、当然なんだが。──今までの極刑が極刑になるのかが疑問だな」

「しかもこの石でインターだと判別された者は残らず捕らえて殺しているようですね」

「聞けば聞くほど酷いな」


 インターという仕組みを作ったソルの功罪ではあるが、それ以上に胸くそ悪い。


「……そういえば」

「はい」

「インターではない人間の心臓、なんだよな」

「そうみたいですね」

「インターの心臓では判別できないってことか?」

「なかなかいいところに気がつきましたね」


 そう言っていい笑みを浮かべるユアンに、気がつかなければよかったと思ったが、もう遅い。


「コルチカム・ガウラ曰く、インターの心臓は乾燥させてもインターを判別できない、と。しかも早く取り出さないとなにかに引きずられて死にかけた、とも」

「……そのまま冥府送りになってればいいものの」

「まったくです。だから、殺して動く死体にするしか使い道がない、と」

「どこまでも勝手だな!」

「あと、これはこれで驚きなのですが」

「まだあるのか」


 ミツルはゲンナリしながらユアンを促した。


「心臓を抜いた死体に土を付けても動く死体にならなかった、とか」

「っ!」

「ここで、二つの仮説が成り立ちます」

「一つは分かるんだが」

「では、どうぞ」

「インターが死体を判別しているのは止まった心臓である」

「たぶん、そうだと思います。まぁ、心臓を抜かれた死体が側にあったことがないので真実かどうか分かりませんが」

「確かめたくないな」

「それは同意します」

「それと、もう一つは?」

「たぶん、分かっていると思いますが、動く死体になる条件は死体に止まった心臓があることである、と」

「……あぁ、なるほど。だからインターでも動く死体になる、と」

「はい」


 ソルはそこまで考えていたのか? はたまたこれは偶然だったのか?

 分からないけれど、どうにも後味が悪すぎる。


「もう二、三発、殴るか蹴るかしておけばよかったな」

「蹴ったのですか?」

「……動く死体に襲われていたから、仕方なく助けるために蹴った」

「それは……まぁ、その動く死体のために仕方がなかったことかと」

「だよなぁ。でも、あの時、殺されていればよかったのに、とも思っている」


 結局、コルチカム・ガウラのせいで死んだ人間は何人なのか。

 こちらは全数把握は無理だろう。

 とはいえ、心臓を抜かれた死体はどこかに隠されているだろうから、それが見つかれば罪状を積むことができるだろう。


「あと……サングイソルバの領主はコルチカム・ガウラの父親が務めていたのですが、この件によって、解任されています」

「そりゃそうだよな」

「後任は後日、国が任命して配備されるとのことです」


 とにかく、この胸くその事件も一段落したらしい。


「……というかだ。これが一番、たちが悪いな」

「同じ人間なのに、どうしてこうも残酷なことができるのか」



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