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13、バディナージュ

 あなたはだあれ、と、少女は言った。

 青年は、僕もそれが知りたいんだ、と答えた。

 だからその本を僕にくれ。早くしないと「彼女」がやってきて、あんたを殺すかもしれないんだ。

 すると少女はけたけた笑って、こう言った。


『わたしはあなたそのものよ』


 青年も笑った。


「それなら話が早い。きみは誰だ?」


 少女の手から本が落ちる。青年は素早くそれを拾おうとして、その手を誰かが遮ったのに気がついた。

 薄い銀色の鱗に覆われた、誰かの手。

 顔を上げると、少女が青年の手を抑えていた。少女の手には鱗が生えていてみずかきがあって、その眼は何も見ていなくて、青年はあっと声を上げて後ずさる。

 落ちていた本のページが、風もないのにぱらぱらとめくれる。

 そこには、こんなことが書いてあった。


 古田一十は、イギンである。


 青年はそれを見た。確かにその眼で見た。


「ああ、よかった、やっとわかった」


 呟いていた。

 すると背後から、知らない誰かの声がした。

 ──あな口惜しや、未だ、その時ではないというのに。これでは呪詛が壊れてしまう。

 口惜しや、口惜しや……。


(了)

*あとがきマズルカ


ここまで眼を通してくださった方へ、ありがとうございます。

と、いうわけで、とくにご声援いただいてませんがファンタジー刑事シリーズはこれでひとまず終了です。あっでも気が向いたら外伝とか書きたいなとか思ってますが。


井島くんと七枝さんというなんか唐突な組み合わせ、そして井島くんはひと晩で気が変わるややこしい男になっておりますが、ほんとは二課にいたころからいいカップルだったんだぜ……っていう話をどこかに挟むつもりで容量が足らなかったとかそういうあれでした。

30代の恋愛(超不器用仕様)とかどう考えてもこんな若輩恋愛ニートが書いていい代物じゃないのはわかってます。ただツンデレ女王様かわいいって言いたかっただけです。男前な乙女が好きなんだ……。


ちなみに:パルティータっていうのは古典組曲のこと。もちろんサブタイトルのラインナップではありえませんが(笑)音楽用語で揃えたと見せかけて一部全く関係ないものも混ざっているのが私の適当さ加減です。

プレリュード:前奏曲

オーヴァーチュア:序曲

カプリチオ:狂想曲

インテルメッツォ:間奏曲

パヴァーヌ:行列舞踏(の一種)題は「亡き王女の~」のパロディ

スケルツォ:諧謔曲

ノクターン:夜想曲

ワルツ:円舞曲

革命のエチュード:ショパンいいよね!

ピアノソナタ第二番:葬送行進曲つき、ということで

ラプソディ・イン・ブルー:※ただしブルー≠青

セレナーデ:小夜曲、恋人を讃える内容が多いそうな。

コーデイト・ソネット:終結部の14行詩(印刷したときに14行になるように調整してあったけどネット上で再現は無理だった)

バディナージュ:バディヌリーとも、〆の余興、アンコール


おそまつさまでした。では次回は土の溟海でお会いしましょう!

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