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0、消失のプレリュード

*この作品はフィクションです。実在する個人団体地域その他とは一切関係ありません。

*全編付け焼刃の警察知識でお送りしています。

*シリーズと銘打っていますが、それぞれ独立した作品です。そのため設定は統一されておらず、前作と異なる設定や表現があります。

「さて、舞台装置は揃ったようだ」


挿絵(By みてみん)


 ─*─*─*─*─*─


『消失のプレリュード』


 水の冷たさに、幸和子はどきりとした。

 きりきりと細い糸で皮膚を締め上げるような刺激。そしてそこにあるはずのものがない。

 思わず手を動かしそうになるが、背を包む温もりが彼女をどうにか押し留めてくれた。幸和子を背後から守るように抱き締めている、夫の存在が。

 大丈夫? 尋ねる声。

 大丈夫。 それは返答というよりも、自分に言い聞かせるための言葉だった。

 じっと水面を見つめていると、波紋はようやく静かになった。いつもより随分時間がかかった。それでも水底へと伸ばしている幸和子の手が、彼女の「鏡」に触れることはなかった。

 触ることができない。そもそも見えない。

 それが意味することはただひとつ。

 幸和子は決心して手を引いた。指先は体温を取り戻そうとして真っ赤だが、もうそこに感覚は残っていない。ほんの少し痛みがあるかなきか、その程度。

 どうしたの、と、心配そうな夫の声がする。


「明彦さん……私、やられてしまったみたい」


 幸和子は答えた。自分でも不思議だったが、さほど動揺してはいなかった。

 ただ、ほんとうに痛むのは、指より心のほうかもしれない。


 鏡を、盗られた。



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