有利不利を描く
前回はメインの視点となっている人物よりも相手の方が強い場合の描写を説明しました。
置いていかれている感を出せ、というやつですね。
引き続き相手の方が強いパターンを書きます(おい)。
前回は相手のほうが完全に上、でしたが、今回は状況的に不利なので、こちらは相手の動きに十分に対処できているパターンです。
実力が拮抗していても、全部同じ技を持っているとかそういうわけではないはずです。癖や得意なもの、間合いをキャラが持っているはずです。それを考えて描写していきましょう。
一例を出しときます。
――
「お前刀を持っているな」
「は?」
橋を渡ろうとしたカサネに、中央を陣取っていた大男が声をかけてきた。
「武具を狩ること99人。お前で100人目だ」
ため息を吐く。面倒なやつに絡まれた。
「この剣は人に振るうものではない。やるつもりもない」
「お前の事情など知らん」
背中の薙刀を取り出すと、大男は構えだした。
「重要なのは100人目ということだ!」
大男の体が一回り大きくなったように錯覚する。間合いを詰められたのだ。空気を裂きながら、薙刀がカサネを襲う。カサネは身を屈めるとそれを避けた。
「ぬぅん!」
払われた薙刀は流れるように突きへとその姿を変える。左足を後ろにさげながら半身になる。
思ったよりも突きは鋭く、カサネの頬を掠めた。
「まだまだ!」
息もつかせず、怒涛の連撃がカサネを串刺しにせんと迫る。カサネは大男の目を見た。
狙いは、足、腹、顔だな。
大男の視線から攻撃の先を予測し、動いた。
左足を上げ、一撃目を避ける。次なる攻撃は刀を持ち上げ、鍔で受ける。最後は首を傾けて凌いだ。
どれもこれも狙いが正確だった。ブレがなく、ゆえに予想に反することはなかった。
「ほう、これでも生きているか」
大男は満足げに薙刀を下げると、地面に突き立てる。ドン、と重みのある音が響いた。
「小僧、刀を抜け。そのくらいは許してやろう」
「小僧じゃない」
鞘を外さず、刀を抜く。正直、あのまま攻められていては躱すしかできなかった。抜き身ではないとはいえ、武器を構えられるのなら好都合だ。
鞘と柄を握り、刀を短く持つ。
「ふざけているのか」
「刀を抜くときは決まっている。殺すと決めた相手だけだ」
「後悔するぞ!」
再び大男が迫る。薙刀を上にかざし、こちらに叩きつけてきた。刃を当てなくとも、柄は立派な鈍器となる。当たればカサネの体は砕けるだろう。
真面目に受けるつもりはない。右前方へカサネは駆けた。攻撃をかいくぐり、大男を肉薄する。
が。
「捕らえた!」
大男の左手が、カサネの頭を掴んできた。
「しまっ」
大男は軽々とカサネを持ち上げると、はるか上空へ投げた。カサネの体が宙を舞う。
そこへ薙刀が飛んできた。
「ぐっ」
カサネはどうにか身を捻る勢いで刀を振るうと、薙刀の刃を鞘で止めた。
――刃先が、カサネの鼻先できらめく。
突きの衝撃でカサネは後方へ飛ばされ、川に落ちた。
――
という感じです。
描写に関してですが、敵の攻撃に対してカサネは終始冷静に物事に対処しているということが特徴になります。薙刀を意識しながら、相手の目線で動きを予測し、対処する。ただ、薙刀の動きばかり目立っていたのと、カサネ自身は刀の間合いで戦わなかければならないので近づく必要があるわけです。
それで近づいたら不意に掴まれるという展開としています。
戦闘の決着ですが、橋の上なので投げられ、突きでトドメを刺されそうになったところを防ぎ、その衝撃で川へと落ちると。
相手はパワータイプ、カサネはスピードタイプとして書いています。なので攻めているのは相手、躱すのはカサネとしています。簡単にスピードだけで攻めに転じれないよう、薙刀という間合いが広い武器をもたせることで手強さを演出できるのでそうしています。カサネは人相手には刀を抜かない、薙刀より刀のほうが間合いが狭いので不利になっています。
主人公のピンチを演出するためとなっていますが、逆に主人公より強い相手に勝つという展開を考えるときはこういう有利不利を考えましょう。強さを変えずに納得のある勝利を描けるはずです。
強敵の場合は回数を分けて決着まで誘導していくというのも手法になります。最初は勝敗があいまいな状態にして、ストーリーを通して、こいつを決着をつけないとな、と読者にも思わせる話を展開して、最後に最終ラウンドとするわけです。
こんな感じで戦闘にバリエーションがあれば同じ展開も避けられます。また戦闘を小分けにするので、1戦闘を無理に長くしなくともいいわけです。一石二鳥というやつですね。色々試行錯誤していきましょう。




