付け足すもの色々(後編)
前回のそのまんまな続き、後編でございます。
さて、前回書いたのは股下をくぐり抜けたところまでですよね。流れで決めた通り、部位破壊=アキレス腱を斬るという流れになるわけです。
元は「身を捻り、振り返りながら脚の腱を斬った」とさらっと流しているわけですが、どう斬るか、というのを考えます。前回で両手で刀を握って右に構えてもらっています。
くぐり抜けたあとなのでどちらも背中を向けている状態。後ろ側に攻撃をしかけるわけですが、後ろに振り返りながら攻撃できれば最高ですよね。振り返ってから斬る、だとワンテンポ遅れるわけですから。
ゼ◯ダの伝説が好きな人は簡単に想像できると思うんですけど、振り返りながら斬る、つまり回転斬りをしてもらうという方向で行きます。
右に構えているので左に向けて刀を振るうわけですね。
縦書きで読んでる方には申し訳ないんですが、横書き向けに図を示してしまうと
↓ ← ←
↓ 「主」「刀」
ズバッと→
鬼の右足 鬼の左足
という動きにするわけです。
右に刀を構えているので左に振るう。その方が勢いよく振れそうだから。というのは剣術を学んでなくとも、なんとなく想像できますよね。バットとかそういう風にふるいますよね。
何が言いたいかというと、自然な流れに沿って動きを決めているので知識はいらないということです。
ちなみに今剣術とか学んでなくていいんだと思った人。学んだほうがいいに決まっています。が、そこまで本格的に描写するほどの剣戟アクションがメインの作品なのか? というのを考えると、そうではない。となると「自然な流れ」を意識すれば十分描写できる、というだけです。知識は武器。今回私はなるべく負担の少ない学びや考え方を出しますが、専門知識を得るという強さはすんなり描写するための語彙ができるという意味でも最強なので、究極本を読む、実際に学ぶ、実際の動画を見ることが一番時間がかかりつつも効果的です。
話を戻して、回転斬りということは横薙ぎとも描写できるので以下のように描写を変えます。
before
――
身を捻り、振り返りながら脚の腱を斬った。
――
↓
after
――
続いて刀を握り込み、右から左へ薙ぎはらう。
その勢いのまま、後方へ振り返り、鬼の脚を斬りつけた。
肉を裂く感触に、カサネは確信する。
――斬れる。
――
こんな感じで「振」という漢字があまり頻発しないように「薙ぎはらう」の表現を使います。薙ぎ払う時点で横に振るうことの説明はできているので、右から左へという方向だけを説明に使って、その後に勢いのまま振り返って脚を斬ったよ、という描写にします。
これで「回転斬り」と書かなくてもいいわけですな。
この後トドメにいってもらいたいので攻撃が通じたという感覚、「斬れる」という確信を描写します。 「トドメを入れるための前戦闘」→「トドメに持っていくための転換点」に移行していくわけです。
さて次の描写ですが、
before
――
血が噴き出す。
「があぁああ!」
叫ぶ鬼へ追撃は加えず、カサネは後ろに退く。
噴き出した血が蒸気を出しながら、地を焼いている。痛みで暴れて、あの血を撒き散らされては厄介だ。
カサネは刀を振るい、血を払った。
――
となっています。
血が噴き出して、その血が凶器なので距離をとる必要がある。主人公はその知識をどこかで知ったのか、素早く追撃せずに距離をとるという選択をしているわけです。
正直、序盤の戦闘でややこしそうな設定……
い ら な い ですよね。
だってまず鬼が出てきているし、退魔の剣も出しているし。これからトドメを刺すのに血が厄介ですという設定がこの先も出てくるならまだしも、現状だとただ厄介なだけですよね。
なので距離をとる理由を変えます。
単純です。
あの巨体で暴れられたら困るから、にします。
加えて、今主人公は相手の動きを確認できないまま脚を斬ったので様子を見るべきだと判断して距離をとらせます。
「キャラが敵の次の出方が予測できない場合、様子見させる」
これをすればセリフだって入れられます。
動作の場面ではトドメまで書いていませんが書けそうなので書いちゃいます。
↓
after
――
カサネはあえて追撃せずに、後退した。距離をとって、鬼の反応を見る。あの巨体で痛みに任せて暴れられようものなら、ひとたまりもないからだ。
「ガァアアアア!」
鬼は絶叫しながらバランスを崩し、膝をついた。
頭の位置が大きく下がり、カサネはそのうなじを見据える。
カサネは手早く刀を振るい、血を払う。そして鞘に刀を収めた。戦うことをやめたわけではない。
「――落とす」
カサネは駆け出す。
痛みで動きが鈍った鬼の首へ向かって、跳んだ。
すれ違いざま、抜刀し、一閃。
その後、鬼の肩を蹴り、通り過ぎた。
着地し、振り返る。
表情の固まった鬼の頭が徐々にあるべき場所からズレていき、落ちた。
鬼の体が崩れ落ちる。
カサネは安堵の息を漏らすと、静かに刀を払った。
――
というわけで、様子見→トドメの一撃を決める→トドメという感じで描写しました。
はい、以上です。
文字数200文字程度からどうなったか通して見比べてみてください。
↓
after
――
カサネはゆっくり立ち上がる。遠くで暴れる鬼を、静かに睨む。
カサネの脳裏にはかつての教えが蘇っていた。
『人に刀を抜いてはならぬ』
それは、カサネに剣を教えた、師の言葉であった。カサネは刀をスッと腰から抜くと確かめるように横に持ち、その鞘を見た。
「人じゃないなら――」
鞘から刀の刃が姿を現す。
まるで水を閉じ込めたかのような、鮮やかな青の刀身が顔を出してきた。
刀は殺しの道具だ。結局、殺すために生み出されたものの使い道はそれでしかない。人を助けられた、守れたなぞは結果だ。
それでも人に刀を抜くなと教えられたのは――託された刀――退魔の剣に込められた想いゆえだろう。
「――斬られても、文句はないな!」
カサネは勢いよく鞘を投げ捨て、姿勢を低める。
脚に意識を集中させ、力の限り大地を蹴った。
鬼の巨体はカサネの数倍はあった。しかし、カサネはそれに臆することなく、風を切って駆ける。
両手で刀を握り、右に構える。
鬼はカサネの気配に気づいたのか、こちらに顔を向けると棍棒を振り上げた。それが、カサネに向けて落とされる。
カサネのいる周囲だけ、太陽が隠れたかのように影で埋め尽くされた。
空から大岩が落ちたかのような、そんな一撃が襲い来る。
カサネは構わず――逆に速度を上げた。潰されそうなら潰されない場に行けば良いことだ。
見据えた先には鬼の股下がある。巨体が祟って……人が簡単に通れる空間になっている。つまりがら空きだ。
カサネは勢いよく跳ぶと、そこへ滑り込んだ。
勢いのまま、鬼の背後に回る。
それによって鬼の一撃を躱してみせた。
続いて刀を握り込み、右から左へ薙ぎはらう。
その勢いのまま、後方へ振り返り、鬼の脚を斬りつけた。
肉を裂く感触に、カサネは確信する。
――斬れる。
カサネはあえて追撃せずに、後退した。距離をとって、鬼の反応を見る。あの巨体で痛みに任せて暴れられようものなら、ひとたまりもないからだ。
「ガァアアアア!」
鬼は絶叫しながらバランスを崩し、膝をついた。
頭の位置が大きく下がり、カサネはそのうなじを見据える。
カサネは手早く刀を振るい、血を払う。そして鞘に刀を収めた。戦うことをやめたわけではない。
「――落とす」
カサネは駆け出す。
痛みで動きが鈍った鬼の首へ向かって、跳んだ。
すれ違いざま、抜刀し、一閃。
その後、鬼の肩を蹴り、通り過ぎた。
着地し、振り返る。
表情の固まった鬼の頭が徐々にあるべき場所からズレていき、落ちた。
鬼の体が崩れ落ちる。
カサネは安堵の息を漏らすと、静かに刀を払った。
――
はい。1000文字程度。約5倍になりました。いやまぁ、最初が露骨に文字数増やせるように少なめにしたからなんですけど。
あとはそれぞれの流れがぶつ切りになってないか、とか、やっぱりここの表現は冗長に感じるなとか、改行を調整して推敲していく感じになります。
なんなら練習がてらこの文章を自分なりの文章で直してみてもいいです。
戦闘描写で何の要素を入れてどれを重視して描写するかは目的次第です。
なので「役割」「流れ」しっかり意識していきましょう。
ではまた次回。




