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メイリオン・クロニクル~魂導の旅路~  作者: さとう
第三章

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BOSS ステラ=ヴォルテクス

「術式展開、『ブリッツ・アウト』」


 空気が震えた。

 紫電が奔るたびに、坑道の岩壁が焼け焦げ、金属のような臭いが立ちこめる。

 戦闘が開始すると同時に、ステラは紫電を帯びた。そして……消えた。


「はっ?」


 フレイアが斧槌を構え、ポカンとしていた。

 僕はフレイアの間に割り込み、右ガントレットに装着された丸盾を構える。

 すると、盾に紫電の矢がガンガンと命中し、消滅した。


「ゆ、ユウト、今の」

「ステラだ!! 精霊術式はおそらく、超高速移動だ!! 全員、警戒を!!」


 僕が叫ぶと、ステラがいきなり現れる。


「一瞬で見破るとは、さすがですね……では、もう少し速度を上げましょうか」


 ステラは弓を構えたまま、まるで舞うように地を滑った。

 その動きは人の域を完全に越えている。

 弦が鳴るたび、光の矢が連続して放たれ、残像すら残さない速度で僕らへ殺到した。


「くっ――!」


 反射的に丸盾を構えるが、衝撃で全身が後ろへ弾かれた。

 雷の矢が岩を砕き、床を焦がす。

 フレイアが跳びのき、髪先をかすめた電光が空中で散った。


「なに、これ……!! 避ける間もないじゃない!!」

「速すぎて、私じゃ……っく」


 僕はリアの前に割り込み丸盾を構えると、矢が当たり弾かれた。

 速度も、威力も上がっている。これは本当にまずいかもしれない。

 すると、大盾をズンと地面に置いたギデオンさんが言う。


「この程度なら……問題はない!!」


 ギデオンさんが吠えた。

 地面に盾を突き立て、両手を広げる。

 その瞬間、僕の足下の岩が光を放ち、周囲に黄色の陣が展開された。


「術式展開――『護国城塞(ごこくじょうさい)』!!」

 

 すると、僕らの装備が淡く輝いた。

 僕もリアもフレイアも、ダンジョン調査ということで、町で買った胸当てや鎧を装備している。それらに『地』の精霊力が流れ込んだ。

 そして、飛んできた矢の一本がフレイアの頭に命中する。


「あいたっ!? て……痛いけど、そんなに痛くない」

「ふ、フレイアさん、頭に当たりましたけど……」

「いや、痛くないのよマジで」


 僕らの身体……いや、装備が淡く輝いている。

 これが、ギデオンさんの精霊術式なのか。

 すると、ステラが停止し、ギデオンさんをジロッとにらむ。


「なるほど、『守護』の騎士ですか……守りは専売特許というやつですね」

「自分の守りを侮るな。あの程度の雷では、びくともしない」


 ギデオンさんの声が静かに響く。

 だが、その腕はわずかに震えていた。

 相手の攻撃がそれほどまでに重い証拠でもあり、そして……妹の顔をした別人が、容赦なく敵意を向けてくることへの揺らぎだろうか。

 ギデオンさんは、僕らに説明するように言う。


「自分の精霊術式『護国城塞(ごこくじょうさい)』は、地の国で採掘された鉱石や素材に関係する物で作られた装備の耐久性を、地の精霊力で底上げする。さらに地の精霊力は装備に守られていない生身の部分も防御できる」

「わお、すっごいじゃん」

「これが、『守護の道』を歩む騎士の力……」


 フレイア、リアも驚いていた。

 守りはギデオンさんに任せていい。だったら僕は……攻撃に回る。

 弓を手に、ステラに向ける。


「ステラ。きみの攻撃はギデオンさんの守りに通じないけど、まだやるかい?」

「もちろん……じゃあ、今度はさらに速くしてみましょうか」


 紫電がさらに濃くなった。

 雷が髪を逆立て、弓がひとりでに鳴動する。ステラの体から、雷の筋肉のような光が走った。

 なんて恐ろしい雷の精霊術式。身体能力を極限まで高める、『雷加速』。僕の目では、もうその姿を追えない。


「リア、援護を!! フレイア、見えるか!?」

「見えるわけないけど、やってやる!!」

「私も……!! 術式展開!!」


 リアは、周囲に大量の『ウインド・シード』を設置する。

 フレイアが前に出て、巨大な斧槌を振り回し、地面を思いきりえぐった。

 石の破片が周囲に飛ぶ。僕らはギデオンさんの守りで強化されているので、礫が命中したところで痛くはない。

 すると、リアの『ウインド・シード』が一つ発動。小さな竜巻が発生した……が、ステラがリアの精霊術式を見極めるために、わざと引っかかったと気づいた。


「喰らえぇっ!!」


 フレイアは、精霊術式でマグマ化させた地面を掬い、周囲にバラまいている。

 リアの『ウインド・シード』による包囲、僕は『風蝶陣』をばらまき逃げ場をつぶす。

 室内がトラップ、マグマで埋め尽くされた瞬間、『ウインド・シード』が発動し、風蝶陣が破裂した。


「ぐっ……」


 部屋の隅で、肩を押さえるステラが現れた。

 右腕の一部が火傷し、裂かれ、血が出ている。

 かわし切れなかったのだろう。忌々しそうに僕を見ていた。


「なかなか面白いです。あなたたちを殺しはしませんが……ちょっと頭にきました」


 紫光がはじけた。そして、ステラが無傷で立っていた。

 全身から放たれる雷。なぜか全身に焦げ跡一つ残していない。

 服の裾さえ、破れていない。


「情報を電流として体内に流せば、損傷はすぐ修復されるんですよ。これが私の魂絶技(リミット・ブレイク)『ライトニングエナジー』……先生は『最高の自己修復』と言っています」

「再生……!? 雷で!?」


 リアが驚愕に目を見開く。

 ステラは淡く微笑んだ。


「はい。再生と制御は、すべて理屈で可能です。先生が証明しました」


 フレイアが舌打ちし、斧槌を肩に担ぐ。


「理屈は意味わかんないけど、さすが半分魔獣なだけあるわね」

「半分? いいえ、もっとですよ。私は人と魔獣と、雷そのものの融合体――」


 ステラの目が淡く光る……次の瞬間、再び消えた。

 耳元で空気が裂ける音。僕は反射的に盾を構える。

 間に合わなかった。光の矢が僕の肩をかすめ、血が散った。

 ギデオンさんの防壁が、一部だけ破られたのだ。


「ユウト、下がれ!!」

「でも――」

「自分が前に出る。守りは任せろ」


 ギデオンさんはさらに精霊力を込める。そして、ステラがギデオンさんの盾に蹴りを入れた。

 そして、ギデオンさんはステラの腕をつかみ、動きを止めた。


「む……離してください」

「悪いが、それはできない。シスカ……兄ちゃんが、終わらせてやるからな」

「ですから、私はシスカでは──」


 すると、ステラが顔を歪め、頭を押さえた。


「ぐっ……」

「……し、シスカ?」

「……ですから、私は、シスカでは……ありません!!」


 ステラは、腕をひねってギデオンさんの掴みから逃れ、ギデオンさんを盾ごと蹴り飛ばした。

 着地し、バックステップで距離を取り、頭を押さえる。


「……妙な頭痛ですね。これ以上、あなた方と接すると嫌な予感がしますので、今回はこれくらいにしておきます。では」

「待て、シスカ!!」


 シスカは奥の部屋へ消えた。

 僕たち四人は一斉に奥の部屋へ行くが……そこには、何もなかった。

 

「逃げられた……」

「くそっ!!」


 ギデオンさんは壁を殴りつける。

 シアは、あごに手を当てて考え込んでいた。


「……先ほどのシスカさん。動きが妙でした、まるでギデオンさんの声に反応したような」

「あ、それあたしも思った。名前呼んだら頭を押さえたよね」

「……もしかしたら、シスカさんの意識は完全に消えてはいないのかもしれません。あくまで推測ですが……」


 リアがそういうと、ギデオンさんは頷いた。


「それでも、わずかな可能性が出たなら……自分のやることは、決まっている」


 ギデオンさんは強く拳を握りしめ、僕らに向かって頷くのだった。

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