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メイリオン・クロニクル~魂導の旅路~  作者: さとう
第一章

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戦い終わって

 僕は、夢の中……に、いた。

 夢かどうかわからない。なぜなら僕が見ていたのは、この世界で目覚める前にいた白い空間……相変わらず意識だけで、手足が全くない、声も出ない。

 でも、今回は早い段階で別のことがおきた。


『…………』

「……やあ」


 目の前に、緑色のピンポン玉……いや、もうピンポン玉とは言えないな。

 試しに挨拶をしたら、なんと声が出た。

 声帯を震わせ、空気が振動することで聞こえる声じゃない。理論では説明できない声の出方に少し驚くが、それよりも驚いた。


『こんにちは、ユウト』


 緑色の光がしゃべった。そして、形が変わっていいく。

 半透明の蝶の羽を持つ少女となった。

 間違いない。僕を手助けしてくれた少女だ。


「質問が山ほどあるけど、まずは感謝を……きみのおかげで命拾いした。いや、この言い方は正しいのか? そもそも……僕は『生きて』いるのか?」


 まず、確認すべきこと。

 この少女は間違いなく精霊力にゆかりのある存在。そして、僕が若返り、この世界に来ることになった要因の可能性も非常に高い。

 僕は少女が何故目の前に現れたかも気になったが、これだけは確認したかった。


「教えてくれ。僕は生きているのか? シェルとの戦いでの生死も重要だけど……一番大事なのは、あのエレメンティアの世界は、僕の夢なのか? 日本での僕はどうなったんだ?」


 少女は少しだけ俯くと、悲しそうに首を振る。


『地球、日本のあなたは帰らぬ人になったわ。そして、魂だけがこちらの世界に迷い込んだ。私が知る限り、あなたで五人目……帰るべき場所に帰ることができない迷子。『漂魂者(メイリオン)』という存在は……』

「…………そう、か」


 この少女の言葉は信じることができた。

 確定した。この世界は、僕が見ている夢の世界なんかじゃない。現実の世界だ。

 病院のベッドで包帯グルグルで機械に繋がれている、なんてことはない。

 僕は、死んだのだ。そして、魂がこの世界に迷い、第二の人生を……って。


「どうして、僕はあの世界で生きてるんだ? 魂だけで、肉体は火葬されて骨壺の中じゃないのか?」

『私たちが、新しい身体をあげたの。どの道も歩んでいない、無垢な魂に、無垢な身体を』

「……なんでだ?」

『あなたに、新しい道を歩んで欲しいから。ユウト……エレメンティアを歩いて、自分の道を……私たち精霊も、あなたを……」


 少女が霞んでいくと、世界が歪んでいく。

 僕は最後に叫んだ。


「待った、きみの……キミの名前は!!」


 少女は驚いた顔をして、優しくにっこり微笑んだ。


『エアリス。私は、風と自由と導きを司る大精霊……またね、ユウト』


 ◇◇◇◇◇◇


「──エアリス!! ん?」


 手を伸ばすと、柔らかい物を握りしめていた。

 手のひらに収まるような、形のいい饅頭……?


「な、な、な……」

「へ?」

「ほう、大胆じゃないか。なあ、アルトリウス」

「セラ、若いモンに任せて退室するか?」


 目の前にはリアがいた。そして、セラとアルトリウスもいる。

 さて、今僕が握りしめているのは?


「なな、何をするんですかーっ!!」

「え、ぶへっ!?」


 僕はビンタされた。

 そう、僕は飛び起きると同時に手を伸ばし、リアの胸を鷲掴みしてしまったようだ。リアは僕の額に載せていた濡れタオルを交換しようとしていたみたいだ。

 そして気付いた。


「あれ、生きてる」

「私が殺してもいいんですけどね……」


 リアが胸を押さえて僕から少し距離を取った。

 セラが大笑いしながら僕の元へ。ベッドサイドにあった椅子に座る。


「ユウト、怪我の具合はどうだ?」

「怪我……あ、そういえば。って、あれ……?」


 痛みがない。

 セラが確認すると「驚いたな……」と言い、僕の背中をバシッと叩く。


「完治している。『霊触者』は自己治癒力が高いとされるが……たった一日で完治するとは」

「エアリスのおかげかな……と、僕はどれくらい寝ていたんですか?」

「丸一日だ。さて、いろいろ話すことがある。寝起きだし、明日にしてもいいが……」

「いえ、大丈夫です。でもその前に……水、一杯ください」


 僕は水を飲み終えると、セラはその後のことについて話始めた。


 ◇◇◇◇◇◇


 まず、僕を攫おうとした『混沌の道』の三人スパイ。二人は逮捕され、一人は死んだ……いや、僕が殺してしまった。

 罪悪感はあった。人を手に掛けた事実ものしかかってきた。でも、生きるか死ぬかで殺されるくらいならと、無理やり自分を納得させた……今は干渉に浸る時じゃない。


 イリア、ヴェルの二人は『国家転覆容疑』と『器物破損』と『秩序破壊』の容疑で逮捕された。逮捕したのは『秩序』のデズモンド……イリアを見ても表情を変えなかったそうだが、長い付き合いのセラにはデズモンドの心境を察したようだ。

 というか、罪状が日本でも聞いたことあるような罪状で驚いた。まあ、『秩序破壊』なんて罪状はないけど……この辺は異世界っぽいな。

 『秩序』は、この世界で警察みたいな役割もあるらしい。デズモンドは悪人だと思っていたけど、セラ曰く『昔から頭が固いだけでいいやつだよ。まあ、秩序に染まっちまったけどね』と笑っていた。


 『混沌の道』に対してどうするのか? 僕が質問するとセラは「何もしない。そもそも、混沌ってのはこういう奴らだ。悪さをして、やれらてもまた悪さをする。人は悪に手を染める生き物だから、混沌が消えることがない。永遠のいたちごっこだ」と。

 これから先、僕の旅で『混沌の道』が関わることが多くなるだろう。


 それから、建物の補修についてや、アルトリウスを吹っ飛ばしたことについて謝罪。

 セラは煙草に火を着け、僕に質問した。


「ユウト。お前……最後に出した『魂絶技(リミット・ブレイク)』は何なんだ?」


 なんとなく、聞かれる気がした。

 もう、セラは信頼できる相手だ。僕は言う。


「あれは、風の大精霊、エアリスが貸してくれた力です」

「……何ぃ!?」

「えぇ!?」

「嘘だろ、おい!!」


 正直に言うと、セラ、リア、アルトリウスが詰め寄って来た。

 驚いて身を引くと、セラがハッとなる。


「こほん。落ち着いて質問するぞ……ユウト、風の大精霊エアリス様は、どんなお姿をしていた?」

「姿? ええと、風の神像ありますよね。あれと同じです」

「そうなのか!! やはり、『協調』は正しかったのか」

「……えーと」


 意味がわからない。

 するとリアが言う。


「大精霊の存在。実は今でも疑われているんです。精霊力は精霊の力と言われ、大精霊がエレメンティアに満たしている力とも言われていますが、もしその通りならなぜ大精霊そのものが現れないのか、本当に大精霊は存在するのか、と議論になることもありまして」

「そ、そうなのか……」

「ええ。そして、千年以上前から世界中に存在する『大精霊の神像』も、『協調』を歩んだ漂魂者が作ったものと言われています。本当に精霊はこんな姿をしているのか? ただの妄想ではないのか? と言われていましてね……でも、ユウトの証言で、神像の姿が正しいとわかりました」

「でも、僕が見たのは風の大精霊だけで、他のは……そもそも、他のに会えるか」


 ここまで言うと、アルトリウスが言う。


「ま、大精霊様と神像については置いといて……ユウト、これからどうするんだ? まだ『知恵の道』の総本山であるここで学ぶなら大歓迎だ。今回、オレは役立たずもいいところだったしな……オレでよければ、いろいろ指導してやるぜ」

「ありがとうございます。でも僕……この世界を観測するため、歩こうと思います」

「……旅に出るのか」

「ええ。『知恵の道』だけじゃない、もっといろんな『魂の道』の姿を見るため、旅に出ます。アルトリウスさん、セラさん、リアにはお世話になりました」


 僕は立ち上がり、三人にお礼を言う。

 セラは頷いて微笑むが……リアは、どこか寂しそうに見えたのは気のせいじゃない。

 するろ、リアをチラッと見たセラは言う。


「ユウト。お前も『精霊術式(エレメンタル・コード)』に『魂絶技(リミット・ブレイク)』を使えるようになったがまだ未熟。霊触者の等級で言えば第六等級、『第六等級エレメンタル・ビギナー』といったところか」

「……等級? ビギナー?」

「ああ、説明してなかったな。霊触者は等級で管理される。戦闘力、精霊術式、魂絶技……他にもあるが、国ごとで試験を行っているぞ。ちなみに私とアルトリウスは『第二等級(エレメント・ソヴリン)』で、リアは『第四等級エレメンタル・マスター』だ」

「セラ主席研究員、先日試験に合格したので、今は『第三等級(アーク・シンフォニア)』ですのでお間違えなく」


 リアが眼鏡をきらっと輝かせて言うと、セラは「悪い悪い」と苦笑していた。

 等級……なるほど、この世界でも格付けはあるんだ。


「その等級に上がると、何か特典とかあるんですか?」

「ああ、高い等級じゃないと調査できない未開の地やダンジョンとかに入れたり、特別な仕事を任されたり……今はそこまで詳しく知る必要はないだろう」

「だな。ところでユウト、いつ出発するんだ?」

「旅支度をしてからですね。町で準備をします」


 早ければ、数日中にでも。

 そう言うと、セラは言う。


「ユウト。さっきも言ったが、お前はまだ未熟だ」

「それは理解していますけど……」

「まだまだ知らないことも多い。一人では危険なところもある。だから──リアを連れて行け」

「えっ」

「え? リアを?」

「ああ。こいつは強いし頭もいい。わからないことはリアに聞けばいいし、最初の内は護衛としても役に立つ」

「せ、セラ主席研究員……?」

「リア。正直になれ。お前……ユウトと一緒に行きたいんだろう?」

「…………」


 リアは否定しなかった。

 そうか、リアが一緒に来てくれるならありがたい。


「リア。僕としては、きみが来てくれると非常に助かる。足りない知識、そして強さを補ってほしい……でも、決めるのはきみだよ」

「……本当に、もう」


 リアは、僕に手を差しだした。


「『知恵の道』を歩むこの私、リア・アルヴェーネ。『漂魂者(メイリオン)』ユウト……あなたの旅を補佐する『知恵』となりましょう」

「よろしく。リア、頼りにさせてもらうよ」


 リアと握手。

 こうして、僕の旅にリアが加わった。


 ◇◇◇◇◇◇


 でも、僕は知ることになる。

 『孤独の道』……この道での旅が、どういうものなのかを。

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