共鳴者との戦い②
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一方、セラとイリア
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空に稲妻が走り、地面は炎に包まれていた。
崩れかけたエレメンティア精霊研究所の中央広場で、セラとイリアが対峙する。
セラは、煙草に火を着けて言う。
「そういやお前、私らの前で一度も『精霊導器』を使わなかったが……『混沌の道』を歩んでいるとバレるから、そういうことか」
「まあ、そうね。誤魔化す方法はあったけど、面倒くさいから。ビビりな研究者を演じれば、あんたも、アルトリウスも疑わなかったもんね。でも……」
イリアは、鞭を抜いて地面を叩いた。
「あんたはムカつくほど賢い。私の前で一度も『精霊術式』を使わなかった……仲間だろうと、自分の手札を晒さない。だからこそ、嫌いだった」
「そうかい。はっ……『知恵』を嫌いなお前にとって、ここでの生活は苦しかったか?」
「そうね。でも……あなたを観察するためなら苦じゃないわ。ここで『漂魂者』を研究するあなたが、鍵だった。我々『混沌の道』にとってね」
「……つまり、最初から私を裏切るつもりだったのね」
「裏切り? 違うわ。『混沌』は最初から裏切り続けるものよ。さあセラ……私の本当の実力を見せてあげる。あなたの炎、消してやるわ」
稲妻が鞭を伝い、瓦礫を砕く。
セラは再び煙草に火を点け、ゆっくりと吐息を吹いた。
「なら、お前の雷が消えるまで……理を灯してみせる」
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イリアは、鞭に雷を纏わせ、地面を叩く……すると、雷が蛇のような形に変わり、セラに向かって高速で這い出した。
精霊術式、『雷蛇連鎖』。
雷の蛇は、獲物に喰らいつき痺れさせるまで止まらない。
するとセラは煙草を吸い、煙を思い切り吐き出した。
「術式展開、『煙道の矢』」
ただの煙草ではない。
火属性の精霊力で火を着け、セラが特別配合した特別な煙草での煙だ。一般的な煙草の数十倍以上の煙が発生し、煙を媒介として精霊術式として昇華させている。
セラの姿が消え、周囲が煙に包まれ……獲物を見失った無数の雷蛇の動きが止まった。
「攪乱の精霊術式……」
「違うな。煙は火の記憶……火が歩いた道を、私は読む」
すると、四方八方から『火の矢』が飛んできた。
全て、地面に突き刺さっては消える。一本もイリアを狙った矢がなく、イリアは怪訝な顔をする。
舌打ちし、イリアは追加の雷蛇を大量に召喚、さらに鞭を振るい続け煙を払う。
だが、煙は消えない。むしろ、増えていた。
「まさか……この矢!!」
「ご名答」
どこからか、セラの声が聞こえて来た。
そして同時にイリアは気付く。大量に放った雷蛇が、全て消えていた。
「煙で、雷の精霊力を拡散させた。わかるか? この煙は、私にとって領域みたいなもんだ。どこに何がいるかなんて手に取るようにわかる」
「ふぅん……なら、この煙を全て吹き飛ばせばどう?」
紫電がイリアを包み、さらに全身に紋様が浮かんだ。
「魂絶技──『蛇帝の咆哮』!!」
「っ!!」
膨大な精霊力を身に纏い、イリアは精霊力を纏った巨大な『雷蛇』となった。
そして、身体、尾を振ってその場で回転すると、セラの煙を一気に吹き飛ばす。同時にそれが攻撃となり、セラの身体に直撃し吹き飛ばした。
「ぐっ、っぁ……!?」
瓦礫に叩きつけられ、肺の奥の空気が抜けた。
一瞬、世界が白く霞む。――だが、炎はまだ消えていなかった。
セラは歯を食いしばり、弓を手に取る。
「フフフ、見つけたぁ~」
「ぐ……その、精霊力、人間一人が扱う精霊力の限界を超えている。そうか……それが『道越者』の力か」
「そうよ。ふふ、教主様は偉大なお方。『混沌の道』そのもの!! ああ……こんな任務、さっさと終わらせて早くお会いしたいわあ」
雷の大蛇は、紫電を弾けさせセラに向けて大口を開けた。
リアは、もう一度煙草を咥えて火を着けた。
「……イリア。お前が『混沌』だろうと……お前といた時間は、悪くなかった。きっと、アルトリウスも……」
「あっそぉ。じゃあ……終わりにしましょうか」
セラが煙を吐き出すが、雷の大蛇が頭と尻尾を振ると煙が一気に吹き飛んだ。
そしてセラは跳躍。弓から火矢を連射するが、雷大蛇の身体に刺さってもすぐに消えてしまう。
イリアは叫んだ。
「終わりぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
セラを飲み込もうと大口を開けた……だが、セラは着地と同時に言った。
「ああ、お前がな」
「え……っ」
ボッ!! と、雷の大蛇に火が着き、燃え上がった。
「んなっ!? な、なんで、雷が、燃え」
「燃えてるのは雷じゃない。私が吹いた煙さ」
最後に吸い、吐いた煙はただの煙じゃなかった。
煙は囮、真の狙いは、煙と一緒に吹いた特製の鱗粉……特別調合した『燃える鱗粉』だ。
鱗粉は舞い、雷の身体に触れると同時に燃えたのだ。雷の大蛇ではなく、鱗粉が燃える。だが、その熱は生きている。
「煙は火の記憶。私が吸い込んで吐き出した『知恵』は、まだ燃えてる……いくぞ、イリア!!」
「ぐっ、あ、熱い……このっ!!」
鱗粉は、イリア本体の部分にまで及び、燃えていた。
セラは弓を構え、煙草を吸い煙を吐き出す。
吐き出した煙が雷大蛇を包囲し、同時にセラの矢が発射された。
「魂絶技、『紅蓮天焦』!!」
火矢がイリアの本体付近に刺さると、包囲していた煙が一気に燃え上がった。
「ああああああああああああ!!」
雷大蛇がのたうち回り、崩れていく。そして、全身に火傷を負ったイリアが倒れていた。
セラは、そっとイリアに近づく。
「殺しはしないさ。一応……同期の、友人だからな」
吐いた煙は、風に流れて消えていく。
空の稲妻も、いつの間にか止んでいた。




