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メイリオン・クロニクル~魂導の旅路~  作者: さとう
第一章

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共鳴者との戦い①

 さて、敵は三人……イリア、そしてコートの男二人。

 こっちは、覚悟を決めたセラ、そしてリア、アルトリウス。

 僕もいるけど……正直、戦力になるとは思っていない。そもそも、実戦経験なんてないし、身体を鍛え始めたのも、精霊力を使い始めたのもつい最近だ。

 見たところ、敵の三人はどう見ても戦い慣れしている。『混沌の道』なんて物騒な道を歩んでいるくらいだ……殺しも経験してると仮定した方がいい。

 すると、スキンヘッドにイリアが言う。


「ヴィル。ユウトくんを押さえて」

「承知した」


 スキンヘッドことヴィルは、手元に棘の付いた鞭を顕現させる。すると、リアが俺の前に移動し、風の弓から連続で矢を放った。

 ヴィルは鞭を振るい、全ての矢を叩き落とす。精霊力が具現化した矢は叩き落とされると消滅した。


「ユウト、あなたはまだ戦えない。隠れて、自分の身を守ることに専念してください!!」

「わ、わかった」


 女子に守ってもらうのはカッコ悪い……なんて言ってる場合じゃないし、僕にその資格はない。そもそも、リアは僕が十人いても無傷で鎮圧できるくらい強い。

 そしてもう一人。オールバックの男……確か、シェド。


「おっと、シェド研究員……アンタの相手はオレだ」

「……フン」


 アルトリウスが、弓を肩に担いでシェドの前へ。

 シェドは、水色の長い鞭を手にすると、周囲に水の玉がプカプカ浮かぶ。

 アルトリウスは弓を構えると、鏃に炎が集まっていく。


「術式展開、『液律の鞭(アクアコード)』」

「チッ、精霊術式……!!」


 すると、周囲の水玉が鞭に吸収され、鞭そのものが液状化した。

 それをアルトリウスに向けて振るう。アルトリウスは態勢を低くして躱し、そのままの姿勢で炎の矢を連続で放った。

 だが、矢は全て水玉に吸い込まれる。そして、シェドがニヤリと笑った。


魂絶技(リミット・ブレイク)──『蒼蛇の永渦(せいじゃのえいうず)』」

「何っ!?」


 すると、水球に吸収された炎の矢が、水を纏って反射された。

 驚愕するアルトリウス。両腕を交差して防御するが、水を纏った矢が直撃し弾き飛ばされ地面を転がった。そこに、シェドが鞭を振るうと、水の鞭がアルトリウスの身体に巻き付き、ふわりと浮かぶ。


「ぐぁっ……ミスった、ちくしょう。はは、研究ばっかりで戦闘訓練してなかったツケが回って来たぜ」

「黙ってろ。さて、坊や……出てきてくれるかな?」

「ユウト、出てくん──っむが!?」


 水が縄のようになり、アルトリウスの口を塞いだ。

 そして、鞭がゆっくりとアルトリウスの身体を締め付ける。


「このまま呼吸できず窒息するか、それとも絞め殺すか……好きな方を選ばせてやろう」

「……やめてくれますかね」


 僕は瓦礫の影から出た。

 シェドがニヤリと笑い、僕に一礼する。


「『漂魂者(メイリオン)』ユウト様……どうか、我々と共にお越しいただけますかな? 道中の安全は保障しましょう。あなたが、『混沌の道』を歩み、新たな『混沌』へと至る道を歩むことを、我らの教主はお望みです」

「……申し訳ないけど、僕は僕の道を歩むと決めたので!!」


 僕は手元に弓を顕現させ、風の矢を放つ。

 風の矢は、アルトリウスを繋いでいた鞭を弾き飛ばし、僕は右手に風の精霊力を貯め、一気に放出。

 小規模な竜巻が、アルトリウスを吹き飛ばした。


「おぉぉぉぉぉぉ!!」

「あ、やべっ」


 アルトリウスは壁に激突。そのまま動かなくなった……どうやら失神したようだ。

 

「いやあ、驚きました。風の精霊力、そして弓の精霊導器……あなたは『知恵の道』を歩むと言うことですかな?」

「そうではないよ。これはなんというか……僕にもわからない。でも、使いやすいから使ってる」

「ふむ。まあいいでしょう……ところでおわかりですかな? アルトリウスは失神したようです。そして、リア嬢はヴィルが、セラはイリア様がお相手をしている。ここにいるは、私とあなただけ……」

「それも、充分理解しているよ。でも、勝機はある」

「ほう」

「まあ、試してみようじゃないか」


 けっこう、いっぱいいっぱいだけど……勝機はあることに違いはない。


 ◇◇◇◇◇◇


 一方、リアとヴィル。


 ◇◇◇◇◇◇


 リアは、高速で移動しながらヴィルの周りに連続で矢を放つ。

 地面に刺さった矢は消え、そこにはリアしか感知できない『罠』が仕掛けられる。

 精霊術式・『ウィンド・シード』。

 ヴィルは「フン」と鼻を鳴らして言う。


「やっぱり、お前が出てきたか……リア・アルヴェーネ。『知恵の道』の若き天才」


 ヴェルは、リアが地面に設置した『罠』を見て馬鹿にしたように笑う。


「風を『固定』して戦うなど愚の骨頂だ。風は流れるからこそ意味を持つ」


 リアは弓を構える。


「流れるだけじゃ、『風』は記録できない。だから私は留める。記録することで『理』を見つけ出す」

「理など不要だ。風はもっと自由に――破壊のままに吹くべきだ!!」

「それは風じゃない。ただ暴風よ」

「違いがわからん小娘が!!」


 突風が走り、リアの髪が乱れる。

 そして、ヴェルを見て冷静に分析を開始……眼鏡を光らせる。


「……流れが不規則。突風を乱流に変換して制御してる。だったら――」


 リアは矢を放ち、自分の足元へ。


「術式展開――『ウィンド・シード』」


 これまでに放った矢ではない、足元に放った矢の精霊力を解放することで、矢の周囲に微細な風の渦が生まれた。

 ヴェルは鼻で笑い、風を帯びた鞭を手に接近してくる。

 走るたびに罠が発動し、足元に竜巻が発生するが、ヴェルは回避……そう、ヴェルは覚えているのだ。リアがどこに矢を放ったのか、その全てを。


「いい術式だ。だが、所詮は子供の遊びだな!!」

「──っ!!」


 鞭を後方に振り、風を爆発させて一気に距離を詰めてくる。

 この間、リアは何発も矢を放ち、周囲に精霊力でマーキングを続けていた。

 そして、ヴェルの鞭が間合いに入った。


「術式展開!! 『暴風制圧テンペスト・リヴァース』!!」


 鞭そのものを竜巻とする、ヴェルの『精霊術式』が発動する。

 その鞭で、リアを弾き飛ばそうとした、だが。


「術式発動、『ブリーズ・リレー』!!」


 だが、無数に埋め込んだ『ウィンド・シード』が発動、無数の反射風がヴィルの鞭の風を相殺した。


「なっ……私の風が、押し返されただと!?」

「あなたの風の『流れ』は読みやすいわ」


 リアには見えていた。自分が埋め込んだ『ウィンド・シード』……『風のタネ』が成長した時、どんな暴風となるか、そして、ヴィルの風にどう影響を与えるのか、相殺するにはどの位置の風を発動させればいいのを。

 

「私は、風を読む。そしてそれを『記録』する。どう? これでもまだ降参しない?」

「この、小娘……!! ならば、読めない風を作るまで!!」


 ヴィルが鞭を頭上で回転させると、気流が乱れ始めた。


魂絶技(リミット・ブレイク)、『暴乱風陣(ゲイル・ディザスター)』!!」


 広範囲にわたり、気流がぐちゃぐちゃに乱れていた。

 だが、リアの表情は変わらない。目を閉じ、風の流れを感じていた。


「乱せば乱すほど見える。あなたは風を『力』としか見てない……風は、情報よ」

「……何だと?」

「風が教えてくれる。あなたの呼吸、焦り、全てをね」


 リアは、精霊力の矢を弓に番え、ヴィルをまっすぐ狙う。


「……終わりにしましょう。あなたの風は、暴れるだけで、何も残せない」

「黙れ!! 来い小娘!! 私の風が全てを呑む!! ラァァァァァイイ!!」


 ヴィルは鞭を、リア目掛けて振り放つ。

 暴風が、竜巻となってリアを襲う。

 だが、リアは冷静だった。静かに精霊力を貯め……静かに放つ。


魂絶技(リミット・ブレイク)――『風鏃一閃(エアロ・ストライク)』」


 世界が、止まった。

 リアの矢が放たれた瞬間──ヴィルの竜巻が消え去った。


「え……か、風が、止まった?」

 

 音が消える。

 リアが放った矢は音速を超え、空間を切り裂き、風そのものを『真空』に変える。

 そして、ヴィルの暴風が真空に呑まれ、逆流する。


「んな、馬鹿、なぁぁああああああ!?」


 ヴィルは息を詰まらせ、吹き飛ばされ、壁に激突。

 壁が砕け、建物の壁を何枚か突き破り、ようやく止まった。

 身体中の骨が折れ、ヴィルは泡を吹いて気絶していた。

 リアは静かに言う。


「風は、制御するものじゃない。信じるもの。そこが勝敗の差……」


 最後に吹いた風は、リアの髪を揺らす穏やかな風だった。


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