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メイリオン・クロニクル~魂導の旅路~  作者: さとう
第一章

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混沌への道

 移動中、僕でもわかったことがある。


「ぅ……な、なんだ、これ」


 肌がチクチクするような、不快感。

 リアは言う。


「精霊力です。これだけ大規模な精霊力を使えるなんて……恐らく」

「チッ、イリアのヤツ、まさか『道越者(トランセンダー)』だったのか」


 リア、アルトリウスは苦虫を嚙み潰したような顔をする……というか、またわからない単語が出た。

 僕は質問する。


「その、トランセンダー……っていうのは?」

「霊触者の中でも、精霊との親和性の高い者のことです。普通の霊触者よりも多くの力を扱うことができます……普通の霊触者では、『道越者(トランセンダー)』にはまず勝てません」

「いや、それはまずいんじゃ……」

「その通り。急ぐぞ」


 アルトリウス、リアは速度を上げる。速い!! 

 するとアルトリウス、僕を脇に抱えてさらに速度を上げた。いや、速すぎる!! 時速七十キロ以上出ている気がする!!


「うああああああああ!?」

「舌噛むぞ、喋んな。リア、恐らくセラは──」

「エレメンティア精霊研究所、中央広場ですね!!」

「ああ。戦うにはそこが絶好の位置……見えた!!」


 二人は跳躍。窓から飛び出し、エレメンティア精霊研究所の中央にある広場へと降り立った。

 アルトリウスは僕を地面に降ろす。

 周囲は、ひどい有様だった。建物の壁が倒壊し、広場にある木々は燃え、とにかく悲惨な状態だ。

 そんな中、広場の中央には二人の女性がいた。

 一人はセラ、そしてもう一人は。


「──……ぅ、ぐ」


 セラが、崩れ落ちた。

 

「セラ主席研究員!!」


 リアが叫び、セラの元へ行こうとする……が、アルトリウスが肩を掴んで止めた。


「何を!!」

「落ち着け!! イリア……お前が『混沌の道』を歩んでいたとはな」


 イリア。

 紫色のショートヘア、眼鏡をかけ、濃いグリーンのローブを纏った女性だった。スタイルはかなりよく、ミニスカートにヒールを履いている。

 手には『精霊導器』である鞭……なるほど、『混沌の道』を歩む者の精霊導器は鞭か。

 イリアが振るう紫電が、鞭の軌跡を縫っていた


「あ~ら、アルトリウスじゃない。ふふ、元気にしてた?」

「まぁな。で? セラは生きてるのか?」

「ええ。まだ、ね……彼女の研究は大いに役立つから、まだ生かしてる。ねえ、そこの『漂魂者(メイリオン)』の坊や……あなたは、私たち『混沌』が望んでいた存在。ふふ……もう正体がバレても問題ない。はぁ~……仲良しゴッコは退屈だったわぁ」


 イリアは大きく伸びをし、倒れているセラを見た。


「セラぁ? ほら、あなたが守ろうとした『漂魂者(メイリオン)』の坊や、自分から来ちゃったわよ? デズモンドに監視させ、アルトリウスに守らせようとしたみたいだけど、まさか自分でここに来るなんて。ふふ……」

「……く」


 セラは身体を起こし、ゆっくり立ち上がる。

 すると、リアが叫んだ。


「イリア先輩!!」

「リアぁ? ふふふ、どうしたのかな? 私を見てすっごく驚いた顔してる。もしかしてショックだったぁ? 私が『知恵の道』じゃなくて、『混沌の道』を歩んでいることが」

「……ええ、ショックです。私に精霊力の使い方を教えてくれたあなたが、どうして……!! イリア先輩、どうして、あなたは『混沌の道』に染まってしまったんですか!!」


 リアが叫ぶ……いや、魂の絶叫だ。

 いい先輩だったのだろう。だからこそ納得できないのか。

 すると、イリアは大笑いした。


「アッハッハッハ!! 染まったんじゃないわ……私ね、最初から『混沌の道』だったのよ」

「……え」

「風霊学術院に来たのは、『知恵の道』へのスパイ。そして、『漂魂者(メイリオン)』についての情報収集……でもまさか、同期にこれほどの頭脳を持った研究者がいたことは、本当にラッキーだった」


 イリアはセラを見て微笑む。

 

「ねえセラ……あなた、私が『混沌の道』を歩んでいるって、いつから気付いていたの?」

「……気付いてなかったさ。でも、疑ってはいた。間違いであってほしかった」


 セラは煙草を取り出し、火を着ける。


「私が『漂魂者(メイリオン)』が現れたことを上層部に報告した時、お前が聞いていたんだろう? そして、ユウトを手に入れるべく、行動を開始した……お前であってほしくないと、私は思っていた」

「で?」

「だが、無理だった。全ての状況が、お前が『混沌の道』のスパイだと察していた。だから私は最後の確認をするために、わざと異端研究の論文を置いて姿を隠した。デズモンドに連絡をして、あえてユウトを監視させ、アルトリウスにも守らせる……」

「……それで?」

「案の定、お前は行動に出た。外部にいる『混沌の道』の霊触者を呼び、エレメンティア精霊研究所を襲撃させた。その間に、ユウトを攫うつもりだったのだろう?」

「だけど、セラ……あなたに邪魔された」

「そうだ。邪魔するしかないじゃないか……私は最後まで、ここに現れるのがお前じゃない、お前に似た誰かだと思っていた」

「本当に、甘くて馬鹿ねぇ。私に対する攻撃も甘々だし、教主から頂いた力を使わなくても、簡単に倒せたわ」


 教主、頂いた力……ふむ。

 僕は、セラと目が合った。セラが目を細めたのが見えた……よし。

 

「あの、いいですか?」


 僕は挙手をして、全員の視線を集めた。衝動的な行為だが、昔の癖が出たのだ。


「一つ、確認していいですか?」


 イリアは肩越しに、興味深げに微笑む。


「どうぞ、坊や」

「あなたが『道越者(トランセンダー)』から何かを受け取った——つまり本当に『道越者』側の力を直接与えられたのなら、ここにいるだけで空気の波形が異常に鋭くなるはずです。さっきから感じている『肌のピリピリ』は、持続的で低周波の共鳴……『道越者』の純粋な顕現ならもっと断続的で、高周波の閃光が混じるはずです」


 アルトリウスが目を見開く。イリアの顔に僅かに歪みが走った。


「よって、あなたは『道越者』ではない。力は外部から付与された。つまり——教主とやらの力を借りている『媒介者』に過ぎない」


 一拍の静寂。瓦礫の粉が舞う中で、全員がその論理の筋を噛みしめた。


「もし教主が大掛かりな作戦を張っているなら、ここは包囲網の一角です。しかし今の精霊の圧は『一点集中』の跡がない。分散供給を受けている。つまり人数は少ない。多く見積もって三人以下。要点は——あなたは『孤立した代理』で、我々は数で挑める」


 イリアがゆっくりと笑い、口を開いた。


「……面白い。よく調べているわね、坊や」


 次の瞬間、セラがイリアに飛び掛かり、正拳を腹に叩きこもうとした。が、イリアは反応し防御。


「チッ……時間稼ぎ」

「正解。僕とお喋りしている間に、覚悟を決めたセラはあなたを襲うチャンスを伺っていた、ってことです。適当な言葉を並べてみましたけど、ちゃんと聞いてくれましたね」

「生意気……まあ、可愛いから許してあげる」


 すると瓦礫が吹き飛び、黒いコートを纏った二人の男が姿を現した。

 イリアと同じコートを着ている。一人はスキンヘッド、もう一人はオールバックの男性だ。


「イリア、遅くなった」

「研究員には魔法実験の失敗と伝えた。周囲一帯を封鎖し、ここには誰も寄り付かない」


 アルトリウスは舌打ちする。


「ヴィル研究員、シェド研究員……アンタらもイリアの仲間、『混沌の道』のスパイだったのか」


 どうやら、現れた二人も『混沌の道』のスパイのようだ。

 アルトリウスは、『精霊導器』である赤い弓を装備する……セラのとは形状が少し違うな。

 

「リア、相手はエレメンティア精霊研究所の研究員だが、『混沌の道』のスパイだ。恐らく戦闘に特化した霊触者……やれるか?」

「問題ありません。というか……私、かなり頭にきています」


 リアも弓を装備し、風が静かに舞い始める。

 

「イリア。私も覚悟を決めたよ……あんたを倒す。んで、ユウトを守る」

「ふふ。とりあえず、リアとアルトリウス、そしてあんたは殺すわ。そして、坊やは『螺旋教団オロバス』が連れて行く。教主が求めている子だからね」


 戦いが始まろうとしている。

 さて、僕もやるしかない。覚悟を決めなくてはな。

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