そこはゲームの中でした
僕は家に帰り、当選したメールから、ゲームソフトを購入して、ダウンロードする方法を確認する。
うん。ソフトを購入するお金は、今まで貯めてきたポイントで交換が出来る。
ソフトはダウンロードするだけで良いみたいだ。
ばんちゃんとしんちゃんはダウンロードしてからデバイスを持って家に来るって言ってた。
デバイスは眼鏡みたいなタイプ。昔むかしにVRゲームが現れた頃の名残で、眼鏡のように装着する物が主流になったんだとか。
しんちゃんのデバイスは、孫悟空のワッカみたいなタイプ。ちょっと変わった奴なんだけど、最新モデル。
ばんちゃんのは僕と同じタイプだったと思う。
フルダイブをして体が動かす事で怪我をしたとか昔はあったみたいだけど、今じゃそんな事は起こらない。
眠っている状態に近いらしい。良く分からないけど、そういう物なんだと思うしかない。
ゲームのダウンロードが終わり、2人が来るのを待つ間に、情報収集をしておこう。
ホームページを見ると、異世界へ行って、もう一つの人生を楽しもう。
としか書いていない。
ただ、用意されている職業は開示されていた。
されていたけどさ、多すぎるでしょ?
なに、このニートって?なんなの?
調べると、無職の人。ニートなんて選ぶ人いないだろ!と突っ込んでしまった。下手に格好良く聞こえるから、凄い職業かと勘違いしたよ。
職業を簡単に分けると、戦闘職、生産職、魔法職の3つになると思ってたら違ったよ。
ピエロなんてどうすんの?なんなの?分からないよ。
え?ピアニスト?なにをするの?
ちょっと良くわからなくなっちゃったよ。ネタ職ってやつなのかな?
システムが分からない、謎すぎるよ。
軽く混乱していると、2人がやってきた。
「しん、情報あったか?」
ばんちゃんは当たり前の事のように聞いてくる。
「しんちゃん、何か役に立ちそうな情報あったかな?」
しんちゃんも当たり前に聞いてくる。
2人とも僕を何だと思ってんだよ。
「調べてみたんだけど、全く情報がなかったよ。ベータテストの情報でもあれば良かったんだけど、ブロックされてるみたいで開けなかった。
あと、職業は滅茶苦茶多いから、悩むと思うよ。
で、ニートって職業は絶対に選んじゃ駄目だから。」
僕がやる気なさげに言う。
「お、サンキュ。ニートな。なんなんだ?このニートって強そうだけど。」
ばんちゃんもそう思ったんだね。
「無職なんだって。昔、無職と呼ぶのがいけないからって、ニートって呼ぶようになったんだって。馬鹿みたいだよね。
無職は無職だよね。格好つけても変わらないってのに。」
はぁ、とため息をつきながら答える
「しんちゃん、ため息つくと、幸せが逃げていくよ?」
しんちゃん。僕は既に幸せじゃないんだよ。現在進行系で不幸になっていってるんだって。
「ま、情報も無かったみたいだし、さっさとキャラメイクして、ゲーム始めようぜ。」
そして、僕はこのゲームが滅茶苦茶だと思い知らされる事になるんだ。
ログインすると、そこには20人くらいの人が居た。
ざわざわと色んなところで話をしているようだ。
突然、
「召喚に応じてくれた者たちよ。この世界を救うためにありがとう!
これから、皆には適職を見定める、こちらの魔道具に手を置いてもらう。」
1人ずつ行うので、並んでほしいと、1列に並ばされる。気づけば、鎧を着た兵士が僕達を囲んでいて、並ばされている。
昔のアニメやなんかで、異世界召喚されたらって奴でこんなのがあったと思う。とか、凝ってるな。とか、これ、職業ランダムに決まるんじゃないか?
等聞こえてくる。
「ねぇ、なにかおかしくない?職業は自分で選べないの?」
しんちゃんが呟くが、それよりも気になる事がある。
「あの、しんちゃん?キャラメイクすらないかもしれないよ?だって、しんちゃんも、ばんちゃんも、現実マンマだよ?僕もそうでしょ?」
しんちゃんとばんちゃんが、あっと言う顔をする。
流石に身バレに繋がるからキャラメイクは有ると信じたいけど・・・
そんな事を言っていると最初の人が魔道具に手を近づける。魔道具から青い光が放たれる。これ事前に知らないと目がやられるんじゃ・・・、あ、やっぱり・・・
目が~っと目を抑えてうずくまってしまってる。
「いや、すまんすまん。こんなに光るとは思っても無くてな。さすがは召喚者と行った所かの。」
全然悪いと思ってないよね、あれ。褒めてはいるみたいだけど・・・
目が大丈夫になったようで、初めの人は
「目が死ぬかと思った・・・で、職業はどうやって決めればいいんだ?」
選べると思っているからの言葉だよね、これ。
「ん、そなたは軽剣士となったようじゃな。」
はい。来ました。完全ランダムだった。
「え、俺は魔法使いになりたいんだが?なんで勝手に職が決まってんだよ!くそ!希望の職が出るまでマラソンかよ!」
まぁそうなるよね。運営何考えてんだろ?こんなの普通じゃないよ。
「そなた、召喚されたのに帰れると思っておるのか?帰るためには、この世界の秘密を解き明かしていかなければならんのじゃぞ?」
これってつまり、キャラを消去することが出来ないと言う、悪夢のシステムなんじゃ・・・
「五月蠅い。俺は魔法使いになるんだよ。」
初めの人がログアウトして行っちゃた。そうなるよ、希望の職業につけなきゃ楽しくないだろうし。迷っている人はランダムで決まるのもいいかもしれないけど。
「次の方、魔道具に手をかざして下され。目を守る事も忘れないようにして下され。」
次の人は、何かブツブツ言いながら魔道具に近づき、
「あの、これって本当に希望する職業にはつけないんですか?」
「魔道具に手をかざさずに冒険に出る事も出来ますが、後からつける一次職業なんてありませんぞ?」
ログアウトして行った人が戻ってきて、消せない。このままやるしかない・・・泣きそうに言っていたので、僕はその人に、そっと、
「一次職業がないと、転職は出来ないシステムみたいですよ。」さっき魔道具ジジが言っていたことを伝えてあげる。初めの人は、魔法剣士になれる可能性が・・・とブツブツ言いだし、にこやかに、ありがとな!っていい笑顔でお礼を言われたよ。あ、後ろで光ったな。あのお姉さんも諦めたんだろうな
「おぉ、これは珍しい職が出ましたぞ。巫女ですな。」
え?巫女って珍しいの?そう思ったら
「神が居なくなり久しいこの時に巫女とは。神がまたこの地にみえられたという事か。」
は?それって無理ゲーなんじゃ・・・ やたらと難易度高くない?このゲーム・・・
次々に職業が決められていく。15人が終わり、終わった人たちが集まって何やら話しているけど、こちらには聞こえない。
あ、しんちゃんの番だ。何になるのかな。しんちゃんが手を魔道具にかざすと、ピカッと小さく光る。これ、駄目な奴なんじゃ?
「おぉ、これまた珍しい職じゃの。召喚術師じゃな。」
魔道具の光が強い職と弱い職を見てきたから、不安な感じがするな。次は、ばんちゃん。魔道具に手をかざすと、凄い光が。目が死ぬ。こんなに離れているのに
「ふむ。これはまたなんとも・・・。重戦士じゃな。」
え、あんなに光ったのに、魔道具ジジは残念な物を見る目でばんちゃんを見てる。でも、なんか、ばんちゃんらしい職業だなぁ。
僕の番だ。魔道具に手をかざす。光らない・・・なんで?手を離し、もう一度手をかざすけど光らない。何度もやってると
「これ、遊ぶでない。お主の職は、テイマーじゃ。こういってはなんじゃがな、お主は町から出ないようにした方が良いじゃろう。」
え、何、今なんて言ったの?ゲームなのに町から出るなって言われたの?ヤッター!これでこのゲームを続けなくても良いぞ!
「なぁ、しん。俺達って他の人と違ってパーティー組んでいくんだから、町から出れないなんてないからな。心配すんな。俺達が一緒だぜ!」
暑苦しいよばんちゃん・・・
「そうよ。私が召喚師で、しんちゃんがテイマーって事は、他の人たちと冒険しない私たちには丁度いいんじゃないかな?」
その超プラス思考は僕のHPをがんがん削るからやめて・・・
「無理はしないからね。駄目なら町から出ないで平和に過ごすよ。町の中にも仕事はあるだろうし・・・」
逃げ口上を打っても、この二人には通じないようで、心配すんな!一緒だからね!だって・・・
最後の人が職業を決められたと思ったら
「では、諸君らには、この世界について教えようと思うが、聞きたい者、聞かなくても自分で調べるという者に分かれてくれ。」
騎士風のナイスミドルから声がかかる
こんな意味不明なゲームだ。チュートリアルは必須でしょ。みんな思っている事は同じようで、世界の事を聞かないなんて人はいなかったよ。
僕達は、どこか教室を思わせる場所へやってきた。
「ここは、兵士が座学を行うための場所だ。ここを使う者もいるだろうから覚えておくといい。」
ニヤリと笑うナイスミドル。きっとお偉いさんなんだろうな。
そして僕達はこの世界について教えてもらったんだ。
この世界には大小の国々があり、少し前までは戦争や紛争が多かったけど、今は比較的平和になっているって。人同士はだけど。
魔物や危険な肉食獣なんかが数を増やしていて、人と争っている暇がないんだとか。いったいどんだけ魔物が沸いているんだか。
さらに、魔物はテリトリーを構築するようで、いくつもの村や町、大都市が魔物のテリトリーと化してしまっているんだとか。
ここまで聞いて、うん王道だとおもったね。だって、人類Vs魔物って事だもんね。
で、僕達にしてもらいたいことってのは、魔物の討伐、出来るならテリトリーの解体、魔物の脅威度が下がるといいな。くらいの事だった。
えっと、キャラメイキングは無いのかな?そう思っていると
「君たちはこの地に召喚された事で、召喚前の姿をこの城の中では保てるが、城から出ると消滅してしまう恐れがある。そこで、この魔道具をつけてくれ。別人になるかもしれないが、消滅するよりはいいだろう?名前も、変えてほしい。なぜか?名は体をなす。真名は伏せておくことで真実の体が守られるからだ。」
おぉ。これは本当に自然にキャラメイキングに行けたね。職業が決まっている事が逆にキャラメイキングに生かされる事になるなんて・・・運営やるな!多分みんな直ぐに転職するつもりだったんだろうけど、このキャラメイキングで職業にも愛着が湧くように仕向けてきてるな。とか聞こえてくる。
え、そんな感じなの?あれかな。ゲームの愚痴の始まりは沼への第一歩的な?
皆さん、なんだかんだと楽しそうにキャラメイキングにいそしんでいるようなので、僕もキャラメイキングしてくるよ。
ばんちゃん、しんちゃんも早速始めてるみたいだしね。
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