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そこはゲームの中でした

 抽選が当たる可能性なんて、天文学的な数字になるだろうと、しんは思っていた。だって、3人が抽選に当たる確率ってどんだけだ?って思っても仕方の無いことだから。


 僕だけでも外れないかなという期待を胸に、抽選当日を迎える。


 抽選の当日、しんは何時ものようにネットサーフィンを楽しんでいた。

 結果の通知はメールで来る事になっていたが、しんはメールの受信を完全に無視していたのだ。完全に現実逃避を決め込んでいた。

 学校で待ち受ける、2人の顔など想像もせずにいた。


「しんちゃん、結果はどうだった?」

 幼馴染の女の子が聞いてくる。

「しん、結果はよ?」

 幼馴染の男が聞いてくる。



「見てないよ。だって、3人揃って当たる確率って天文学的な数字だよ?

 現実なんて厳しいだけじゃないか!」

 僕は見てもいないし、2人が当たっているなんて、全く考えていない。外れる確率のほうが、圧倒的に高いんだと思っていたから。


「「一緒に見る事にしようか?」」


 2人のハーモーニーを聴きながら


「わかった。じゃあ、3人一緒にメールを開こうよ。僕のBOXにメールなんか届いてないって、思うけどね。」

 しんが言う。


 2人はニコニコして自分達のスマートフォンの端末を出して、しんが端末を出すのを待つ。


 そして、結果は無情なものだった。3人ともに抽選をくぐり抜けて当選。

 しんの顔から表情が消える。元々表情なんか表に出すタイプではないが、この結果を受け止められない、しんの顔は完全に凍っていた。


「よっしゃ、当選したぜ。」

 ばんちゃんの声が教室中に響く

「運命ってあるわよね。私達3人何時だって一緒だもの。結果は分かってたわ。」

 しんちゃんの声が高らかに教室に響く。


 え?何が起こってる?3人ともに当選?え?待って、もう1回確認しよう。

 無情にもそこには、当選の文字がしっかりと刻まれていた。


 厳選なる抽選の結果、異世界への扉を開く権利を獲得しました。

 

 この文字が何を意味するかを理解するまでに時間を要した。

 なんで、僕なんかが?え、3人とも当選?異世界がなに?完全に混乱して周りの反応すら見えちゃいない。

 

 2人が教室の中で、抽選にくぐり抜けた勝ち組だと宣っている。

 もうやめてほしい。本当に辞めてって。僕は目立ちたくないんだ。


「やっぱ、俺たちは神に選ばれし勇者なんだよ!」

 ばんちゃんがアホな事を言ってる

「私達三人の絆は永遠に不滅なのよ!」

 しんちゃんがアホな事を言ってる。

 クラスメイトの反応はというと、3人の絆は永遠だって事は抜きにして、抽選に当たったことを羨ましいとか、私もあたった、俺は外れたと悲鳴に近い狂乱が教室を包んでいた。


「あ、僕の権利を誰かに譲ってもいいかなぁ、なんて。」

 僕が小声で言うと

「しん、それは敗者にかけていい言葉じゃないぞ。」

「しんちゃん、それは駄目だよ?私たちは一緒に異世界に行くんだから。」

 と、2人に速攻で拒否&ゲームの開始を告げられていた。

 

 僕は、異世界になんて行くつもりもないし、楽しみたいとも思っていないんだ!と心のなかで叫びを上げる。


 ただ、抽選に当たらなかったクラスメイト達の顔を見ると、当たったのにやらないのか?という圧が凄くて


「ばんちゃん、しんちゃん、いつから行くの?」

と、間抜けな事を聞くことしか出来なかった。


「学校が終わったら、しんの家に行くからよ。」

「しんちゃんのお家にいくね?」


 はい。僕の逃げ道はどこにも無い。


 放課後になるまで僕はクラスメイトから良かったな!と声をかけられ続ける事になった。

 僕の平穏を返してほしい

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