第7話 異世界探偵マキトの事件簿:魔王初夜事件
こんにちは、ヒカリです。
今日はちょっと趣向を変えて……推理回です。
異世界生活二日目の朝に発覚した、最大級の“事件”とは――?
探偵マキトの語りでお送りします。
事件は、異世界生活二日目の朝に発覚した。
探偵クドウ・マキト――職業、元サラリーマン、魔王の婚約者(予定)――が目を覚ましたとき、そこはすでに事件現場だった。
前夜、私はランプの明かりを消し、魔王と背中合わせで眠りについた……はずだった。
そして朝――脳にまず突き刺さった事実は、こうだ。
第一の謎。
私は服を着ていなかった。
……お分かりいただけただろうか。
私は異世界に来てから、まだ二日目である。冒険もしていなければ、畑を耕したことすらない。
それなのに、なぜ裸。どこで脱いだ。誰が脱がせた。これが第一の謎だ。
そして、第二の謎。
隣に魔王が寝ていた。
いや、同じ部屋で寝ているのは昨日からの話だし、ベッドも一つしかない。
だが――布団の中の温もりがやけに近い。探偵の勘が告げる。「これはただ事ではない」と。
ここまでの時点で、読者諸君の中には「おめでとう!」などと軽率に祝辞を述べたくなる者もいるだろう。
だが待ってほしい。事件の全容はまだ明らかになっていない。
私は慎重に、そして紳士的に、魔王に掛かっている布団の端をそっと持ち上げた。
そう、これは調査のためであって、決してやましい気持ちではない――
暗がりの中から現れたのは、真っ白で、滑らかな――
「あ、それ、私ですよ」
……耳元から声がした瞬間、心臓が飛び出すかと思った。
「え? 誰?」
「リスです。マキトさん、あまりにもヘタレだったんで、操っちゃいました」
……容疑者、発見。
「リスううううあああ! てめえええ!」
「サービスです!」
決めポーズを取る容疑者。悪びれるどころか、誇らしげである。
そのとき――新たな証人が目を覚ました。
魔王だ。
彼女はしばし私を見つめ――頬を染め、視線を逸らす。
「……昨日のことは……その……」
やめろ、その意味深な前置きは。おじさんの心臓が持たん。
これは本当に事件なのか? それとも……ただの、始まりなのか?
異世界で初めての夜を明かし、二日目の朝――
私はすでに、この世界最大級の難事件に巻き込まれている。
『魔王初夜事件』、捜査開始だ。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
いやー……今回は完全に作者も読者も探偵気分でしたね。
服がない、距離が近い、魔王が照れる――証拠が揃いすぎて逆に混乱するやつです。
次回、この“魔王初夜事件”は新たな展開を迎えるのか、それとも……?
引き続きお楽しみに!