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僕たち結婚しました!魔王と始める異世界生活  作者: ヒカリ
第1章 馴れ初めは、魔の森でばったり会ったことでした!
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間話  運命の出会い?

魔王視点の間話を入れてました。ぜひ読んでいってください!

高貴な魔族の血をひいて生まれた私にとって、魔王に就任するのは決められた運命のようなものだった。


魔族が墜とした人間の街に言われるままに赴き、気づけば城に魔王として就任していた。

ひれ伏す配下、羨望と恐れのまなざしで私を見つめる民たち……悪くない。


思い返せば、私は調子に乗っていたのだと思う。

高貴な血を引いているだけ、それなのに、全能感に酔いしれていた。


転機が訪れたのは、“勇者”という存在が人間の中に現れた、という報告を受けてからだ。

勇者が魔族の支配する地域を次々と解放しているらしい。そろそろここにもやってくる、と配下の魔族が青い顔をして言っていた。


何のことはない。強い魔力を持って生まれた私は、逆らう者など消し飛ばせばいいと気にも留めていなかった。


しかし――勇者は強かった。

私を遥かに凌ぐ魔力を持ち、立ち向かおうとした配下たちは、一瞬で灰と化した。

私には、抗う術など残されていなかった。


それでも、私は魔王として勇者と戦った。


しかし、かなわぬと悟った私は――逃げ出した。

好機が訪れたのだ。戦いの最中、私の仮面が外れた瞬間、私の顔を見た勇者の目が見開かれ、動きを止めた。

本当は、その時に攻撃すべきだったのかもしれない――それなのに、魔力も体力も尽きかけていた私は、迷わず逃走を選択したのだ。


魔王城の下に広がる森を駆けながら、悔しさと後悔に涙した。

こんな自分に仕えてくれた配下を置き去りにし、責任も何もかも投げ出して、自分はただ逃げている。

その事実が、胸が焼けるような痛みを与えていた。


胸の奥に黒い炎が広がり、“この世界など滅んでしまえ”と本気で願った。


――そして、そこに、ひょっこりとあの男が現れたのだ。


私の前に人間の男が現れた時、勇者の手の者だと思った。

勇者との戦いで消耗しきっていた私は、出涸らしのように消耗しきっていた。人間の男にすら、簡単に捻られてしまうだろう。

私は死を覚悟した。


しかし、男は助けてくれるというのだ。

この私を。


調子に乗り、極悪非道な行いを繰り返してきた、この私を。


男は、マキトと名乗った。

それは、私にとって特別な名前となった。


「結婚しよう」

おどけながら言うマキトの言葉には、不思議なやさしさがあった。

私がすべてに絶望していることに気づいたのかもしれない。


マキトは、私の手を引いて、逃げてくれた。

ドワーフの国に入る際の血の契りも切り抜けた。


なんと、この私と契りを結んで。


契りを交わした後のマキトは、本当に男らしかった。

ドワーフの用意した盃を飲み干すと、酒に酔ったのか、胸が熱くなるような不思議な気分になった。


よく見ると、マキトは、魅力的な男だった。

「お前はおれが守る」

そう言ってくれた。

そんな言葉をかけてもらえたのは、生まれて初めてだった。


そして私たちは口づけを交わした。

その時、私は決心したのだ。


魔王としても魔族としても、ただ流れに任せて生きてきた自分。

今度は、自分の選択で、この男を選ぼう。

そして、この男にかけてみよう――と。


……たぶん、酒の勢いもあったけれど。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

本編は、コメディ調ですが、今回はシリアス寄りで描写しています。


ちょっとネタバレになってしまうかも知れませんが、この話には複数の伏線も入れてみました。

今後、コメディの中で、少しずつ伏線を回収していきますので、引き続き楽しんでいただければ幸いです。

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