第5話 魔王とドワーフと勇者と俺、カオスな四角関係始めました
こんにちは、ヒカリです。
今回は、まさかの人物が登場して、物語の空気が一変します。……いや、空気どころか、場の温度も騒がしさも全部MAXです。
詳細は読んでのお楽しみ! どうぞ最後までお付き合いください。
洞窟の広間は、すでに宴会場と化していた。
壁沿いには巨大な樽、樽、樽。中央には肉の山と、謎の燻製料理。
ドワーフたちが「酒の妖精さまー!」と叫びながら俺を担ぎ上げる。
「お、おろせ! おろせって! 俺、人間だぞ!? 妖精じゃねえ!」
「なぁに言ってやがる、妖精様は酒を無限に飲み干す奇跡の存在だろうが!」
いや、それリスだし! 俺本人じゃないし!ねえ、どうすればいい?ねえ?
横で魔王が腕を組み、落ち着かない様子でこちらを見ている。
周囲の視線は完全に「新婦」扱いだ。
「……こんな茶番、早く終わらせろ」
「いや、お前、顔がほんのり赤いけど」
「……酒のせいだ」
魔王のデレが続いてる。ツンが懐かしい。
俺の耳元で、リスが囁く。
「マキトさん、このあと“夫婦の契り酒”っていうイベントがありますよ」
「なにそれ!?」
「はい。二人で同じ盃から酒を飲み干すやつです。あと、その流れでキスも」
「お前、それまた既成事実狙いだろ!」
周囲のドワーフたちが「キス! キス!」と合唱し始める。
魔王は目を見開き、耳まで真っ赤にしてそっぽを向く。
ドワーフたちが俺の背中をぐいぐい押してくる。
リスは俺の肩に乗って、煽ってくる。
「ほらマキトさん! このまま行っちゃいましょう!」
「……お前、絶対楽しんでるだろ……」
魔王は耳まで真っ赤に染めながらも、こちらをずっと見つめながら、じっとしている。
え?……これ、もしかしなくても本当にいける流れじゃない?いっちゃっていい?もう、いっちゃっていいよね?オジサンやっちゃうよ?いいよね?そうだよね?みんな?ね?
顔があと数センチまで近づいた――その瞬間。
「ちょっと待てーい!!!」
宴会場の扉がバンッと開いた。
そこに立っていたのは――誰?
松明の光を背に、真剣な眼差しでこちらを見つめている。
「……魔王! 俺は、お前が好きだ!」
……え? 今、なんて?っていうか誰?
場が一瞬、静まり返った。
そいつは息を切らせながら、一歩、また一歩と近づいてくる。
「単独で……ここまで来た。無理をしてでも会いたかった」
魔王は目を見開いている。
「……勇者…」
え?あいつ、勇者なの?
それよりもまず、
「……どうやって入ってきたんだ?」
勇者は迷いなく右手を上げ、隣に立つ人物を指差した。
そこには――樽を片手に、にこやかに笑う爽やかダンディーなドワーフがいた。勇者……BLフラグ立ってるぞ!
「この方と、“兄弟の契り”を結んだ」
「……兄弟?」
「ああ。俺たちはもう兄弟だ。そして……永遠のパートナーでもある。一生添い遂げるつもりだ」
ドワーフが胸を張って宣言する。
だめだ。情報量が多すぎて、脳の処理が追いつかない。
リスが俺の肩にひょこんと顔を出し、小声で言った。
「マキトさん、カオス度が振り切ってますけど……どうします?」
「どうもしねぇよ!!!」
ドワーフたちは「兄弟! 兄弟! 夫婦!」とコールを始め、
カオスはさらに加速していくのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
はい、予想外の乱入者と、さらに予想外すぎる人間関係が爆誕しました。
今回のタイトル通り、四角関係(?)はどうなるのか……。
次回は、このカオスな関係のまま宴が進行していきます。
果たして修羅場になるのか、それとも新たな称号が増えるだけなのか……お楽しみに!