第3話 ブラッディ♬プロポーズ
第3話は、洞窟の門番ドワーフとの遭遇回です。
予定通りの入国儀式……になるはずが、なぜか場がプロポーズ会場に。
そろそろタイトル通りの結婚展開が動き出す……かもしれません。
「長すぎるぞ!こんなに歩くんなら言ってくれよ!」
森を抜け、洞窟を歩き……ドワーフの国は、俺の感覚では遥か先で、タクシーなら万単位がとられる距離だった。
俺の足はガクガク。
魔王も魔力と体力を使い果たした後の強行軍は辛かったのか、額には汗が滲んでいるーそれでも表情に出さないのは流石だ。
岩壁に手をつきながら、ようやくたどり着いた。
洞窟の奥は思ったより広く、奥の壁には大きな鉄の門がそびえていた。
門の前には、樽を枕に居眠りしているドワーフのおっさんが一人。奥には門番が待機している建物があった。
酒くさい……いや、芳醇な香りといったほうが正しいかもしれない。
「客か。珍しいな。おめーら、この国に用か?」
おっさんはむくりと起き上がり、目をこすりながら笑った。
なんかノリが、居酒屋の常連の親父と同じじゃね?
「用というか……ここ通らないと勇者に殺されそうでして」
「勇者?そっちにいるのは、魔族か。ドワーフは、人間と魔族のいざこざには興味ねぇ……ドワーフに火の粉がかかったら捻り潰すだけだ。
まあ入るには構わねぇぞ。“血の杯の儀”をするのならな」
「それ、どんなの?」
「お互いの酒に血を垂らして、それを交換して飲み干すんだ。血の契りってやつだな」
「ドワーフとやらないとダメなの?」
「おれの前でやってくれたらいいぜ。最近、文化知らずに入国して問題ばっか起こす奴が増えてよ。
だから、ちゃんと契りを結んで“兄弟”になってから通すことにしたのさ。
これ聞いて、やらなかったら、どうなるか分かってるな?」
凄みをきかしてくる。居酒屋の親父より怖いかも。
「へえ……契り結んだら、どうなんの?」
「そりゃ兄弟同然よ。俺と契ったら、この国にいる間、ずっと面倒見てやるぜ」
また頭の中で囁きが聞こえる気がする。
契り…そうだ!
いいこと思いついたぞ!!
「……おれ、こいつとやるわ」
「は?」
「魔王と」
「はあああああ!?」
魔王が目を見開いた。
「だって、おれ、チートないんだぞ。40のおっさんだぞ。死んじゃうぞ。それでもいいのか? 血の契り、ちょうどいいじゃん! 結婚しよ、わたしたち!」」
「お前、それがプロポーズのセリフか? それに知ってるか? 私は魔王だぞ?」
「いいじゃん。魔王で。おれ、2回目だから、今度こそ幸せにしてやるよ」
「それが一番気に入らん!!」
魔王はぷいと顔をそむける。
けれど、その頬がほんのり赤くなっているのを、俺は見逃さなかった。
「ナイス判断です!マキトさん!いい感じですよー!」
焚き付けてくるリス…こいつ、絶対に面白がってやがる。
「……何をにやけている、人間」
「いや、何でも。照れてんのかなって」
「照れてなどおらん!」
声を張り上げながらも、耳まで真っ赤だ。
この人(魔族だけど)、ツンツンしてるくせに可愛いところあるな……。
ツンデレじゃん。クッコロでツンデレとか、ご褒美属性じゃん。
いいだろ? みんな。おれ、コイツと結婚しちゃう。
ドワーフのおっさんは腹を抱えて笑い、
「おめーら面白ぇな! いいぞ、やっちまえ!」と樽から酒を注ぎ始めた。
「おーい!こいつらが血の契りやるってよ!」
門番が声を上げると、建物の影からぞろぞろと酒樽を担いだドワーフたちが現れた。最初から宴の準備が整っていたみたいに。
そして、あれよあれよという間に、酒宴の準備を進めるドワーフたち。
これ……ドワーフがやばいんじゃなくて、何かと飲み会にしようとする異様な文化が、他の種族に受け入れられなかっただけじゃない?
って気がしてきた。
横を見ると、少し顔を赤らめて座っている魔王がいる。
コイツ……ピュアじゃん。かわいいじゃん。オジサン嬉しい。
「それでは、血の契りを結んでもらう」
ドワーフの合図で、俺と魔王は互いに酒を指定し、指を少しだけ切って杯に血を垂らす。
交換された杯を手に取り、見つめ合う。
「「乾杯」」
一気に酒を飲み干した――その瞬間。
ぐらりと視界が揺れる。
まるでブラックアウトするように、世界が真っ黒に沈んでいく。
え? なに? おれ、死ぬの?
読んでいただきありがとうございます!
魔王のツンデレが少しだけ顔を出しました。
次回はいよいよ「血の杯の儀」本番……のはずが、いきなりブラックアウト!?
酒のせいか、儀式のせいか、それとも別の何かか――お楽しみに!