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Ⅵ幹部撃破

「これで冒険も終わりかぁ…」

ボソッとサイカが残念そうに呟く。


「どうしたんだ?」

疑問を口にすると同時、

どおおおおん

と轟音が鳴り響き、山から鳥が大量に飛び立っていた。

「なんスか???」


「あー、最近よくあるぞ。山の方での爆発音。

眠ってる時によく起こされるから、たまったもんじゃねぇぜ。」


「ちなみにあの一帯って、もしかして…」

「確かミカミって呼ばれてたわよ。」


「ですよね…急いだほうが良さそうだな。」

「そうね。ミカミの人たちが心配だわ。」

「サイカ、すまん。村への報告は任せていいか?

僕たちは急ぎ、ミカミに行かないと。」

「え?なに?どうしたの?」


「今、ミカミには魔王軍幹部が侵攻してるらしいんだ。」

「「魔王軍幹部が!?」」


サイカとイオキが驚く。

公になっていない情報だし、驚くのも無理はない。


「僕たちは、その魔王軍の侵攻の妨害を王に命じられててね。」

「なるほど、さすが主人(あるじ)様!この人数で、軍の妨害とは!何か作戦があるのか?」

「あったんだけど、既に街に入られちゃったら、使えないからね。早めに向かいたいんだ。」


「え?私のせい…」


サイカが顔を青くしていた最後の言葉が小さく聞き取れなかったが、

魔王軍と聞いて怖くなったんだろう。


「だから、僕たちは先にミカミに向かう。

サイカ!君はこのことを村に知らせて…」


「だめ!私も一緒に行く!」


言葉を遮る様にサイカが叫ぶ。


「村に被害が出るかもしれないんだぞ!」

「知らせだけは伝えれる様にする!だから私も連れてって!」

「魔王軍との戦闘は避けられないんだぞ!?」

「私も戦力になるもん!」

「でも!」

「主人様。そいつそこそこ出来るから、戦力にはなると思うぞ。

それに、今ここで言い争っている時間より先に進んだほうが建設的だと思うが?」

「イオキ…」

「わかった。サイカ、移動しながら村に連絡は出来るか?」

「出来る!」

「じゃあ、ミカミに向けて、出発だ。」


========


途中、イオキの背中に乗っていくと言う案も出たが、空からだと目立ち、バレてしまうため、自らの足で進み、やっとの思いで鉱山の下の街「街の名前」へ到着した。


しかし、街は既に襲撃された後なのか、建物は所々壊れ、畑は荒らされ、魔族が堂々と闊歩していた。


「ひどい…!」


闊歩している魔族が街を荒らしているのを見て、思わず声を上げるアリス。

街の様子を見ていると何か違和感があった。


「でも、おかしいッスよ?

街の人が見つからないッス。」


カンナが言った通り、街の住人が誰一人として居なかった。


「まさか、魔族が街の人を襲って?」

「それにしちゃあ、街に血の匂いが全くしねぇ。」

「どこかで隠れてるのかな?」


アリス、イオキ、サイカと見つからない様にコソコソと会話を始めている。

どこかに隠れるにしても、この街の住人が全員隠れる場所というのはそうはない。


「うまく逃げていることを願おう。

各位、住人を見つけたら人命優先で動くこと。」


「「「「(おう)はい(ッス)」」」」


「まずは、情報収集だ。

魔族が何を狙っているのか。幹部はどこにいるのか、それぞれ情報を集めてくれ。」


「ちょっと待って!!

それなら、あそこの魔族たちが話してるよ!

私に任せて!」


個別行動をしようとした僕たちを止めるサイカ。

両手を魔族に向けて魔法を放つ。


「サイカ、何をやって…!」

「……うざん…やつ…」

サイカを制止しようと声をかける瞬間耳元に、

サイカが狙っている魔族の話し声が聞こえてくる。

「ずりぃよな。なんで俺らは街で人間探しなんだよ。」

「まぁ、しょうがねえだろ。俺らじゃ鉱物取るにも全部粉々にしちまうんじゃ、どうしようもねぇだろ?」

「だけどよー。」

「それに、リバストン様から街の物は好きにして良いって言われただろ?こんな簡単に金品が手に入るんだ、役得だろうよ。」

倒壊した家の瓦礫を退けながら金品を漁っている魔族たち。

「人間がどこにもいねぇじゃねぇか。

俺は人間の悲鳴が聞きたかったのに、どこかに隠れてねぇかなぁ…」

「俺たちがここにきた時には、もぬけの殻だったしなぁ…隠れてんのか、逃げ出したのか……

まぁ、どっちでも良いか。次、あっちいってみようぜ!」


距離が遠くなったのかサイカの魔法が切れたのか、耳元で会話している魔族の声が小さくなっていった。


「すごいなサイカ!」

「このくらいなら任せなさい!」


「よし。」

そうやって情報を整理して、それぞれの役割を分担するため、改めて、パーティみんなに顔を向ける。

「どうやらここの鉱山で採掘できる鉱物が目当てのようだ。」

魔族が鉱物をなんのために集めているかはわからないが、街に人がおらず、街中に魔族が闊歩しているんだ。鉱山が輸出できないのもわかる。


「前の轟音も気になる。鉱山の魔族の制圧組と魔王軍幹部の討伐組とで別れよう。」


=========


幹部の居場所がわからず、まだ情報収集が必要なため、幹部捜索に機動力重視で、僕とサイカ。

高山の制圧には、破壊力が高いイオキとカンナと冷静な判断ができるアリスにお願いした。

危険な状況になったら知らせられるように魔道具も渡しておいた。

魔王軍幹部に勝てるとは思って居ない。

どうにか時間を稼いで、その間に鉱山制圧、

幹部には撤退してもらう作戦だ。

まずは、幹部の居場所を確認しないと…


「サイカ、リバストンについて喋っている魔族がいないかわかるか?」


まずは街に徘徊している魔族にあたってみる。


「あっち!あっちから聞こえるよ!」


サイカの案内に従い、駆け抜けると、そこには先ほど金品を漁っていた2人組の魔族がいた。


「リバストン様も何を考えているかわかんねぇよな…」

「がぁ!」

「どうした!?」

魔族が振り向くと、もう一体の魔族がやられている。

生き残っている魔族の首元に霖朧を突きつける。

霖朧には不気味なオーラが纏っている。


「振り返らずそのまま、質問に答えろ。」

「ひっ!」

「リバストンの居場所は?」

「あ、あそこだ。」

鉱山とは反対側の場所を指差す魔族。

「どんな建物だ?」

「この街で1番高い建物……」

魔族の言葉を聞き終わる前に霖朧を引き抜き、魔族の首を落とす。


早速、見える1番高い建物に向かう。

やっと追いついたサイカが合流する。


「ユージって、敵には非情よね。

絶対に敵に回したくないわ。」

「分かり合えるなら、話から始めるんだけどね。」

「その武器からすっごく不気味なオーラ出てたけど、なんなのその武器。」

「霖朧と陽朧。色々と試してみたんだけど、陽隴は炎、風、光の属性が通りやすくて、霖朧が水、土、闇の属性が通りやすい性質でね。他にも色々と面白いこともできたんだ。」

「へ〜、って、しれっと全属性の話してるけど、あなた、全属性なの!?」


サイカが驚くと同時に、胸の魔道具が赤く光り輝いた。

アリスに渡した危険を知らせる魔道具だった。

すぐに踵を返し、鉱山の方に向かう。


「サイカ!追いつかなかったら、後から来てくれ!僕は先に行く!!」


そう言いながら、サイカを置いていきながら、アリスたちの助けに向かう。


=========


鉱山の中に入ると、そこにはイオキ、カイナ、アリスがボロボロになりながら、魔族が振り上げた武器の攻撃に巻き込まれるところだった。


(くっ、間に合え!)


振り下ろされる攻撃目掛け、攻撃を繰り出す。

陽朧には風属性、霖朧には土属性を纏い、切れ味を最大にした状態で切り掛かる。


ザシュッ


「っ!?」


魔族の腕が切り離され、魔族が怯む。

アリスたちの前に庇うようにして、間に入る。

何故か周囲を囲んでいる少人数の魔族がたじろいでいる。


まずは、この状況を打開しないと。

再度、魔族に切り掛かり、胴体を真っ二つに切り裂く。


「ぐああああああぁ」


魔族が倒され、周りにどよめきがおこる。


「ユージさん。ごめん。失敗しちゃった。」

そういうアリスであったが、この場での魔族はほとんど倒され、残りの魔族も少しなのと、何故かたじろいて、ほぼ制圧は完了していた。


「いや、よくやってくれた。あとは、任せてくれ。」


キッと魔族たちを睨みつけると、その場にいた魔族は、恐ろしいものを見たかのように逃げていった。


魔族を追うより、今は、仲間たちの治療を最優先した。

前衛のイオキ、カンナと治療していき、最後にアリスに回復魔法をかける。

その間に、サイカも追いつき合流した。


「ありがとうございます。助かりました。」

「アリスたちも鉱山の制圧お疲れ様。これで作戦の第一段階は完了だ。あとはリバストンだ。居場所がわかった。みんなの回復が終わったら、向かおうと思う。そのまま鉱山の防衛に回ってくれるか?」


「え!?リバストンなら、今、ユージさんが…」

「リバストンがここにいたのか?どこに?もしかして、さっき逃げた中に???」

「え……」

「ははは、さすが主人様。まさか知らずに倒してしまうなんてな!」

「流石、ユージさんッス…」


ん?どういうこと?倒した?俺が!?


「さっき、ユージさんが倒した魔族がリバストンです。」


そう言いつつ、先ほど切り裂いた魔族を指差すアリス。

あのちょっと固かった魔族がリバストン?


「私たちの攻撃が全然効かなかったのに…

あんな簡単に倒してしまうなんて…

まだまだ私たちが教わることは多そうですね。」


そう少し落ち込んでいるアリスを助け起こす。

魔王軍幹部を倒したという実感は湧かなかったが、まだ、街にいるだろう残党の処理に向かう。


=========


残党の処理も終わり、ミカミから魔族がいなくなったのを確認。

報告のため、王都に戻ることを決める。


「依頼の達成のために、僕たちは王都に戻る。

イオキはそこで一緒に冒険者登録とパーティの登録をするから、一緒に来てくれ。」

「おうよ。」

「…サイカはここでお別れかな。」


ミナミの森の妖精の村近くに差し掛かったところで、話題にあげる。


「……」


何故か黙ってしまうサイカ。


「……ヤダ。」

小声で、聞き取りづらい声を出すサイカ。


「ヤダヤダヤダ!小さい頃から冒険に憧れてたんだ!森に来た冒険者達の話を盗み聞いては憧れた。

今日のちょっと危険な冒険も楽しかったの!

でも、これで終わっちゃうのは嫌なの!

お願い!私もあなた達と一緒に連れてって!」


サイカの熱い思いに、自分の過去と重なる。


「いいよ。一緒に行こうか。」


パァッと表情が明るくなるサイカ。

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