Ⅴドラゴン
「うん。合格!私たち妖精の助けになる事を許可するわ!」
「「「……」」」
「何よ!私たち妖精が困っているのよ!せっかく助けさせてあげるって言ってるのに、なんで返事も何もないのよ!」
「「「……」」」
「なんで無視するの!?私たち本当に困ってるの…あなた達なら助けてくれると思ってたのに、お願い助けて…」
突然現れた妖精に呆気に取られているウチに、その妖精が涙を流し始めてしまった。
「すまない。予想外すぎて……」
魔王軍ではなく、可愛らしい妖精が突然出てきて、呆気に取られてしまった。
「それで、困っているっていうのは?」
「鉱山に急がなくていいんスか!?」
「急がなくちゃだけど、問題解決しないと出させてくれなさそうだしね。」
「ぐすっ、そうだぞ……
やっと出会えた助けてくれそうな人たちなんだ、
助けてくれるまで、森から出さないんだからな……」
ぐずりながらも、原因は自分だと主張してくる妖精。
「助けるから、詳しく聞かせてくれ。えーと、」
「サイカ。ほんとに助けてくれるの?」
「ああ、僕はユージ、助けた後は、森の出口まで、案内を頼めるかな?」
「わかった!付いて来て!」
助けることを了承すると顔をパァっと明るくさせるサイカ。
振り返り、出て来た池に飛び込む。
「え……」
思わず呆然としてしまう。
「何してるの?早く付いて来てよ!」
躊躇っていると池からサイカの声がしてくる。
池を覗くと深さ的に足首が浸かるかどうかの深さしかない。
「早く早く!お祖母様が待ってるの!
勢いよく飛び込みなさい!」
サイカに急かされるがままに池に飛び込む3人。
=======================
「冒険者の皆さん!歓迎しますぞよ!」
池に飛び込んだ後、全身びしょ濡れになることはなく、緑豊かな幻想的な場所に出た。
そのままサイカに案内で問題が起こっているという里に着いた。
「サイカよ。やっと連れてきたか!
さあさあさあ、冒険者の皆さんはこちらへ。」
そう言われるがまま、広場全体が見える席へと案内される。
「えっと、何か困り事があるのでは……?」
「まぁまぁまぁ。一先ずは歓迎させてください。
さぁ、皆のもの!歌えや!騒げや!今宵は宴じゃ!」
その言葉を境に広場に集まっていた他の妖精たちが騒ぎ始める。
豪華な食事や妖精の舞や歌を時間を忘れて堪能していた。
しばらくして、
宴の開始を宣言した妖精が改めて前に訪れた。
「いや〜、冒険者様。申し訳ありません。
村長のソラと申します。
村のもの達を安心させるためとは言え、まだ何も知らない方達に付き合わせてしまいまして…」
なるほど、一刻も早く村を安心させたかったのか。
でも、そこまで村長が急ぐってことは、かなりヤバい状況なんじゃ…
「僕たちまだ問題の詳細を聞いてないんですが、
そこまで危険な状態なんですか?」
「実は……」
=====================
「私たち妖精族に伝わる聖水ポーラ酒を作るのに、この森を抜けたところにある湖に生息する花の櫁が必要なのですが、そこに竜人族が住み着いたんですじゃ。」
その湖に向かう道中、ソラから聞いた話を思い出していた。
「住み着いた竜人族から、櫁をわたす代わりに、作ったポーラ酒を寄越せと」
「そうなんだよ!初めは少しずつだったんだけど、徐々に要求がエスカレートしててさ!もうあいつが飲む方が作るより多くなっちゃってんだ!」
ポーラ酒は妖精族にはなくてはならないものらしく、
作るのにも時間がかかるらしい。
何回か、竜人族に説得や戦闘を挑んだらしいのだが、結果は惨敗。死者は出なかったが、怪我人はかなり出たとのことだった。
そろそろポーラ酒が尽きそうなところでサイカが僕たちを連れてきたのだった。
「住み着いた竜人族の目的ってなんなんでしょうか?」
アリスがふと呟いた。
「僕が知っている竜人族は、一度気に入った場所からは相当なことがない限り、動かないはずなんだけど……
前の住処で何かあったのか、ただ単にポーラ酒がお気に召したのか…
まぁ、行ってみることに越したことはないね。」
========
「あそこ!あそこで眠ってるあいつ!!」
サイカが指を指したところには、湖の手前で横になっている女性の竜人族がいた。
緋色の長い髪で長身、出ているところは出ていて、頭には竜人族特有のツノが生えていて、神秘的で見惚れてしまいそうな女性だった。
「んあ?なんだ?妖精じゃねぇかどうした?
また櫁をとりにきたのか?」
こちらが近づいたことを気配で察知したのか、
目を閉じたまま、言葉を投げかける竜人族。
「ち、違うもんね!今回はあんたを懲らしめてもらう冒険者を連れてきたんだから!!」
「ほお…」
そう言いながら目を開き、起き上がる竜人族。
「その前に、何故竜人族のあなたが、この山を住処に?」
「はあ?そんなのあんたに関係あんのかよ!?」
すぐにでも戦闘を始めようとしていた竜人族は少々イラついた態度を取る。
「戦わないで済むなら、それで解決した方が良いので、もし何か理由があるなら話してもらえないですか?」
「俺を倒してから教えてやんよ!いいからかかってきな!!」
戦闘体制に入る竜人族。
周りに殺気を放つ。
気迫だけで周りの地面を破壊し、ものすごい勢いで一撃を与えようと拳を振りかぶる。
瞬間、いつもの調子で、竜人族の背後に周り、霖隴を振りかぶった。
=======
「ううぅん…はっ!いっつつ…」
目を覚ました竜人族は、ガバっと体を起こして、こちらを向く。
向いた先には、火を焚きながら、食事の用意をしていた。
「あ、気が付いた?」
起きた横にアリスが腰掛けていて、竜人族に話かける。
「負けた…俺が…?」
落ち込んでいるであろう竜人族に出来上がった料理を差し出す。
竜人族は何故か顔を真っ赤にして、僕から顔を背けてしまった。
「なんで俺を殺さなかった?
あんた達にとって、俺は邪魔なんだろ?」
「なんでって…
殺したら理由聞けないだろ?」
「理由?」
疑問に思った竜人族が顔をこちらに向ける。
「なんでここを住処に変えたかの理由。
生き死にだけが問題解決の手段じゃないからね。
話し合いで解決するなら、それに越したことはないだろ?」
「………」
「それで?どう言った理由でここに居座ってたんだ?」
徐々に顔を赤くしていく竜人族。
「……お、俺の嫁になってくれ!!」
「「「!?」」」
返答になっていない答えと突然の告白に全員が驚き、その場の時間が止まったような感覚になる。
「自分の夫婦を探して旅に出たんだ。
この湖にいたのは、ちょっとした休憩のつもりだったんだが、妖精達のポーラ酒が気に入っちまって、ちょっと長居しちまった。」
口早にこれまでの経緯を話す竜人族。
「番にするなら、自分より強いやつって決めてたんだ。
お前は俺を一撃で倒した。その強さに惚れた!
頼む!俺の嫁にしてくれ!」
「ちょっと、待ってくれ!
番にって、いくらなんでもいきなりすぎるって。
まだ名前も知らないのに…」
「俺は、イオキだ!これでいいか主人様!」
「主人様!?」
ちょっ、ちょっと、いきなり夫婦にって……
ま、まぁ、美人だし、悪い気はしないけど……
いや、まだ、お互いに何も知らないし…
そうだ!
「ひとまず、僕らのパーティに入って、お互いに知っていくって言うのはどうだろう?」
「ふむ……」
少し考えるように、パーティのアリス、カンナにサイカと順番に見ていく。
「あんた達も主人様の夫婦候補だったか!
それなら俺もこのパーティに入らせてもらうぜ!!」
「「「「!?」」」」
「いやいや、私達は、別に夫候補とかじゃないわよ!」
「まぁ、どうしてもっていうなら、嫁になってあげても……」
アリスが何かモジモジしているが、最後の言葉が歯切れが悪く聞こえなかった。ということにした。
「まぁ、俺はどっちでもいいぜ!強いやつには何人も夫婦がいるのは当然だからな!」
種族が違うとここまで考え方が変わってくるのか。
まぁ、これで妖精族の依頼は完了だ。
一旦、妖精族の村に戻ろう。