III プリンセス
「中央広場だって!行ってみよう!!」
僕たちが王都に戻ると、街中が何やらざわめきだっていた。
「どうしたんだろ?みんなバタバタと。」
「中央広場に何か来てるみたい。私たちも行ってみよ!」
聞き耳を立てていたアリスが、興味本位で中央広場に向かってしまった。
「行っちゃった…カンナ。俺たちも行こうか。」
「了解ッス!!」
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「王女殿下の御帰還ーーーー」
パパパーーーン
遠くから見ても豪華な馬車が音楽と一緒にゆったりと王城に向かっていた。
その馬車の中から、豪華な服を着て、民に向かって手を振っている女性が見える。
多分、あの方が王女なのだろう。
「はあぁぁぁ、綺麗…」
「アリスさんは、あんな服が好きなんスか?」
「カンナさんはわかってないですね。あの服はですね…」
王女を見ながら、女子トークが始まってしまい、そう言ったことに疎い僕は話半分に聞き流していた。
ん?
ふと、盛り上がっている民衆に目を移したところで、不思議な少年に目が止まった。
最前列で皆王女を見て手を振ったり、盛り上がったりしているのに、その少年だけは、フードを被ったまま、盛り上がるでもなく、手を振るでもなく、じっと王女を見ているだけだった。
「アリス、カンナ!ちょっと場所を移動しよう」
怪しく思い、その少年が見える位置に移動した。
「あそこのフードを被っている小さい子供はわかるか?」
「???どこッスか?全然わかんないッス…」
「私にも…ユージさんの言う子供なんて見えない…」
は?
見えていない?
どういうことだ?
そう困惑しているのも束の間、王女の乗った馬車が少年の位置に近づいてくる。
少年の手にはいつの間にかナイフが握られていた。
「まずい!!」
ナイフを確認した直後、僕は飛び出した。
「!!」
少年の振り抜いたナイフを自分のナイフで受け止めてる。
その衝撃で、少年のフードがはだけ顔が明らかになる。
「ま、魔族!?」
フードの中から、尖った耳、こめかみの上から生えたツノがあらわになった。
「チッ…」
襲撃が失敗に終わった魔族は、その場から驚異的な身体能力で家から家へと飛び移り、逃げていった。
一連を見ていた警備兵たちは、魔族が家から家に飛び移るのを見てから動き出した!
「襲撃犯が逃げたぞ!追え!!」
「もう見えないよ、、、」
そう言いながら、その場を後にしようとする。
「お待ちください!」
馬車から先ほどまで手を振っていた女性が降りてきた。
「危ないところを助けていただきありがとうございます。是非お礼をさせていただけないでしょうか?」
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「おお!そなたらが姫を守ってくれたのか!?」
王が現れて開口一番言葉を放った。
「そうですわ、お父様!このお方が颯爽と私を助けてくださいましたの!!」
僕たちは、片膝をつけ、頭を下げていた。
公の場では許しがないと喋らないのがマナーのため、淡々と進んでいく会話を黙って聞いていることしかできなかった。
「ごほん、ユージよ。汝の勇気と献身により我が姫は救われた。
その働きに感謝し、褒美を授けん。
何が良い。申してみよ!」
うわっ、まじか!
ただ、魔族の一撃を防いだだけだったのに、王様から褒美だってよ!
どうしよう。
土地?いや、領主なんてやったことないし、すぐダメにするだろう。
金?いや、贅沢したらすぐなくなるもん貰っても…
名誉?いや、貰っても国に使われるだけで、好きに冒険できなくなりそうだし…
「姫様と自由に謁見ができる謁見手形を頂きたいです。」
国に縛られるより、自由にやっていきたいし、
王族と自由にやり取りできるなら、何かと便利そう。
王族との縁をここで切っちゃうのも勿体無いしね。
「それは、私とお友達になってくださるということですか!?」
王の横にいらっしゃった姫君が思わず声を上げた。
「なっ!娘はやらんぞ!あくまで健全なやり取りだけだからな!」
あー、そうなるのね…
こっちにはそんな気は全く無いので、
しっかりと認識してもらおう。
「はい。清く正しくお付き合いさせて頂きたく。」
(お付き合い等々ではなく、時々、情報提供や支援をお願いしたく。)
「まぁ……」
ん?なんか思った反応と違うな。
なんか姫様顔赤くしてるし…
「んぬぬぬ。」
しばらく、謁見室に沈黙が続く。
あれ?俺、ミスった?
失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。
失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。
どうする?どうするよ!俺!
「わかった…謁見手形を発行するので、しばし待て。」
「あ、ありがたき幸せ。」
その日の謁見はこれだけだったのか、王はそう言い残し、謁見室を後にした。
その後、僕たちパーティも解放され、王城から後にする。
「もー、突然姫様と自由にやり取りがしたいなんて、何考えてるの?」
「もしかして、ユージはお姫様みたいなキラキラした人が……」
「いや、金とか土地とかもらっても後々、王族に利用されるのも癪じゃん?」
カンナがしりすぼみに声が小さくなっていったため、気にせず自分の考えを話す。
「それだったら、王族の情報をいつでも聞ける立場になっておくのが一番いいかなって。」
「それでもあんな言い方じゃ…ねぇ?」
そういいつつ、目を合わせるアリスとカンナ。
なんだろ?なんかやっちゃったかな…
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「そんなわけで!今後の方針として、チームの連携を鍛えていこうと思う!」
王城の一件が終わり、今後の方針を決めるため、酒場に入り、乾杯と同時にメンバーに告げた。
「まだ出会ったばかりで、それぞれがそれぞれの動き方を理解してないと思うんだ。」
「今回の護衛任務が私たちの初任務だったし、ほとんどユージさんが一人で解決しちゃってたしね…」
「うっ…」
痛いところをついてくるアリス。
「そこで、ここからいくつかの任務は、僕がサポートに回るから、基本カンナとアリスで戦闘を行うような形で経験を積んで行こう!」
「り、了解ッス!ちょっと緊張するッス。」
「頑張ろうね、カンナ!」
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狼型の魔物と対峙するカンナ。
グループで襲ってくる狼型の魔物は
カンナの隙をついて防御に回したハンマーの柄を咥え、力比べの状態へと持ち込む。
その隙にもう一匹がカンナの脇から噛みつこうと走ってくる。
「やばっ!」
すんでのところで、魔物の目に弓矢がささる。
「ナイスッス!」
そこには魔物に追われながらも、カンナを援護するアリスの姿があった。
目に弓矢が刺さった魔物が怯んでいる隙に、カンナは力比べをしている魔物を払いのけ、ハンマーで押し潰す。
その後、すぐに振り返り、ハンマーを振り上げる。
その横をアリスが通り抜ける。
カンナはアリスを追いかけていた魔物をハンマーで、
アリスは再度噛みつこうとカンナを追いかけていた魔物を魔法で
それぞれ交差するように仕留めた。
その仕留めた魔物は、邪魔にならないように即座にアリスとカンナのそばから片付けるのが僕の仕事だ。
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「なかなかいい感じになったかな。」
僕の足の下に大量の魔物の死体が山となって積み重なっていた。
その山の麓にアリスとカンナがボロボロになりながら山に背を預けていた。
「はぁ、はぁ、この魔物、の数で、私達の、サポート、ずっと、してたのに、息すら、乱れて、無いなんて…」
「はぁ、はぁ、さ、さすが、クジの、メンバー、ッス…」
(んー、でも課題も山積みだ…)
「よし、討伐証明部位剥ぎ取って、一度王都に戻ろうか!」
「はーい(ッス)」
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すべての魔物の照明部位を剥ぎ取り、王都へ戻ると
そこには、いつもいない人物が出迎えに来ていた。
「おう、やっと戻ってきたな。」
「ギルド長?どうしたんですか?」
「もしかして自分たちを待ってたんッスか?」
「ギルド長に呼ばれるようなことしたっけ?」
三者三様の反応をしていると、ギルド長が手紙と木製のプレートが渡された。
「なんですか?これ?」
「お前が要求した謁見手形だそうだ。
無くしても再発行はしないとよ。
それと、お前たちに王族から依頼を出したいそうだ。準備して、王城に向かってくれ。」
「早速いいように使われそうですね。。。」
「そういうな。王族との縁も大事なんだろ?」
ギルドには、王族とのやり取りで色々お世話になるため、ギルド長のみに自分の考えを話している。
「まぁ、無茶言われたら断りますか。
そろそろワンランク上の任務に挑もうと思ったので、いい機会かも。」
「「ちょっとは休ませてほしい(ッス)よ〜。」」